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越後妻有・池田緑さんに会えた 06夏休み(31)

2006年10月04日 00時09分59秒 | 2006夏 越後妻有など
 なんとびっくり、会場には池田さんがいらして、作品「家の年輪プロジェクト」の記録のためビデオカメラをまわしていたのだ。

 このblogの読者には池田緑さん(帯広)の作品をごらんになった方も多いと思うが、近年は「マスクプロジェクト」と題し、樹木にマスクをかけるなどの行為や、それを記録したビデオを通して、地球環境の悪化や新型肺炎などの問題を浮き彫りにしている。美術の勉強のためにニューヨークに短期留学するなど、とても元気な女性だ。
 今回もマスクプロジェクトをする予定だったが、越後妻有アートビエンナーレの総合プロデューサー北川フラムさんから、地震や雪害などで死者が出ているのでマスクはやめてほしいという強い要望があり、急遽方向を変えたとのこと。
 この作品が置かれている、築80年を超す家が刻んできた日付を、1日1日すべてテープに刻印したのだ。
(おなじ技法で池田さんは、じぶんが生まれてからの約60年間の日付をテープに打ち込むという作品をかつて発表している)
 つぎの画像は、作品の拡大写真。
 透明なつつの中に、日付の打たれたテープが入っている。
       

 50年とか80年とか、口にしてしまうと一瞬だけれど、こうして視覚化されると、時間の集積というものの凄さや重みが、伝わってくる。単純だけど、存在感のある作品だと思った。

 会場には、ひとりでこの家を守っているキヌさんが、お嫁に来たときのことをつづったテキストなどもあり、もうすこし時間があれば、腰をすえてじっくり読みたかった。
 また、キヌさんが蔵から出してきた、古い教科書や皿などのお宝も並んでいた(冒頭の画像の奥にあるもの)。
 蔵というのは、北海道にはほとんどない。北海道民が古いものを顧みない(ように筆者には思われる)のは、そこらへんも原因ではないかと思う。
 キヌさんの家の写真を撮ってこなかったのは不覚。その代わり、りっぱな裏庭の写真を。
       

 テープだけではなく、キヌさんの「自分史」や写真などをも通して、この空間全体が、日本の家と女性の近代の歴史を考えさせる装置になっているのだと思う。旧宿場町の家の土間に、近代の時間が凝縮されて、存在していたのだ。
 今回のトリエンナーレで、土地の風土に思いをはせた作品は多いが、歴史にまで視野を広げた作品はそれほどないと思う。その意味でも、とても意義深い作品ではないだろうか。

 キヌさんにおいしいお茶をいだたきました。ありがとうございます。

□池田緑さんのサイト

2001年の東京個展(gadenのリポート)

「越後妻有で池田さんの作品がいちばん感動した」というJacarrさんのblog
http://blog.so-net.ne.jp/shiro/2006-09-11


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2 コメント

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待ってました (toraian)
2006-10-05 23:31:41
ご無沙汰しています。

越後妻有の報告を楽しみに見ていました。

そして帯広の池田さんが、どのような作品を発表したのか、大変興味を持って紹介されるのを待っていました。

紹介してくれてありがとうございます。

様子がよく分かりました。

今年帯広で開催した個展の延長線上にあるようなパフォーマンスで、その一貫した発表スタイルを嬉しく思いました。

行ってみたかったとつくづく思いました。
Unknown (ねむいヤナイ@北海道美術ネット)
2006-10-06 21:15:14
toraianさん、読んでいただきありがとうございます。わたしは帯広での個展を見ていないのが残念ですが、「マスクシリーズ」以外の作品系列を初めて見られて、おもしろかったです。

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