晴徨雨読

晴れた日は自転車で彷徨い、雨の日は本を読む。こんな旅をしたときに始めたブログです。

大往生 7/15

2022-07-15 | 雨読

2022.7.15(金)雨

「大往生」永六輔著 岩波新書 古書
 
 店の書棚(丹州行ってき文庫)を整理していると、本書が出て来た。見ると古書のようだが、いつどうして購入したか記憶に無い。新聞の書評かなんかで紹介されていて、買ったものらしい。読んでみると実に面白い、一気に読んでしまった。庶民の言葉で生老病死の四苦を笑い飛ばそうという趣旨かと思いきやそれだけでは無さそうだ。
 気に入ったフレーズを一部紹介。 
「歳をとったら女房の悪口を言っちゃいけません。ひたすら感謝する、これは愛情じゃありません、生きる知恵です」
「老人を預けに来た家族が週休二日制でさ、その老人を世話している俺たちが、なんで休みがとれないんだよ!他人に親を押しつけやがって、面会に来て孝行面をするんじゃねエよ」(ママ)
これはわたしが実際に聞いた言葉「えっ母の日だって、今日働いてるのはみんな母親だよ」
 「癌の確立は四人に一人とかいいますけどね。当人にとって見ればゼロか百なんですよね。」(ママ)
 「医者は危ない手術はしません。下手をして訴えられたりするよりは、様子を見ましょうといってる方が楽ですからね」
 「寝ているところを起こして、時間ですからって睡眠剤を飲ませるんだぞ。凄い病院だろう」
 「お釈迦様は安らかに大往生ですよね。大勢の弟子や、動物にも囲まれて、、、。釈迦涅槃図って、あの絵はおだやかでいい絵です。あんな死に方、いいなと思います。比べちゃいけませんけどね、キリストの死に方は痛そうでねエ」
「集中治療室のデータをコンピューター処理したら、異常なしという結果が出たんだけど、その時、すでに患者は死んでいました。その場合、生きているのが異常だったというんですけどね」
 「当人が死んじゃったということに気がついてないのが、大往生だろうね」
 「ご主人が亡くなって、未亡人がそこにいるのに、お参りに来て、未亡人より泣く、女っていうのがいるのよね。アレ、とても失礼だと思う。私だったら怒っちゃうわ」
とまあキリが無いのだが、これだけ見たら読んでみたいと言う気になるだろう。だが先に述べたように本書の目的は生老病死にまつわる庶民の声を集めただけではない。本書の一番始めに「この本は、亡き父、永忠順に捧げる」とある。浄土真宗の寺に生まれ育って坊主になりそこなった私は、それなりに「死」を身近に考えてはきた。という永氏が父親を看取り、周囲の親友を亡くして、「私なりに死をまとめてみよう」というのが本書の意図である。修証義(道元)の「生を明らめ死を明らむるは仏家一大事の因縁なり」わたしの最も大切にしている一文なのだが、まさに永氏なりの明らめ方が本書にうかがえる。若い時分には決して見つけられなかっただろう生死に対する思いが、この歳になって気づく一冊である。合掌。

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2 コメント

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大往生 (島の医者になって)
2022-07-17 09:43:45
 確かこれ読んだと思って、自宅の本棚を探して見つけました。
 あったのでパラパラと読みました、懐かしく面白いですが、30年はやや情勢の違いを産みますね。
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Unknown (じょんのびマスター)
2022-07-22 07:10:15
確かにその通りです、生き死にに対する人の思いも時代とともに変わるものなのでしょうね。また、環境によっても変わるだろうし、正解というものは無いのでしょう。
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