自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

サルトリイバラと生きものたち(1)

2016-05-24 | 生物

草木があるところには動物の匂いあり。草木は動物たちの棲み処であり,餌場でもあります。草木を食べる草食性の動物がいれば,そこに棲む動物を食べる動物がいて,さらにそれを襲う動物がいます。要するにいのちのつながりが多様に見えるところなのです。

そんな草木の一つがサルトリイバラ。これを取り上げる理由は,ルリタテハの食草であり,身近な植物でもあるからです。

ルリタテハの幼虫を追っているときに,見かけたのがヒメスズメバチ。巣づくりに勤しんでいる最中でした。お椀状の屋根の下に,巣がぶら下がる格好で付いています。はじめは危険かなあとすこし心配したのですが,注意深く近寄っていけば大丈夫でした。

観察していると,唾液と木屑とでつくった団子をうまく使って巣をつくっていく様子が確認できました。それはそれは,まったく巧みな技に見えました。それを写真で見ていきましょう。

「おっ,団子を抱えている。巣づくりの真っ最中なんだな」

 


「屋根の縁に取り付いたな。ここにくっ付けるつもりなのかな」

 
「作業にかかったぞ。やっぱりここと決めたんだ」


「どんどん付けていくぞ」


「うまいもんだなあ」 


「終わったー! 見事なものだ」。くっ付け始めてから,たったの2分! 

 
「こちらに気づいているのかなあ」。なんだか,警戒しているようにも見えます。

 
巣特有の縞模様を見ると,同じ色の箇所は同じときに付けられた材料だとわかります。合点できるのではないでしょうか。

スズメバチの巣づくりを見るたびに思うのは,巣作りの観察から西洋紙の発明につながったという有名な話。今から300年前のこと。1719年,フランスの科学者レオ・ミュールは観察をとおして「おーっ! もしかすると,ボロや麻でなくても,木材を材料として紙が作れるのではないか」とひらめいたのです。

その着眼がやがて植物材料から紙がつくれるという発見につながり,製紙業に革命をもたらすきっかけになったといいます。スズメバチとレオ・ミュールさんとの出会いに感謝,ですね。

じつは,この巣は公園にある歩道沿いで見かけたもの。万一のことがあればたいへんなので撤去することにしました。この報告は次回に。