東の散歩道

B型ヴァイオリニストのマイペースライフ

バックコーラスの歌姫たち

2014年03月29日 23時38分38秒 | 映画

 今年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー部門受賞作品です。上映最終日のレイトショーに慌てて駆け込んで観て参りました。

 実力派バックシンガーたちが、舞台の中央で歌う日を目指していく日々の挫折、成功の様子を、関係者へのインタビューを交えながら忠実に切り取ったドキュメンタリーです。

 バックシンガーは上手くて当たり前、どれくらい他人とハモれるかが勝負どころの世界。それはそれとしてやはり厳しいには間違いないのでしょうが、主役としてセンターステージに立つのには、どんな曲で、誰と(どんなプロデューサーと)組んで世に出るかといった運の要素が多分に含まれると言い、それらに恵まれなかったときのことまで赤裸々に描かれています。

 私が一番印象に残ったシンガーはリサ・フィッシャーで、あらゆるトップアーティストが彼女の歌を絶賛、グラミー賞を受賞するほどの実力の持ち主であったにも関わらず、何でも器用に歌えるため、どの路線で歌って行くか決め手に欠け、また「良い人すぎて」トップアーティストになるために不可欠なエゴを持てなかった、という話には、色々考えさせられました。映画の中で、彼女はいつも素晴らしく素敵な笑顔を見せているのですが、ちょっと寂しそうな表情を見せたシーンがありました。

 それは車を運転しながら、インタビューに答えているシーンなのですが、「友人が結婚し、母となって子供を育てている様子をみると、私もそんな風に、全部やってみるべきだったかな、と思うことがある」と話すのです。しかしその直後、自分に言い聞かせるように「でも(自分のやり方で)良かったのだ」と言う様子が、何とも胸に迫りました。

 ちなみにこの映画の原題は「20 feet from stardom」。1 ftは30cm強ということなので、大体6mといったところでしょうか。近いようで果てしなく遠い20フィートに、様々なドラマが詰まっています。

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