五里霧中

★ マンガなどの感想 ★

◆ この“キャラ”を見よ! 『恋は地獄車』より、後藤さん

2011年01月12日 | ◆4コマ漫画 感想

「この“キャラ”を見よ!」の第5回です。(今までの記事はこちらから)

 

今回は、1月13日にコミックス1巻発売の4コマ漫画

『恋は地獄車』(瀬戸口みづき 先生)より、後藤さんです。

Jigokuguruma016

現在、4コマ漫画で好きな男性キャラクターを選べと言われたら、

かなり上位に入るくらいの人物だったりします。

 

 

 

■『恋は地獄車』について

「まんがタイムオリジナル」連載中、瀬戸口みづき先生作の4コマ漫画です。

 

Jigokuguruma000

 

主役は、ヒモの男性と同棲中のOL万里子さん。

彼女は男運が悪く・・・というか、選ぶ男がロクデナシばかりで、

そのために苦労を積み重ねてきたらしく、そのくたびれた表情からは

幸の薄さがにじみ出ています。

 

そんな彼女が現在、愛し愛される男性は、いわゆるヒモ。

働かず、万里子さんの世話になってゴロゴロするばかり。

だけど明るい性格で、万里子さんを愛する心は本物らしく、

彼女とはけっこう上手くいっていたりします・・・・・・「結婚」からは逃げまくっていますけど。

 

そんな男と暮らす姉を心配しているのが、万里子さんの妹・千歳さん。

快活で行動派、姉とは違ったタイプの大学生で、姉の「目を覚まそう」と奮闘中。

 

こんな3人を中心に、ヒモくんと万里子さんのラブラブ生活や、姉妹のOL・学生生活、

そして周囲の人々の恋模様などなど、そうしたものが「大人テイスト」で面白おかしく、

また「あ~なんかわかるかも」といった雰囲気で描かれた恋愛(?)コメディになっています。

 

 

 

■後藤さんという人

後藤さんは、主人公・万里子さんの先輩であり上司。

 

Jigokuguruma001 万里子さんに話しかけたと思いきや、

彼女の同棲相手を「いいとこねーじゃん」

とバッサリ。

 

 

ヒモ男に向けられた言葉ではありますが、

万里子さんに対する皮肉がこめられた

なんとも意地の悪い言い方です。

 

 

まあ、万里子さんの愛は、こんな言葉じゃ

揺るぎもしないんですけども・・・

 

 

このしゃあしゃあとしてぞんざいな態度が、後藤さんという“キャラ”の特徴になっています。

何かを揶揄するようなストレートな物言い。 そこに「遠慮」と言う文字は存在しません。

 

 

しかし男性読者の中には、彼の物怖じしない態度だけではなく、

その言動に思わず共感したり、納得してしまうような方も結構おられるのではないだろうか?

と、考えることがしばしばあります。

 

Jigokuguruma012 クリスマス、彼のためにケーキを作る

と言う万里子さん。

 

選んだのは、ブッシュ・ド・ノエル。

「カワイイでしょう・・・?」と述べるものの、

後藤さんの反応は微妙。

 

 

そして、

「いやいや かわいくねーだろ

なんでケーキが丸太なんだよ」と、

?マーク付で素直な感想を述べています。

 

 

あー、言わなきゃいいのに、

適当に合わせときゃいーんだよ、

と、苦笑を浮かべてしまいそうになるシーンですが、

後藤さんはそんなことできない人なのです。

 

 

案の定、このあと後藤さんは万里子さんからプチ仕返しされて、

世知辛い世間の風を感じたりすることになるわけですが・・・

 

なんとなく、後藤さんに同意したくなる方もいらっしゃるのではないでしょうか?

私は同意しないまでも、「へ~、こーゆーのをカワイイと思うんだ」くらいには思いました(ぇ

こーゆーときは「ホントダカワイイネー」とでも言っとくのが、大人の処世術なのでしょうね。

肝に銘じとこう。

 

 

 

■後藤さんの女性観

しかし、後藤さんのスゴイところ(?)は、このストレートな物言いが

女性に対して平等であるという点なのです。

たとえば本作品には、はるなさんというモテ女性が登場するのですが・・・

 

Jigokuguruma011 社内一のモテ子はるなちゃん(23)

上目づかいがすごく上手

(※男性の前のみ)

 

 

舌足らず話し方

ピラピラした服

キラキラのケータイ

カワイイ笑顔もお手のもの

 

 

・・・絵にかいたようなブリッ子さんです。

 

 

彼女には彼女なりのたくましさがあって、それが魅力となっているキャラクターでは

あるのですが、一般的には多くの女性に嫌われつつも、逆に男性にはチヤホヤされてしまう

タイプの人物ですね。 作中でも、そうした描かれ方をしています。

 

 

しかし後藤さんの毒舌は、彼女に対しても容赦なし!

 

Jigokuguruma005b_2 「あいつ絶対今頃、

細っせータバコ、スッパァ~吸いながら

優しくしてくれるテキトーな男に

カチカチメールしてるぜ」

 

 

 

バッサリ語る後藤さん。

でも、後輩の滝くんなどは、「はるなちゃんはそんな子じゃないッスよ!」と弁護。

このことから、はるなさんの裏の顔に気付いている男性は多くないことがわかるし、

そんな中でも後藤さんは女性を的確に見抜ける男性らしい、ということが察せられるのです。

 

 

しかし、そんな風に女性を見る目がある?後藤さんの女性観は・・・ちとアレです。

それがよくわかるのは、万里子さんから「彼女つくらないんですか?」と問われたときのこと。

後藤さんは急に、キレたようにまくし立て始めてしまいました。

 

Jigokuguruma009b 「女ができたら週末は拘束され

デート中にアクビでもしようもんなら

『楽しくないの?』と唐突にスネられ

 

うっかり数日放置した後は

『浮気してんの?』と理不尽に疑われ

このトシになると結婚するかしないか

の二択を迫られる」

 

 

・・・トラウマでもあんのか後藤さん?

 

 

 

結論、「女はメンドー」。

これが後藤さんの女性観なのです。 なんか昔にいろいろあったぽいですね。

まあ、こんななので彼は女性にモテません・・・というか、自分から遠ざけてしまいます。

コンパなどでも露骨に嫌そうにしますし、「彼女いないのか?」と問われると

「いないしいらない」ときっぱり答えたりもしています。

 

 

 

■万里子さんとの関わり

しかし、そんな後藤さんも万里子さんに関してだけは、

ちょっと違った姿を見せてくれたりするのです。

 

Jigokuguruma008「万里子さんが隣の課の奴に

ナンパされてます!!」

と、後輩の滝くんが嬉々として

伝えに来ています。

 

2人してのぞきに行きますが、

滝くんが面白半分なのに対し、

後藤さんはちょっと違った様子。

 

 

興味本位?それとも・・・

 

 

 

後藤さんは万里子さんの上司として、ヒモ男と暮らす彼女の心配をしたりします。

半ば呆れつつも、何だかんだと世話焼いたりして、1度などは誤解したヒモ男くんから

嫌がらせを受けたこともあるくらいなのです。 

 

 

読者としては、それが本当に「上司として」なのか気になるところ。

後輩・滝くんなども、そのことを疑ったりしています。

 

Jigokuguruma019「後藤さんって万里子さんのこと

好きなんでしょー?」

酔った勢いとはいえ、直接すぎる疑問。

 

 

 

それに対する後藤さんの顔が面白い。

「何スか その顔

だっていつもちょっかい出してるし」 

 

 

 

「好きとか嫌いとかしょーもない

話題変えよーぜ」

「え~ はっきりして下さいよ~~~」

 

 

ツっこまれたくないのか、

なんだかムリに話題を変えて

矛先をそらそうとしているかのよう・・・?

 

 

ただ後藤さん自身も、自分の気持ちに無頓着というか無自覚なところがあって、

でもモヤモヤしているような、そんな状態でいるみたいなのです。

 

Jigokuguruma026 万里子さんがヒモくんとデートの日、

自宅でくつろぐ後藤さんは、

ふと万里子さんの事を考えたりしています。

 

 

 

「いつもと同じ休日なのに

なんでこんなにモヤモヤするんだ」

 

なんだか切ない気分です。

こう見ると、冒頭紹介した万里子さんに

かけた言葉の皮肉の意味も、

すいぶん違ったものに感じられるというものです。

 

 

 

 

■大人の男の悩みというか哀愁というか・・・

どういったカタチであれ、後藤さんが万里子さんに関心を持っているのはわかるのですが、

万里子さんはヒモくんにぞっこんだし、後藤さんも恋愛にドライというか諦観してる感じだしで、

とくに万里子さんにアプローチかけようとか、そういうことは今の所ないようです。

 

ただ、彼も30代という我が身を振り返ってみて、いろいろ思う所があったりも・・・

 

Jigokuguruma013 若い恋人同士が

ペアリングを喜んでいる風景。

お互い幸せそうにしている

仲の良さそうな2人です。

 

 

それを横目に後藤さんは

「あーゆーのを見ても

今さら何とも思わんが」

と、関心がなさそう。

 

 

 

しかし子連れの夫婦、

その家族風景を見ると

「あーゆーのは不本意ながら

少しココロに引っかかる」

と、モノローグ。

 

 

 

「守る家族があるとないとじゃ

違うんだろーな いろいろと・・・

30代ゆえのジレンマだぜ」

と、舌打ちしながら歩く背中は

どこか寂しい。

 

 

でも彼は、家族をつくることに消極的。

はじめから破綻すると分かっているものを求める気はなく、

だからといって刹那的な恋愛を楽しむ気にもなれない、といったことを語ったりもしています。

 

私は、そんな後藤さんの姿勢というものが、現代の大人の男性像として

一定のリアリティを持っているのではないかと考え、またそんな姿に哀愁を感じて・・・

いやハッキリ言うとシンパシーめいたものを感じてしまって、どうにも目が離せないし、

ぶっちゃけ大好きなわけなんですよ。

 

後藤さんの姿勢は、ある意味「臆病」ともとれる考え方ですが、

どちらかといえば「あきらめ」の感覚であるような、そんな気が私にはします。

私の一方的な見方ではありますけれど、これは現代の男性諸氏(女性も?)、

その多くに見られる傾向なのではないか?なんて感じたりもしています。

 

 

Jigokuguruma010

それはともかく、イジワル、毒舌、女性に対して失礼千万、

だけど万里子さんを気にしていて(?)、30代の哀愁を背負った男・後藤さんが登場する

4コマ漫画『恋は地獄車』1巻は、1月13日に発売です。 楽しみ!

 

 

(引用)

「まんがタイムオリジナル」

 2010年 4月号 P.109

 2009年 6月号 P.135

 2009年 6月号 P.137

 2010年 1月号 P.155

 2009年12月号 P. 49

 2009年 8月号 P. 49

 2009年11月号 P.104

 2009年10月号 P.158

 2010年 6月号 P. 78

 2010年11月号 P. 46

 2010年 1月号 P.158

 2009年11月号 P.105

 


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