晴徨雨読

晴れた日は自転車で彷徨い、雨の日は本を読む。こんな旅をしたときに始めたブログです。

皆地笠 5/19

2020-05-19 | 文化に触れよう

2020.5.19(火)曇り

 出先で5時に起きてテレビをつけると皆地笠(みなちがさ)という伝統工芸品の話を放映している。「皆地って”かいち”とちがうん」などと思ってみていると、この笠は芝安男さんという方がひとりで作っておられ、後継者がいないという事である。上等の桧で編まれていて、軽くて丈夫、そして美しい、平安の頃から脈々と受け継がれて作られてきたそうだ。その時既に90才を越えておられて、もう手に入りそうにない。ところが番組の終わりだったろうか、予約で作って下さるという情報があって早速連絡した。数年前のことである。
 取り次ぎの道の駅に電話すると、もう既に80程の予約があり、体調も悪くされており、果たして要望に応えられるかどうかという心許ない回答だった。それでも一応予約は取っていただけたが、半ば諦めていた。
 それで吉野の修験者専門店で桧笠を購入する。価格は4,000円程度。風とうしがよく体中の日除けができ、真夏の山行やウオーキングには最高である。問題は風が吹くと着用困難、長時間使用すると頭が痛くなる、山行時背負子を使うと被れないなど。
 予約注文したとき芝さんは相当弱っておられて、階段の上り下りもままならないと聞いていた。諦めてはいたけれど、一体どうしておられるだろうと気になって道の駅に問い合わせてみる。テレビ放映で予約が殺到し、逆に元気になられたとのこと、それにしても御年99才である。わたしの順まで回ってこないかと思っていたところ、氏の頑張りで遂に届くことになった。

白いのが皆地笠、茶色いのは柿渋を塗った一般の桧笠。
皆地笠も使いこなせば飴色に変わってくるそうだ。
 注文時には膝と腰を痛めておられ、入院までされていたのだが200件を越える多くの方の注文が糧になり、奇跡的に元気を取り戻して頑張っておられるそうだ。ただ年齢も99才ということで新たな注文は断られているという。道の駅のOさんのご丁寧な手紙が添えられていた。
 200件の注文はきっと果たされると思うが、最後の創作となるかもしれない。そんな作品を譲って頂けたわたしはなんと幸運だったことだろう。一生大切に使用して、棺桶の中に入れてもらおうと思っている。
 芝さんに後継者がいないのは、素材の桧の見分け方が難しかったからだろうと言われている。樹齢60年以上の良質の桧を使われるそうだが、そういう材料も少なくなってきているそうだ。比叡山の千日回峰の行者も芝さんの作品を使っておられるという情報もあり、なんとも誇らしい笠だ。

頭に当たる部分がうまくこしらえてあり、痛くない。

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