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門馬よ宇子さんのこと

2007年06月19日 22時36分50秒 | 情報・おしらせ
 札幌の美術家、門馬よ宇子さんが亡くなりました。
 80代後半になってなお衰えぬ制作意欲と旺盛な好奇心、そして、昨秋の「FIX! MIX! MAX!」展(道立近代美術館)へのサポートにみられるような若手芸術家への励ましには、勇気付けられた人も多いと思います。

 門馬さんは、来年秋に、88歳を記念する個展を計画していたと聞いています。
 これまでギャラリー門馬アネックスで個展を開いた作家など、かかわりのある数十人に、じぶんの似顔絵を描いてもらうという趣向も考えていたそうです。

 また、若手を対象にしたコンペティションの開催も夢でした。年内の実施をめざし、資金計画もたてていました。



 門馬さんが最初に絵筆を執ったのは戦前。
 戦後、本格的に絵画制作を再開し、全道展や国展に出品していました。
 90年代前半には、人の顔をモティーフにした、粗いタッチの絵を描いていました。
 全道展では1978年に奨励賞を受け、80年に会友に推薦されています(2002年に会員、04年退会)。

 門馬さんの爆発的な活動が始まったのは、90年代後半になってからです。
 リーセント(現CAI)のスクールに通って端聡さんから「現代美術」のスキルを学び、全道展でも問題作を発表しました。
 自宅を改造して「スペースM」と名づけ、美術や音楽の発表の場に開放。さらに2002年には、再改装して「ギャラリー門馬」と改名するとともに、若手建築家の設計になる「ギャラリー門馬ANNEX」を自宅横に設けました。
 このアネックスは、独特の細長い形状と、すりガラスから差し込む光線などが、借り手の創作意欲をかきたて、渋谷俊彦さんや中橋修さんなどの個展は、この会場でなければ成立しないものだったと思われます。ユニークさでは道内でもピカイチのギャラリーでした。

 どこにでも顔を出すタフさと若々しさ。
(下のリンク先の、2001年の個展の紹介でも書いていますが、「ゴダールの映画史」上映会場でお会いしたときは、ほんとうにびっくりでした)
 東京に通い詰めて異色の書家井上有一の個展を実現させ、詩人谷川俊太郎さんを招いて朗読会を開く、抜群の行動力。

 わたしは、門馬さんは、ひょっとしたら不死身ではないのかと思っていたのです。

 せめて、来年の個展までは元気でいてもらいたかった。
 そして、若いくせにひーひー言っているわたしたちを励まし続けてほしかった。



 門馬さん、去年教えてもらった、おいしい珈琲の入れ方、わすれませんよ。
 わたしたちは、地上でがんばります。
 どうか、見守っていてください。


ギャラリー門馬

artscapeの、吉崎元章さん(札幌芸術の森美術館学芸員)によるギャラリー門馬のリポート

01年の個展
02年、ギャラリー門馬オープン
02年「リレーション夕張」
04年、井上有一展を企画

(冒頭の画像は、2001年の個展で発表した「私へ」の一部)


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2 コメント

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ご冥福をお祈りいたします (エゾ三毛猫)
2007-06-20 00:05:23
一度アネックスでお姿を拝見したのは、
去年の夏頃。
歓談される中、割って声をかければよかった。

アートが好きな方にとっては、
理想の晩年の姿だと思います。
Unknown (ねむいヤナイ@北海道美術ネット)
2007-06-20 21:20:47
エゾ三毛猫さん、コメントありがとうございます。

稀有な若々しさの持ち主でした。
あれほど若い人との会話をたのしんでいた80代の方は、めずらしいと思います。

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