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旭川高専の倉庫に砂澤ビッキの大作

2020年01月18日 07時57分41秒 | 新聞などのニュースから
 北海道新聞2020年1月14日夕刊の社会面トップでした。

 【旭川】旭川出身の彫刻家砂澤ビッキ(1931~89年)の手掛けた木彫「芽」が、旭川工業高等専門学校(旭川)の倉庫に眠っている。高さ約3メートル。晩年の87年に中庭に設置したが、風雪で傷んだため、14年前から倉庫に保管されている。妻の凉子さん(76)=札幌市=は「ビッキなら風雪の傷みも含めて作品と言うでしょう。多くの人に見てもらいたい」と願っており、旭川高専は再び展示する方法を検討している。(中略)

 昨年12月11日、凉子さんが旭川高専を訪れた。「芽」が中庭でお披露目されて以来32年ぶり。「あー、懐かしい。白骨化した感じが『四つの風』とよく似ているわね」。倉庫に横たわる作品を優しくなでながら、久しぶりの対面を喜んだ。

(中略)

 「芽」は同じ時期の作品で、旭川高専の創立25周年を記念し、87年10月に同窓会が寄贈した。高さ2.7メートルと3メートルの木彫2本が空に伸びる姿は、若いエネルギーを連想させる。

(中略)

 凉子さんは「故郷の旭川で展示されることを、ビッキはとても喜んでいた」と振り返り、再展示を希望する。(以下略)


 この記事にある「四つの風」は、いうまでもなく、札幌芸術の森野外美術館にあるビッキの代表作。
 現在、4本のうち3本が倒れてしまい、1本だけが残っていることも、また、それが彼の遺志によるものであることも、よく知られています。

 ビッキは次のように生前語っていたそうです。

人が手を加えない状態つまり自然のままの樹木を素材とする。したがってそれは生き物である。生きているものが衰退し、崩壊していくのは至極当然である。それを更に再構築していく。自然はここに立つ作品に風雪という名の鑿を加えていくはずである。


 とはいえ、これは従来の美術観・作品観からすれば異例のことであることはいうまでもありません。
 また、後世に残されたわたしたちからすると、風化させずになるべく長い間鑑賞したいという気持ちがあるのも確かです。
 ビッキの言い回しを借りていえば、自然の命あるものが衰え、死んでいくからこそ、芸術に永遠を託すといえるのです。

 したがって、当時の旭川高専が倉庫に作品を閉まったのも、当然といえば当然の措置であったでしょう。

 ただ、中庭だと、生徒以外が見ることが難しいのも確かです。
 そして、旭川は、札幌芸術の森に比べても雪が多い上に、寒暖の差が大きく、野外に木彫を展示する環境としてはなかなか厳しいことも、否定できません。

 大勢に見てもらえる、うまい手法が、なんとか見つかれば良いなあと思います。 
 

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/382938


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「四つの風」 (2006現在の画像)
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