らんかみち

童話から老話まで

村に凱旋門がぁ!

2011年09月23日 | 暮らしの落とし穴
     

 モーパッサンを読んだこともないくせに僭越ですが、彼は「いまいましいエッフェル塔を見なくて済むのは、パリではここだけだ」といいながら、エッフェル塔の一階にあるカフェに通ったそうです。
 今は世界遺産の一部として登録されているエッフェル塔も、建設前後には異を唱える人も多かったらしいですが、見慣れたら美しいと思えるようになったのでしょう。だったら、この村の凱旋門も、いつか見慣れて美しいと思える日が来るのでしょうか。

 数日前に撮影した「村の凱旋門」は、今日辺りでほぼ完成じゃなかろうか。村人のなかに建設反対の意見があったのは、企業による事前説明を欠いていたから。何をしているのか問うて初めて、水害の起きる可能性のある工事だと判明し、一部を修正していただいたのです。
 その後も色んな意見はあったものの、正当な企業活動を妨害する気もないし、雇用も創出されて地域の発展に貢献することなら、我慢すべきところは我慢しようとなりました。
 だけどねぇ、村の真ん中に凱旋門ですからねぇ。いや、ぼくにとっては「敗戦門」のような気がして、この門型クレーンの真下で毎日コーヒーを飲みたい気分です。

 当地は造船の町ですから、景観条例の中にも「産業景観」を謳っております。造船所の風景も、保全すべき景観の一つであるということです。それはその通りで、ぼくも軍艦島のような産業遺跡、あるいは産業遺産が大好きなんです。
 ただの廃墟じゃないかという人もいるでしょうが、パルテノン神殿だって廃墟じゃないですか。廃墟に立って往時を偲び、そこに生きた人々に思いを馳せる。廃屋を前にしても同じゾクゾク感を覚える身としては産業景観も是ではありますが、門型クレーンが村の真ん中で威容を誇っているってのはどうよ。

 この件が明るみに出たときから、このビルの6階建ての高さに相当する門型クレーン(高さ18m)を凌ぐ巨大な何かを建設できないものかと考え続けているんです。たとえば淡路島にある大観音像とか、室戸の修行大師のようなものです。
 あるいは意味不明なオブジェでも良いですけど、それが存在するから人がやって来るような見応えのある何か。過疎化する一方の限界集落を保全する一助になるものを作れないか。だれも真剣に聞いてはくれませんが、各方面には打診しております。だけど、もう一回バブルでも来ないと無理かなぁ……。