昨日は米国某大手証券が、米大手金融機関の格付けを引き下げたことに端を発したといわれる米国株式市場の下落は、やや沈静化の状態にあった市場を再度覚醒させてしまったようです。
その後のFOMC議事録発表では、あくまで過去の議事録であり詳細は不明なため明確ではありませんが、とはいえ当月初の時点でサブプライム問題への懸念や方向性について何らかのコメントは聞かれておらず、もしそれが本当であれば、その後から現在に至る株安連鎖の原因は、失望売りとも考えられます。
また、米国が当問題に対して楽観的過ぎたか、確信犯であったという側面は否めず、某欧州系大手銀行レポート(非公開)や当社配信の加藤出レポート(サンプル)では、日銀ですら7月の月報でサブプライム問題の不透明さを指摘していたという皮肉も聞こえてきています。
現状では米国のダメージだけが強調されておらず、米国売り(=ドル売り)一色という形では反応していません。あくまでリスク資産からの撤退や圧縮という側面から、株式投資からの資金引き上げ(株売り)や海外投資からの資金引き上げ(=ドル買い)という形に収まっている感覚があります。キャッシュ化された米ドルの行き先は債券に向かっている様子で、債券価格の上昇が利回りの低下となってドル金利が下落しているのは周知のとおりです。
問題は日本での状況ですが、株式市場における外国資本の流入は既に相当額に達しているといわれ、まだ日経平均が1万円を下回っている頃からの上昇は概ね外人の買いに支えられてきたともいわれるほどでした。小口化やデートレードなどで日々の出来高における、日本人投資家の取引割合は以前より増加していたのかもしれませんが、本来の投資的観点では外人による根っこの下支えがあっての株価上昇というシナリオが想像できます。
だとするならば、彼らにとってのリスク資産逃避行動は、当然ながら株売りとなり、日々のレポートでも売り越が継続していることにが裏付けられています。
では為替はどうかといえば、第一にリスク逃避通貨として選好され易い特徴があることから、対円で円買いが持ち込まれていることが指摘されています。
また、これまでの外人による円キャリートレードを想定した場合、円を借り入れてリスク資産に投資をしていたとすれば、それらを解消するということは、借りていた円を返す、つまり円買いで完結してしまいます。したがって、米ドルに見るような本国送金にまで至っていないことが想定でき、ユーロやポンドのように、ドル円でのドル買いにはなりにくいという側面がありえます。
さらには、本邦投資家の外貨投資の決済や海外債券投資などのヘッジは全て円買いとなることは明白です。つまり、現在の円買いは決して投機ではなく(一部はあるでしょうが・・・)、リアルマネーの清算が原動力となっている点は、前出のレーポートでも指摘されています。
本邦で販売された投資信託や海外債券投資ファンドでは、恐らく為替のヘッジまで織り込まれている商品は無いに等しいはずで、為替のヘッジはある意味で個人投資家に任せるというスタンスです。
過去には外貨資産のヘッジ手段を持たなかった本邦個人投資家も、外国為替証拠金取引というベストな手段を手にすることが可能な現在、当取引のルーツはそもそもヘッジから始まったように、本来の使い方をすべきだと感じています。
ドル円に関しては、円買いの要素は今後も複数指摘できますが、残念ながらドルが買われる芽について近視眼的には非常に限定的に思えます。強いて言えば可能性としてドル買い介入程度でしょうか。そのうちには云々・・・という意見には大賛成ですが、その前にどこまで下落するのか、“そのうち”とはいつなのかは『神のみぞ知る』ということをお忘れなくいただきたいと思います。“そのうち”を待っているうちに退場とならないためには、そうなってから…という心構えは必要です。
投資文化では、一歩も二歩も先を行く海外投資家はリスク資産やレバレッジの圧縮をしています。その事実だけは認識いただき対応いただければと思うこのごろです。別に投資はしていないのではなく、レバレッジを押さえたより安全な投資先を選んでいる状況なのかもしれません。