通りすがりのデパ地下に、京都の八百屋がやけに大々的に出店していた。
京物に限らず、各地の珍しい野菜がえらく安かったので、いくつか買ってみた。
そのうちの一つが菊の花。
そこそこ大きな花がぎっちり入って1パック298円。
菊花として高いのか安いのかは知らないけど、珍しいもんの値段としては安いなと思って購入。
モスクワの島津邸でご馳走になった菊花のおひたしを思い出して、さっそく再現を試みる。
黄色い花びらをばらして、さっとゆでる。
色落ちさせないためには、お湯に酢を少し落とすらしい。
みっしり咲いているとボリュウムがあるように見える菊の花びらは、思ったより薄く繊細。
ほとんど「くぐらせる」程度でざるに上げて冷水でキュッとひきしめる。
――これを酢の物にしたいのだが。
わが家の千鳥酢では少し香りがきつそうな気がして、台所をぐるっと見回す。
目に留まったのは、カウンターにぽつねんと置かれたグレープフルーツ。
鍼の先生にもらったまま、食べるチャンスを待っていた。
半分だけ絞ったグレープフルーツの果汁に、うす口醤油をほんの少しだけたらす。
まぜまぜ。
固く絞った菊の花びらをばらしながら漬け込んでみる。
花びらがややふっくりしてきたところで、いっただっきまぁーす!
――む~ん、美味・・・
グレープフルーツの香りと花びらの意外とぷちっとした食感が相俟って、八朔の実を口に入れたときとそっくりの、爽やかな甘さがはじけた。
久々の発見、うれし美味しの大満足。