北海道美術ネット別館

美術、書道、写真の展覧会情報や紹介。2013年7月末、北見から札幌に帰還。コメント、トラバはお気軽に。略称「ほびねべ」

真正閣で池田緑作品を見る 帯広への旅(7)

2011年07月14日 21時17分37秒 | 展覧会の紹介-現代美術
承前

 先に述べたとおり、真正閣しんしょうかくでは週替わりで現代美術の個展が開かれている。
 毎週通いたいくらいだが、これも以前書いたとおり、北見から帯広までは路線バスを乗り継いで4時間半、マイカーでも2時間以上かかる。「道東」などとひとくくりにされるけれども、札幌から旭川や室蘭に行くよりも遠いのだ。

 筆者が訪れたときは、帯広在住で、北海道を代表する現代美術家のひとり池田緑さんの個展の最終日だった。

 会場は、大きな和室。
 障子を隔てて縁側が続き、その先は日本庭園になっている。
 障子を閉めれば、隔絶された空間になるし、あければ庭につづく開放的な空間になるのは、いかにも日本の家屋らしい。

 その和室の畳の上に、池田さんの作品「日を編み,言葉を紡ぐ」は置かれていた。

 池田緑さんの作品といえば、マスクを使ったものが代表的だが、数字やアルファベットを打刻するテープ(商品名「ダイモテープ」)を素材とする作品の系列もある。
 今回の作品は、昨年夏に開かれた「北海道立体表現展」の道立近代美術館会場で一度発表済みのもの。ただ、1年間分の日付テープは追加されていると思う。
 筆者の目には
「ああ、これが作品の本来あるべき姿だな」
と感じられた。

 それは、たぶん、越後妻有アートトリエンナーレで、おなじ系列の作品が古い民家の土間に展示されていたのを見ていたからだろう。
 道立近代美術館では壁面だった。
 洋間での暮らしが一般化してつい忘れがちになるけれども、日本人が大きなものを展開して見る場合、壁にかけるのではなく、土間や畳に広げるのが一般的であろう。油彩がイーゼルで描かれ、日本画は畳の上で描かれるように。

 この作品は、透明のアクリルパイプに、毎日の日付だけを刻印したダイモテープを1年ごとに詰めたもの。
 テープの色は、そのとき住んだ土地によって変えている。
 ただそれだけの、しかしすごい根気と労力によって制作された作品なのだが、日本統治下の朝鮮半島での幼い時代、引き揚げ船の中、釧路での若い日々…など、戦後という時代を生きたひとりの女性のドキュメントたりえており、目がはなせない。
 日付の数字は、見る者ひとりひとりにとって、それぞれ固有の意味を持って受け止められるからだろう。
 単なる数字の羅列なのに、それが特定の日付であることによって
「ああ、そういえば自分はこのとき、あそこに住んでいたよなあ」
などとさまざまな回想モードに入ってしまうわけだ。




 作品の部分拡大写真。
 作者は、2001年から02年にかけて、北海道文化財団海外派遣芸術家としてニューヨークに滞在していた。
 「2001.9.10」
などの文字が見えるが、あの同時テロのときはニューヨークにいたのだ。




 壁側の飾り棚には、本が陳列してあった。
 昨年の札幌・ギャラリー門馬アネックスでの個展を機に、それまでの新聞連載コラムをまとめた本を出版したが、その後も連載は続いており、その分を1冊に収録した。
 前回は白い表紙の本だったが、今回は黄色の薄い本だ。
 題して「33の日」。



 というわけで、現代美術は展示方法や場所によって見え方が異なるものだということを、あらためて実感したのだった。

 この会場で、札幌のOさんとバッタリ。
 ふたりで、庭園内に点在するという作品を見に行くことにした。

(この項続く) 



□池田さんのサイト http://www.ima.me-h.ne.jp/~ikeda.midori/

北海道新聞の6月29日「ひと 2011」欄は池田緑さんが登場
あおもり国際版画トリエンナーレ2010で池田緑さん、風間雄飛さん入賞
池田緑展 Silent Breath―沈黙の呼吸(2010年)
池田緑展-六つのこと・444の日- (2010年6月)

池田緑さんによるマスクイベント アジアプリントアドベンチャー

池田緑 1993-2008現代美術展(08年6月)■続き
深川駅前にマスクの花(同)
田園都市のコンテンポラリーアート 雪と風の器(08年3月)

越後妻有(つまり)アートトリエンナーレ(06年)

十勝千年の森=水脈の森・万象の微風 自然=人間=大地(03年10月8日の項)

十勝の新時代 池田緑展(02年、道立帯広美術館)
池田緑展アーティストトーク(同上)
とかち環境アート(02年)

□「てんぴょう」誌に筆者が寄稿した文章
『北海道』 ジャンルのランキング
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 7月13日(水)のつぶやき | トップ | 7月14日(木)のつぶやき »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

展覧会の紹介-現代美術」カテゴリの最新記事

関連するみんなの記事