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続き■本田明二展 ひとノミ、ひとノミ、私は 木を削る。 (2018年11月2日~19年1月17日、札幌)

2019年01月16日 17時59分59秒 | 展覧会の紹介-彫刻、立体
(承前)

 中央は「踊」(1979、ブロンズ)
 後ろに見える立像は「抜海 鳥を抱く」(1982、ブロンズ)

 「抜海ばっかい」は本郷新の、釣り人としての号。
 稚内近傍におなじ名の駅がある。

 それにしても、相当ふざけたというか、ユーモアあふれた作品である。
 本郷新の代表作に「鳥を抱く女」があるが、少女のかわりに本郷本人がニワトリを抱いている様子を彫刻にしているのだ。

 ちなみに、後列の右端は、本郷の肖像である。
 特徴的なあごひげが目立つ。




 左は「飛ぶ」(1962、木)
 右手前は「家族」(1957、木(マカバ)

 「盗作」というつもりはもちろんないのだが、本田明二の作品には、他者に影響を受けたあとが見えたり、他の作家と共鳴・共振している様子がうかがえたりするものが多いのではないか。
 先に述べたのは本郷新だったが、「家族」の有機的な曲線は、山内壮夫を思わせる。
 あるいは、ヘップワースやムーアといった、戦後の世界の彫刻界を主導した作家の影響かもしれない。




 左は「けものを背負う男」(1982、カツラ)
 右は「えものを背負う男」(制作年不詳、木)

 図録によると、このシリーズは本田明二が晩年に繰り返し取り組んだもので、1979年に道立近代美術館で見た「夷酋列像いしゅうれつぞう」が創作のきっかけになっているという。

 ただ、本田の場合は、作品をめぐる属性、すなわち、アイヌ民族とか蠣崎波響かきざきはきょうといった要素は後景に退いてしまい、純粋に造形をめぐる関心が前面に出てくるのだ。そもそも「夷酋列像」に描かれた男は、裸ではない。
 最初はわりあい写実的に彫っていた像も、上の画像や次の画像からわかるとおり、どんどんデフォルメされ、直線が主体の造形になってしまう。

 まあ、こういうレッテル貼りはあまり良くないのだろうけど、この造形第一の行き方は、いかにも全道展らしい近代主義だなと感じる。




 左は「けものを背負う男」(1984、クルミ)
 右は「狩人」(同)




 最後の画像は「けもの」(1976年ごろ、蝋型ブロンズ)

 こういう、遊び心が漂う小品も並んでいた。


 以下、図録の略年譜から。

 本田明二は1919年(大正8年)、月形村(現空知管内月形町)生まれ。
 旧制札幌二中(現札幌西高)で学ぶ。
 37年、上京して木彫家の澤田政廣に師事する。
 44年応召。色丹で終戦を迎え、約3年間シベリアに抑留される。

 48年復員、札幌に住む。
 50年、新制作派展(現新制作展)に「女の首」を出品し初入選。
 51年には全道展に初出品。いきなり会員となり、53年から60年まで事務局長を務める。

 札幌冬季オリンピックを記念して、真駒内の五輪小橋に「栄光」を設置(71年)。
 旭川には「スタルヒンよ永遠に」がある。
 1977年に「玄の会」を結成し、87年まで毎年出品する。

 89年、急性肺炎により死去。69歳。


2018年11月2日(金)~19年1月17日(木)、午前10時~午後5時(入場は30分前まで)。月曜休み(祝日の場合は翌火曜休み)、12月28日~1月3日も休み
本郷新記念札幌彫刻美術館(中央区宮の森4の12)

一般500(400)円、65歳以上400(320)円、高大生300(250)円、中学生以下無料
※( )内は10名以上の団体料金


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「朝翔」 (網走)


展覧会紹介
本田明二展(2010~11年)
札幌第二中学の絆展 本郷新・山内壮夫・佐藤忠良・本田明二 (2009年)
本田明二彫刻展 (2006年)





・地下鉄東西線「西28丁目」駅で、ジェイアール北海道バス「循環西20 神宮前先回り」に乗り継ぎ、「彫刻美術館入口」で降車。約620メートル、徒歩8分

・地下鉄東西線「円山公園」駅で、ジェイアール北海道バス「円14 荒井山線 宮の森シャンツェ前行き」「円15 動物園線 円山西町2丁目行き/円山西町神社前行き」に乗り継ぎ、「宮の森1条10丁目」で降車。約1キロ、徒歩13分

・地下鉄東西線「西28丁目」「円山公園」から約2キロ、徒歩26分


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