ヤングキングアワーズ 2013年12月号より
以下、ネタばれあります。 (未読の方はご注意ください)
●ナポレオン -覇道進撃- (長谷川哲也 先生)
アウステルリッツ迫る!
しかし、ベルナドットの軍は到着したものの、ダヴーがいまだ来ないという状況。
それでも我らが皇帝陛下は、「必ず来る」とダヴーを信頼している様子。
そんな今回は、アウステルリッツ前夜のフランス軍が描かれます。
スルトの不安。
ダヴーが到着していないことに加え、
ブラッツェン高地の放棄が気になり、敗戦の予感にとらわれてしまうスルト。
そこで、ナポレオンの友人でもあるランヌに、撤退の進言を申し入れることに・・・
ここで、ミュラも同行しているのをみると、軍内部には負けると考えている人間が、
それなりの割合で存在することがうかがえますね。
撤退を進言するランヌ。
そんなランヌを珍しがるナポレオンというのは、何となく友人っぽくて好きかも。
しかしここで、ナポレオンが撤退しない理由を、スルトに説明させようとしているのが、
かなり気になるポイントでした。
つまり、ナポレオンはスルトならわかっていると判断しているわけですよね。
これは前回でも同じような姿勢を見せていましたし、
スルトに対する期待の大きさを感じさせるのですが、スルト自身はわかっていない。
この齟齬はかなり大きいのではないでしょうか。
「ドゼーの代わりになるかもしれないスルト」という、ナポレオンの大きすぎる期待。
その重荷に(現時点の)スルトはふさわしくない、という描かれ方は、
今後どのようにかかわって来るのか、たいへん気になっています。
また、ナポレオンにとっての同等の友=ドゼーの代役であるスルトと、
普通に「友人」として評価されているランヌとの確執は、
なかなかに意味深いモノを感じずにはいられないものでありました。
ダヴーの到着。
争うランヌとスルトの間に割って入るように登場した
彼の存在感たるや、すさまじいものがありましたね。
さすがのランヌたちも気圧されていたのは、面白い所。
この3人は、ナポレオンにとって重要な存在として、描かれているように思えます。
そして決戦へ・・・
兵士たちに「頼みごと」をする皇帝陛下。
勝利のために士気を上げるべく、兵たちを鼓舞するナポレオンですが、
景気の良い言葉を発しつつも、彼らの死を確信しているあたり、冷酷でたまりませんね。
この冷酷さは指揮官として必要なもので、それだけに凄味を感じてしまう場面でありました。
さらに、ビクトルたちやクロイセの動向など、
着実に『ナポレオン ~獅子の時代~』1巻で描かれた
アウステルリッツにつながるシーンも出そろって、いよいよ開戦となるのでしょうか?
ナポレオンの絶頂期ということで、新たに描き直されるのか?
はたまた別の視点で描かれるのか? などなど期待しつつ・・・ 今後も楽しみです!