北海道美術ネット別館

美術、書道、写真の展覧会情報や紹介。2013年7月末、北見から札幌に帰還。コメント、トラバはお気軽に。略称「ほびねべ」

■砂澤ビッキ展 木魂(こだま)を彫る (4月8日~6月18日、神奈川県)―東京2017-2(4)

2017年04月18日 10時10分01秒 | 道外で見た展覧会
(承前)

 感想は次の2点に要約できる。

・オーソドックスな構成で、砂澤ビッキの彫刻や絵画を紹介する展覧会

・最初にどーんと展示されているのが「神の舌」、最後にどーんと展示されているのが「風に聴く」で、いずれも札幌芸術の森美術館の所蔵品であることから、札幌市民としてはなんとなく誇らしくなってくる


 図録で、神奈川県立近代美術館の水沢勉館長は巻頭論文をつぎのように書きだしている。

砂澤ビッキ(1931-1989)が残した大型作品については、なかなか実際に目の当たりにすることができない。1989(平成元)年、享年57歳で惜しまれつつ没してから30年という年月に近づいてきている。すでになかば伝説の彫刻家と言ってもよいかもしれない。


 そうなの?! と、正直思った。

 たしかに、ビッキの個展が道外の公立美術館で開かれるのはこれがはじめてのことらしい。

 しかし北海道民としては、砂澤ビッキはかなり頻繁に目にしている作家であり、とても「伝説」とか「幻」という実感はわいてこない。
 2001年に芸術の森美術館で、2008年に旭川市彫刻美術館で、2011年には道立旭川美術館で、ぞれぞれ砂澤ビッキ展が開かれている。
 また、札幌芸術の森美術館では、2011年に「森と芸術」展が開かれて「風に聴く」がクライマックスの作品として展示され、2014年の札幌国際芸術祭では「神の舌」が展示されていた。
 「神の舌」は2011年の横浜トリエンナーレにも登場しているのである。
 さらに筆者は昨秋、洞爺湖芸術村でビッキ作品をたくさん見ている。

 というわけで、もしアイヌ民族のアートというくくりでいえば、ビッキを取り上げることについては、異論はないけれど新味も薄いというのが率直な感想である。そろそろ「次」を探しはじめてもいいんじゃない? 

 大きな展示室に1点だけ置かれていた「風に聴く」は、さすがに圧巻だった。
 この部屋には、低いところにガラス窓があって、葉山の海岸が望まれる。
 海が見える会場なので、作品はなおさら、未知へと漕ぎ出してゆく舟のように見えてくるのだ。
 大いなる自然と向き合い、自然とともに創作した彫刻家の息づかいまでが聞こえてくるようだ。


 筆者としては、関東の人々にとって砂澤ビッキがどれだけ「伝説の彫刻家」か、実感としてわからないので、ぜひ足を運んで、向き合ってほしいというのが心からの思いである。


 出品作品はほかに「TOH」「北の王と王妃」「午前三時の玩具」や、裸婦デッサン、ドローイングなど。
 「午前三時―」は、手にとって動かすことができたら、作者の意図に沿えるのだろうが、さわることができない。これはいたし方あるまい。
 最初に述べたように、展覧会としてはごくオーソドックスであって、アイヌ文化とのかかわりについて深く突っ込んだり、彫刻家の意外な一面を明らかにしたり、といったことは特にしていない。だから、首都圏の人には彼のすばらしい作品をぜひ見てほしいけれど、北海道からわざわざ出かけていくには及ばないかもしれない(もちろんビッキのファンは別)。



 なお、最後に、思ったことを3点ほど。

・会場や図録には、札幌芸術の森の「四つの風」が紹介されていたが、北海道を旅するのを機にビッキ彫刻を味わいたい人もいるだろうから、簡単な旅ガイドをつけたらどうか。音威子府のアトリエ3モアや、旭川ステーションギャラリー、洞爺湖芸術村などのアクセスガイドを付けると、大いに参考になるのではないか。

・図録の年賦、1955年の項に
「武田泰淳が雑誌『世界』に砂澤ビッキを主人公にした『森と湖のまつり』を連載」
とあるが、筆者はいままで、この長編小説(であることぐらいは明記してよ~)は「ビッキを主人公にしたという説がある」といった記述しか記憶にない。「主人公にした」と断言するに足る材料が新たに出てきたのだろうか。

・この図録にかぎったことではないが、参考文献で、ローカルなものについては、発行地(都市)ぐらいを明記してはどうか。地方のアート系ミニコミについては、誌紙名だけではアクセスが困難なものも多いだろう。欧文文献では発行地を付するのが慣例なのに、邦語ではどうして略されるのだろうか。


2017年4月8日(土)~6月18日(日)午前9時30分~午後5時(入館は4時30分まで)、月曜休み(5月1日は除く)
神奈川県立近代美術館 葉山(葉山町一色2208-1)


中原悌二郎記念旭川彫刻美術館ステーションギャラリーがオープン(2012)=「カムイミンダラ」を常設展示
森と芸術 (2011)※画像なし
砂澤ビッキ「四つの風」(札幌芸術の森野外美術館)の2本目も倒壊 ※画像なし

砂澤ビッキ「四つの風」の1本が倒れる 遺志尊重し修復せず-札幌芸術の森野外美術館 (2010)

砂澤ビッキ展 樹兜虫の世界 (2009年2月)※画像なし
砂澤ビッキ展(2008年)※画像なし
エコミュージアムおさしまセンター(BIKKYアトリエ3モア)=「オトイネップタワー」の画像あり
砂澤ビッキ作品、旭川市に寄贈(2007年)※画像なし

「四つの風」 (2006現在の画像)

「四つの風」をあしらった札幌市交通局のウィズユーカード (2002.ページ最下段)




・JR横須賀線「逗子駅」、京浜急行線「新逗子駅」から、京浜急行バス「逗11」「逗12」に乗り、「三ケ丘・神奈川県立近代美術館前」で降車。乗車およそ20分(250円)、降りて目の前


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