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■池田緑展 FOUR WORD STORIES「四つの言葉」の物語 (2015年7月12~20日、札幌など)

2015年07月25日 09時47分16秒 | 展覧会の紹介-現代美術
 
 帯広在住で、北海道を代表する現代美術家のひとり、池田緑さんが、例年にも増して精力的な活動を展開している。
 池田さんの作品系列は

1.マスクプロジェクト
2.ダイモテープで自らの生きてきた年月を可視化したインスタレーション
3.「四つの言葉」など、言葉を主な題材にした作品
4.初期の、ジーンズをモティーフとした絵画や版画

に大きく分けられるが、彼女は今年、この4系列全ての発表を行うというのだ。

 このうち、最も有名なマスクプロジェクトについては、春先にギャラリーRetaraで、記録写真を中心とした一区切りの個展を開くとともに、写真をまとめた書籍「マスクをかけた世界のまち A World Masked, 1999-2011」を、現代企画室から出版した。(このときの模様は、まだ記事にしていない。申し訳ありません)
 また、2.の作品については、今年秋に札幌・茶廊法邑で個展を行うことになっているときく。

 今回、釧路、深川、札幌を巡回した個展と、8月の1カ月間は帯広の「マイナスアート」でも展示されるのは、上記の3.の系列の作品である。
 「作品」という呼び方がふさわしいのかどうかはわからない。池田さんが繰り広げてきたワークショップの所産であり、モノ自体は、個展会場の来場者がつくったものだからだ。
(池田さんは、助言はしても、制作自体はほとんど手伝っていないとのこと)

 今回の個展のリーフレットで池田さんは次のように書いている。

私は1999年から、自分が生まれてからの「年月日(数字)」をプラスチックテープ(商品名DYMO TAPE)にラベルライター(商品名DYMO。ヤナイ註=右の写真参照)で打ち出す行為を続けています。刻印された数字を客観的に俯瞰することで、もしくは身に起こった真実として受容することで、自分の存在を肯定しつつ生きる意味合いを探っています。

そうした流れの一環として、2010年から2014年にかけて、上記と同じ文具を用い、<思いや考えを「四つの言葉」で表現、その言葉をプラスチックテープに打ち込んで素材とし、物語の1ページを作成する>という、「ことば」を用いたワークショップを展開してきました。

 
 あなたの心の中にある「言葉」から、たいせつに思う「言葉」を四語、取り出しましょう。
 取り出した四つの言葉」を、願いや思いを込めながらプラスチックテープに打ち出しましょう。

 ここに、2冊の手のひらサイズの手帳があります。ニューヨークの文具店で購入しました。
 茶の皮表紙で、ネパール紙を粗くとじた綴じ本風の手帳です。1冊100ページです。
 生命が吹き込まれた「四つの言葉」を、どちらかの手帳の〝あなたの1ページ〟に貼ります。

 そうして、みんなで力を合わせて、「四つの言葉」の本をつくりましょう。
 いろいろな人の、いろいろな「四つの言葉」が集まったなら、
 どんな内容の『「四つの言葉」の物語』が紡ぎ出されることでしょう。


 ワークショップは、原則として個展開催中にのみ行ったため、100ページの2冊が埋まる(つまり200人が参加する)まで5年ほどかかったという。

 会場に展示されているのは、その手帳をカラーコピーした各ページを、透明なケースに入れて、棚に並べたもの。この透明な箱はもともと、東日本大震災の直後に募金箱として安値で発売されたもので、池田さんは、募金箱ならぬ「募言箱」と呼んでいた。

 また、ワークショップ参加者(一部、撮影拒否者を除く)がテープに言葉を打った際の映像記録が流れていた。計3時間もあるとのことで、ここは abridgment version がほしいところ。

 当初の計画通り、すべてのページを本にまとめたものもある。これは、ワークショップ参加者に池田さんが配っているとのこと。
 
 ギャラリー門馬の大井さんと、池田さんとに促され、いったん一区切りをつけたはずの「四つの言葉」のワークショップに、筆者も挑戦してみました。

 ラベルライターは、文字を打つときに予想外に力が必要で、軽く押しただけでは、テープの文字がよく判読できません。
 カシッカシッと、しっかり押さないといけません。
 テープを先に送るのは簡単でした。

 筆者はあまのじゃくなので、こういうときに「LOVE」「PEACE」などという文字は打ちたくない。
 まず英字を選んだあと、ちょっと考えて、こう打った。

SELFLESSNESS
SLEEPY
SLOWLY
TAKE IT EASY

 ほんとうは、品詞をそろえたかったんだけど。
 SELFLESSNESS は、ジョン・コルトレーンのアルバムの中でもすきな一枚。
 TALE IT EASY がほんとうに言いたかったことかも。
 そう。「のんきが一番」です。

 しかし、まったくもってヤナイらしいというか、間違えて左のページにテープを貼り付けてしまった…orz

 すみませんおっちょこちょいで。
 池田さん、お手数をおかけします。


 それにしても、たくさんの人々の思いが、シンプルなかたちで集約され、並んでいるのは、おもしろいなあと感服した。
 池田さんの作品はどれもシンプルといえると思うが、すぐれた現代美術は総じてシンプルであるのかもしれない(たくさんの理屈を経過しないと理解できない作品がダメだと決めつけるつもりもないけど)。


2015年7月12日(日)~20日(月)、午前11時~午後6時(最終日午後4時まで)火曜休み
ギャラリー門馬ANNEX(中央区旭ケ丘2)

2015年5月16日(土)~24日(日)午前9時30分~午後5時(最終日~午後4時)、月曜休み
道立釧路芸術館フリーアートルーム(幸町4)

2015年6月16日(火)~30日(火)午前10時~午後6時(最終日~午後4時)、月曜休み
アートホール東洲館(深川市1の9)


□ブログ「緑の風」 http://imgreen.exblog.jp/
□池田さんのサイト http://www.ima.me-h.ne.jp/~ikeda.midori/

防風林アートプロジェクト(2014)

【告知】18人の写真表現-焼きつけられたイメージ(2013、釧路)

置戸コンテンポラリーアート(2012)

池田緑「マスク・プロジェクト<最終章>-サホロ1999~ハルカヤマ2011- ハルカヤマ藝術要塞
真正閣で池田緑作品を見る 帯広コンテンポラリーアート(2011)
北海道新聞の6月29日「ひと 2011」欄は池田緑さんが登場

あおもり国際版画トリエンナーレ2010で池田緑さん、風間雄飛さん入賞
池田緑展 Silent Breath―沈黙の呼吸(2010)
池田緑展-六つのこと・444の日- (2010)

池田緑さんによるマスクイベント アジアプリントアドベンチャー

池田緑 1993-2008現代美術展(2008年6月)■続き
深川駅前にマスクの花(同)
田園都市のコンテンポラリーアート 雪と風の器(2008年3月)

越後妻有(つまり)アートトリエンナーレ(2006)

十勝千年の森=水脈の森・万象の微風 自然=人間=大地(2003年10月8日の項)

十勝の新時代 池田緑展(2002年、道立帯広美術館)
池田緑展アーティストトーク(同上)
とかち環境アート(02年)

□「てんぴょう」誌に筆者が寄稿した文章


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