(承前)
それでは、帯広市郊外の愛国地区に広がる農場地帯で、筆者が見ることができた作品について簡単に紹介します。
いろいろ考えましたが、コンセプトごとにまとめるのも難しいので、近くに設置されているものどうしでまとめます。
冒頭とつぎの画像は、鈴木隆「風の槍」。
鈴木さんは十勝管内中札内村で木の造形に取り組んでいます。
アカエゾマツを削ってつくった、13メートルにもなる大作で、風向に応じて向きが回ります。
「春は日高山脈からの風が強いところ。風をイメージして作りました」
風力発電のようにせわしなく回転するのではなく、大きな鳥のように、風格をもって向きを変える作品です。
今回の防風林アートプロジェクトは、雪を念頭に置いた作品もありましたが、全体としては強い風を意識して制作した作品におもしろいものが多かったと感じました。まあ「防風林」なんで、当たり前といえば当たり前ですが…。
池田緑「冬の華 もしくは JEANS FLOWER」
池田さんは帯広在住。越後妻有アートトリエンナーレなど、道外でも発表を重ねている現代美術作家です。
90×90×120センチの白い箱を五つ、「防風林のように」一直線に並べました。
表面にプリントされているのはジーンズで、雪の結晶のようなかたちにしています。
中谷宇吉郎の「雪は六華」ということばが念頭にあったそうです。
池田さんというと、マスクや、ダイモテープを用いた作品のイメージがありますが、ジーンズは、全道展から現代美術に移行する時代から使われている、古いモティーフです。
画題というだけではなく、実際のジーンズを使った作品もありました。
マスクなどは非常にコンセプチュアルな文脈で用いられてきましたが、ジーンズは、素材そのもののもつ若々しさ、明るさのようなものが、自然と作品にいろどりを与えているようにも思えます。
「これで、ジーンズの作品は一区切り」
と池田さんは話しておられました。
谷口大「―視点との対話― A dialog with a viewpoint」
谷口さんは若手陶芸家で、昨秋には札幌のギャラリー犬養で個展を開いていましたが、その際、珍しいことにうつわは1点もなく、土くれと格闘した痕跡をそのままかたちにして焼成したような、生々しい立体が並んでいました。
今回は、縦に長い陶板のような造形物を立たせています。
このインスタレーションのポイントは、反対側から見ると印象が相当異なることでしょう。
青や緑の釉薬が施されています。
「冬の間、土は静かに力を蓄えているということを、表現したかった」
というようなことを話していました。陶芸の素材も土ですからね。
山岸せいじ「まめな人 蓄」「まめな人 発」
山岸さんは札幌のフォトグラファー。
近年はデジタル写真を素材にした平面作品に軸足を置いています。
人間の群像をモティーフにしたり、写真で撮ったさまざまな色を写真ソフトで加工して抽象画のような作品に仕立てたり、いろいろな試みに取り組んできましたが、シリアスな作や叙情的な作品がほとんどで、今回のようなユーモラスな作品は見たことがありません。
「十勝は豆の産地なので」、豆の模型を頭にかぶった裸の男がさまざまなポーズを取っているところを撮影、プリントしてみました。
「豆の力強さ、エネルギーを蓄えているというイメージを表してみた」
と語っていました。
作品は96180センチ四方のインクジェットプリントで、そういえば、正方形のイメージというのは山岸さんの特色です。
(※10日、山岸さんの作品名とサイズを訂正しました)
吉田茂「In the stream of life」。
吉田さんは札幌在住のデザイナー・美術家で、ギャラリーRetara の主宰者でもあります。
この十数年はほぼ一貫して、粘土をあえてひび割れさせて、時間の経過を見る人に意識させる作品を制作してきたと思います。
今回は、支持体は木枠ですが、表面は白、中身は赤に着彩して、亀裂をダイナミックに見せていることが多いです。
ただし今回は、形状からして、額縁としても機能しているんです。
作品抜きで、防風林のある広い雪原だけでも、この枠を通して眺めることで、風景画のように見えるわけですし、池田緑さんの直方体の作品をこの枠から見ると、また違ったたのしさがあります。
□防風林アートプロジェクトのFacebook ページ https://www.facebook.com/boufuurinart
■置戸コンテンポラリーアート (2012、鈴木隆さん出品)
□ブログ「緑の風」 http://imgreen.exblog.jp/
□池田さんのサイト http://www.ima.me-h.ne.jp/~ikeda.midori/
【告知】18人の写真表現-焼きつけられたイメージ(2013年、釧路)
■置戸コンテンポラリーアート(2012)=池田緑さん出品
■「和」を楽しむ(2014年1月)
【告知】山岸せいじ展 あわいを覗く そこは原子ひとつ隣の世界かもしれない photographic works(2012)
■吉田茂「洗濯物-いのちの連鎖」 ハルカヤマ藝術要塞 (2012)
それでは、帯広市郊外の愛国地区に広がる農場地帯で、筆者が見ることができた作品について簡単に紹介します。
いろいろ考えましたが、コンセプトごとにまとめるのも難しいので、近くに設置されているものどうしでまとめます。
冒頭とつぎの画像は、鈴木隆「風の槍」。
鈴木さんは十勝管内中札内村で木の造形に取り組んでいます。
アカエゾマツを削ってつくった、13メートルにもなる大作で、風向に応じて向きが回ります。
「春は日高山脈からの風が強いところ。風をイメージして作りました」
風力発電のようにせわしなく回転するのではなく、大きな鳥のように、風格をもって向きを変える作品です。
今回の防風林アートプロジェクトは、雪を念頭に置いた作品もありましたが、全体としては強い風を意識して制作した作品におもしろいものが多かったと感じました。まあ「防風林」なんで、当たり前といえば当たり前ですが…。
池田緑「冬の華 もしくは JEANS FLOWER」
池田さんは帯広在住。越後妻有アートトリエンナーレなど、道外でも発表を重ねている現代美術作家です。
90×90×120センチの白い箱を五つ、「防風林のように」一直線に並べました。
表面にプリントされているのはジーンズで、雪の結晶のようなかたちにしています。
中谷宇吉郎の「雪は六華」ということばが念頭にあったそうです。
池田さんというと、マスクや、ダイモテープを用いた作品のイメージがありますが、ジーンズは、全道展から現代美術に移行する時代から使われている、古いモティーフです。
画題というだけではなく、実際のジーンズを使った作品もありました。
マスクなどは非常にコンセプチュアルな文脈で用いられてきましたが、ジーンズは、素材そのもののもつ若々しさ、明るさのようなものが、自然と作品にいろどりを与えているようにも思えます。
「これで、ジーンズの作品は一区切り」
と池田さんは話しておられました。
谷口大「―視点との対話― A dialog with a viewpoint」
谷口さんは若手陶芸家で、昨秋には札幌のギャラリー犬養で個展を開いていましたが、その際、珍しいことにうつわは1点もなく、土くれと格闘した痕跡をそのままかたちにして焼成したような、生々しい立体が並んでいました。
今回は、縦に長い陶板のような造形物を立たせています。
このインスタレーションのポイントは、反対側から見ると印象が相当異なることでしょう。
青や緑の釉薬が施されています。
「冬の間、土は静かに力を蓄えているということを、表現したかった」
というようなことを話していました。陶芸の素材も土ですからね。
山岸せいじ「まめな人 蓄」「まめな人 発」
山岸さんは札幌のフォトグラファー。
近年はデジタル写真を素材にした平面作品に軸足を置いています。
人間の群像をモティーフにしたり、写真で撮ったさまざまな色を写真ソフトで加工して抽象画のような作品に仕立てたり、いろいろな試みに取り組んできましたが、シリアスな作や叙情的な作品がほとんどで、今回のようなユーモラスな作品は見たことがありません。
「十勝は豆の産地なので」、豆の模型を頭にかぶった裸の男がさまざまなポーズを取っているところを撮影、プリントしてみました。
「豆の力強さ、エネルギーを蓄えているというイメージを表してみた」
と語っていました。
作品は
(※10日、山岸さんの作品名とサイズを訂正しました)
吉田茂「In the stream of life」。
吉田さんは札幌在住のデザイナー・美術家で、ギャラリーRetara の主宰者でもあります。
この十数年はほぼ一貫して、粘土をあえてひび割れさせて、時間の経過を見る人に意識させる作品を制作してきたと思います。
今回は、支持体は木枠ですが、表面は白、中身は赤に着彩して、亀裂をダイナミックに見せていることが多いです。
ただし今回は、形状からして、額縁としても機能しているんです。
作品抜きで、防風林のある広い雪原だけでも、この枠を通して眺めることで、風景画のように見えるわけですし、池田緑さんの直方体の作品をこの枠から見ると、また違ったたのしさがあります。
□防風林アートプロジェクトのFacebook ページ https://www.facebook.com/boufuurinart
■置戸コンテンポラリーアート (2012、鈴木隆さん出品)
□ブログ「緑の風」 http://imgreen.exblog.jp/
□池田さんのサイト http://www.ima.me-h.ne.jp/~ikeda.midori/
【告知】18人の写真表現-焼きつけられたイメージ(2013年、釧路)
■置戸コンテンポラリーアート(2012)=池田緑さん出品
■「和」を楽しむ(2014年1月)
【告知】山岸せいじ展 あわいを覗く そこは原子ひとつ隣の世界かもしれない photographic works(2012)
■吉田茂「洗濯物-いのちの連鎖」 ハルカヤマ藝術要塞 (2012)
(この項続く)