外為ガイドブック☆FX取引の基礎や相場分析を解説…五里霧中の相場取引に一筋の光を

外為市場経験者の浅野敏郎が値動きに着目したチャート解説や個人的意見を綴る相場ブログ&用語集!

欧州一般の景気減退は概ね想定内 それでも利上げはあり得るのか

2008-06-27 10:21:23 |    -ドル円

欧州の民需等を判断するのに重要なドイツIFOの数値は、下値支持を下割れしたとも見える落ち込みを見せ、米国指標も利下げ効果が今ひとつ見えてこない状況の中、双方とも売り圧力の綱引きといった、あまり歓迎できない競争に向かっている感じです。

円は相変わらず、唯我独尊の真逆を行く、自暴自棄的な自国通貨売りとなっており、「もっと自国を信じましょうよ。」と呼びかけたいくらいです。ただ、確かに高齢者医療、富の偏重、増税…と、暗いニッポンどこまで沈む状態では、積極的には買ってゆけない地合いも理解できます。

円売りの材料などを物色してみますと、直近での候補としてはやはり海外投信に絡む円売圧力が最も有力でしょう。このところの為替だけを見た印象ですが、かつてのような株安=円高、株高=ドル高という公式が崩れた今、本邦投資家のアクティビティは異常に低下していると見ます。増してや行きそうで行ききれなかった株式市場のあおりを受けて、為替に回る資金不足が再度深刻化している様にも見えます。

もう少しスパンを拡げてみれば、海外投資家の円買い投機が一巡後、数ヶ月をかけて少しずつ買い戻しが入っており、現にかなり円のロングポジションが解消されたようです。つまり、目に見えにくい円売り圧力が常に働いていたと考えられます。

確かに、金利の云々だけを見れば円買いの魅力は限定的で、欧州の、少なくとも利下げの目が無くなった比較的金利が高い通貨に対しては目先の魅力は十分あります。ただ、昨年の丁度今頃、主要通貨はドルに対して史上高値を更新する中で、円だけは全く買われずにドルの戻り高値を試す時期がありました。しかし、時間の問題だったのか、その歪みが8月以降現在に至る下落波動を生んだともいえます。現在のドル円は、これと非常に良く似た状況に見えて仕方ありません。

ドルも売り、ユーロも売り、円も売りという状況で、「じゃ、何が買えるの?」という状況が原油高の一因となっている可能性は非常に高くなっています。インフレが現在のキーワードの一つとなっていますが、お金が入って来てバブっている国と、勝手に物価が上がっているだけの国と、数字だけでは判断しにくいですが、同じインフレという言葉で一括りにしないほうが良いと思います。一点に集中した膨大な投機マネーはまた、逃げ足も早いことを念頭に、その準備だけは怠らないよう、ご留意ください。


政府系ファンド日本上陸報道-その裏は・・・深読み過ぎ?(2)

2008-06-15 02:18:01 |    -ドル円
同じ紙面にサムライボンドのネタも掲載されてましたね。外資による円調達は、裏に円売りが伴いがちですが、このあたりも円安の加担要因となっている可能性があります。ただ、ソブリン系の資金が国内に直接投資となれば、為替は円買い。しかも株価に弾みがつけば、直近のレポートのように、株高=円高のステージもあるかもしれません。ただし、長い時期の間に株高=円売りのシナリオに慣れさせられてしまった結果、海外投資家はまさにWチャンスを手にしたも同然。円転はゆっくり構えていられる状況です。
 
本邦も個人の住宅ローン関係にきな臭い報道が聞かれるようになりましたが、企業側では優良(大小ではなく)な案件は、海外からも注目されていそうですね。
 
欧州では利上げ期待が拡大中とのこと。確かに市場金利は上昇している様なのですが、それだけで利上げを期待するのは尚早ではないでしょうか。米国ならば無理下げした分、まだ可能性はありそうです。個人的には、一時的な債券売りによる影響が強いのでは、と疑っています。想像でものを言いますが、TSLFの期限切れ?などというリスクファクターは、無いですかね。BOEは恐らく3ヶ月のタームでオペを行っていたとすれば、丁度3ヶ月前後ですし・・・。あくまで、想像です。市場は、「過度なインフレ期待に警戒感」という海外政府筋のコメントを、利上げ近しという風にとっています。ただ、「このところの金利上昇は、違うのです。理由は言えませんが、金利だけが上昇しているのであって・・・。だれもインフレに警戒とは言ってませんよ。」と聞こえるのは、私だけ?・・・あくまで寝言です、では。(了)

政府系ファンド日本上陸報道-その裏は・・・深読み過ぎ?(1)

2008-06-13 18:35:50 |    -ドル円
今朝の日経新聞に政府系ファンドが日本の某施設に出資というネタが一面TOPに掲載でしたね。一面トップの割には、一般受けしない記事でその重要性にピンと来なかった方も多かったのではないかと。
自分も、この世界にいなければ、読み飛ばしていたかもしれません。
 
いよいよ、日本の投資界にも直接名前が出るようになりましたか・・・。にしては、 午前中は 株価平均が小幅下落で、どーもよう解らん!動きでしたが、午後に入って外国人投資家と噂される買いなどを伴って上昇で引けた形ですね。お目が高い!といったところですが、少し前なら円安だけで株価がするする上昇していた頃が、既に懐かしいという感じです。(続)

ターム物証券貸出制度【TSLF-Term Securities Lending Facility】

2008-06-13 11:07:39 |   -FX実用相場用語

2008年3月11日、米国の中央銀行的な機能を果たすFRB(フェデラル・リザーブ・ボード【連邦準備理事会】、ここではニューヨーク連銀の意味ではない)が発表した、これまでの証券貸出制度を拡充したプログラムで、これまでアウトライト(翌日物)での資金放出が中心だったものを今回、期日物(ターム物)も取り込むことになった。今回のタームは28日間を約束するもので貸しっ放しでは無いが、今後は90日などより長期のタームにも取り組んでゆく予想をたてている専門家もいる。

貸し出す際に受け入れる担保種類を、通常は無効な民間発行のRMBS等にも拡げたことで、市中市場へ直接資金注入する意識がメッセージになっているのが特徴でもある。FRBの発表によれば担保として特筆されているものは、

・     政府機関債券(federal agency debt)
・     政府機関発行の住宅ローン担保証券(federal agency residential MBS)
・     民間発行のA格付住宅ローン担保証券(non-agency AAA/Aaa-rated private-label residential MBS)

参考記事:4月22日掲載 <http://blog.goo.ne.jp/gaitame-univ/e/870ada698fc7bb0d8c9b053668d5af6f
相場コメントは現状大ハズレ!ただ、5月初頭に200円を一度割れる動きをしており、結果はOKでした。 

以下は、正確性を欠く可能性があるが、当時の記事を読み漁ってまとめておいたものを掲載した。

証券貸出制度とは、中央銀行(今回はFRB)が保有する政府証券を、プライマリー・ディーラーに貸し出し、市場参加者に売却(貸し出す)することで借りた資金を、資金需要者に貸し出すという操作のようである。政府証券だけに限らず、債券や証券は保有者がその価値を担保に資金を借入れるような市場があるが、今回は借り手(資金供給者)が付きにくいRMBSなどを、政府が担保として受入れ、政府証券と交換することで、RMBSが間接的に流動性として機能するようにさせ、滞っている貸し渋りを解消する策のようだ。要するに、訳もわからず恐怖感から、上記のような債券を引き受けて資金を貸さなくなることで、本来はこうした資金調達をしていた企業や機関が資金を調達できなくなり、倒産や破綻のリスクが高まる。こうした現象をクレジットクランチというが、負の連鎖が始まる前に、価値がある証券であれば政府自ら担保として引き受け、見合った政府証券(最高信用の通貨と同等)と交換することで、曖昧だった資産価値にモノサシを示し、資金供給を受けられることを目指すところなのだろう。


為替市場‐現状への考察(4)-最終回

2008-06-05 20:26:20 | ☆相場分析-ユーロドル

一時、ソブリン系の株式買いが強調された時期がありました。そんな中で、中央銀行(当時はどの国なのか特定された噂はなかったと記憶しています)が株式で買い介入をしているとまでの噂になったことがありました。当時、さっそく大手投資系外銀の友人に事実関係を聞いてみましたが、一笑された記憶があります。

某レポートでは、「ソブリン系のファンドが分散投資を継続する限り…」という前提条件を付した上ですが、分散投資の視野として、割安感のある米系株式へも何れは向かうという期待をかけています。サブプライム問題で傷んだ米系金融機関に対して、産油国系ソブリンファンドが支援に入ったことは、周知の事実です。
だとすれば、これらの株価が回復することはファンドの目的にもかなっており、世界経済が傷み過ぎないように各株式市場へ運用資金を投入することで、下支えとなる経済介入効果はあり得るかもしれません。一時的にせよ株価が底堅くなって米ドルが上昇する流れもあったことは事実であり、本当に株式市場へソブリン資金が流入していたとすれば、それが介入騒ぎに発展した可能性もあり、かの噂はまんざら嘘ではなかったことになります。

以上、後半はフィクションのようなコメントとなりましたが、正解だとすれば、やはりユーロの下落リスクは際立っている様にも思えますね。そしてドル以外の先進国通貨も売られ気味になることが想定されます。ただし、もしソブリン系の資金が日本の株式市場に流入して上昇圧力が発生した場合(いや、して欲しい?)、その他の原因を無視すればむしろ円高かもしれず、この相関は1980年代の基本的な動きと一致しています。こうなると、今までの日本株価上昇=ドル円上昇の逆相関は、暫く機能しなくなる場合も想定されます。

最後に先日、原油の上げ止まりを想定した際の理由として、セル・ザ・ファクトがあると申し上げました。つまり、今回ご紹介したようなレポートが公開されること自体、この論理で言えば既に一巡したことになり、鵜呑みにすると足元をすくわれる可能性も残していることをご理解ください。また、いくらソブリン系ファンドといってもその資金は無尽蔵ではなく、こうした動きが永久に継続すると仮定するには、無理があることも含み置きください。(了)


為替市場‐現状への考察(3)

2008-06-05 13:06:10 | ☆相場分析-ユーロドル

同レポートではまた、ここ期近の原油価格とユーロドルの相関に矛盾をきたしていることに着目し、流れを継続するかどうかは次期尚早としながらも、資源・株などの実体があまり伴わなかった通貨高のリスクに焦点を当てています。

つまり個人的な感想では、恣意的か否かにかかわらず、原油価格の高騰によるインフレリスクは欧州においては利上げのバイアスを維持することができ、通貨買いを促進する薬となっていたのは事実です。その矢先に、想定外のサブプライム問題によってドル売りが強調された結果、その効果は一層鮮やかになったかにみえました。

しかし、いくら通貨だけが強くても実体の経済が強くなければ、トレンドを継続することには限界があり、かの薬が今度は副作用として自らの体力を奪っていった可能性はあります。最後まで粘っていた欧州経済もサブプライム問題のブローが効き始め、足元がふらついてきたとすれば、本音は利下げというのが正論に見えます。

これまで原油価格の上昇がコストインフレの原因となっている以上は、口が裂けても利下げなどと言える状況ではありませんでした。しかし、原油価格が落ち着きを見せインフレが低下してくるようなことがあれば、堂々と利下げを敢行できる環境となるはずです。ならば、下げ止まり感の強いドルとユーロとの金利差は益々縮小傾向となり、ユーロドルは特に下落のバイアスがかかることも予想され、ドル買いのセンチメントは一層協調される可能性があります。

ただ、他の対ドル通貨ペアでドル買いが強まれば、ここまで積みあがった本邦投資家の対円クロス円投のまき戻しを引き起こし、円買い要因となってドル円の下落を連鎖する可能性があります。もしこのような可能性が無ければ、ドル円も上昇予想を否定するものではありませんが、クロス円の売りによってドル円の上昇圧力は相殺され易いことは事実で、依然として方向感の無い展開は想定の範囲内です。(続)


為替市場‐現状への考察(2)

2008-06-04 22:28:11 | ☆相場分析-ユーロドル

再度、情けない話ではありますが当レポートへの理解は不十分であり、また解釈の確認をする機会は限定的なことから、情報の正確性等を保証するものではありません。この点を踏まえていただいたうえで、

某レポートでは、ソブリン系ファンドの投資性向の変化が一因としており、特に原油価格の高騰によって産油国系ソブリンファンドの流動性が増したことで、その流れが顕著になっている可能性を指摘しています。

その前に先ず、以前から産油国のソブリン系(政府系)ファンドの存在は為替市場では有名な話です。市況などでも目にされた方も多いかと思いますが、彼らは原油の輸出で得た収益の一部を運用している組織であるため、この原油高騰の流れから同じ量の輸出でも、例えば1バレル40ドル時代を例にとれば3倍ものドル対価を受取っていることになり、その分流動性が拡大するのは、ご理解いただけると思います。

さて、投資性向の話ですがレポートでは、2000年以前のオイル系ソブリンファンドは得たドルを主に米国債券市場で運用していたところ、2000年以降は積極的に分散投資を開始し、今ではその多くを株式投資で運用しているというのです。つまり、ドルを売って株式を買う行動から基本的にドル売りのセンチメントが構築され、その行き先は主にBRICSへ向かった可能性が高い、としています。

このBRICSにおける株式市場の上昇ですが、特にICは人口が多い国で有名であることから、資源の枯渇を連想させたことはうなずくことができ、資源つながりからいわゆるコモディティ通貨も強くなったという連鎖にも十分納得が行きます。近年になってこれらの相関関係が顕著になった理由は幾つか考えられますが、

① サブプライム問題の露呈でドル売りに拍車
② 原油価格の高騰で流動性が増し、ソブリン系の分散投資の流動性に過剰流動性が上積みされ拍車がかかった

等も理由としては候補となるでしょう。

では、株式や資源の裏づけを持たない通貨は、どういう状況が考えられるかといえば、基本的には為替の側面による影響が強かったことは想像がつき、特にユーロはドルのヘッジで上昇してきた感覚は理解できます。政策金利もさほど高くないことから、言い過ぎかもしれませんが、ユーロを下支えたのは、外準と日本の投資家だったのかもしれません。(続)


為替市場‐現状への考察(1)

2008-06-04 20:50:44 | ☆相場分析-ユーロドル

実は個人的な為替のイメージは、欧州通貨売りでは一致しているものの(ポンドの粘りはやや意外でしたが、ユーロに連れ安となっています)、クロス円のイメージが合わずに苦労していましたが、6月に入って概ねイメージとおりの展開が先行しています。先々週の欧米連休明けにイメージした原油相場のきな臭さには鼻が利いた形となり、まだ小幅であるものの一旦は上昇をやめての調整を迎えているようです。

既に市場や各レポート、及び新聞等でも原油相場とドル相場の相関関係は周知の事実ですが、このところの動きはそれまでの画一的な動きではなくなりつつあり、余計に混沌とした相場展開へと突入している様に思えます。

この件に関して、某欧州系銀行の機関投資家向けレポートで興味ある内容が報告されていました。当レポートによれば、「これまでの原油高とドル安の逆相関は崩れつつあり、今後もその傾向を継続する可能性」を指摘しており、また「特にユーロ上昇と原油上昇の相関の崩れを指摘」した内容になっています。

十数種類のグラフを使って論破している当内容の全てを把握するには、あと数回読み返すなどの作業が必要で、中途半端な解釈を公表することで、かえって皆様のお邪魔になるかとも思いましたが、少なくとも昨今の混沌相場の理由がわかった気がしており、現状の範囲内でお伝えできればと考えました。余計な雑音は聞かれたくないと思われる向きは、どうぞこのまま閉じていただければと思います。

このところの原油相場の上昇によりもたらされるコスト高によって、
①     企業収益が悪化
②     小売価格にも影響してインフレが顕在化
③     消費マインドの低下による一層の業績不振

等の憶測が、株式市場の下落等を招いた引き金になっている形で、サブプライム問題がトドメといったところですが、このところの動きはダウなどの株式市場が下落してもドルが買われる現象や、日経平均が買われているのにドル円が下げるなど、これまでの常識が通用しなくなりつつあります。つまり、株は株、為替は為替の動きに回帰しているとすれば、どんな考え方があるでしょうか。

たしかに、某レポートの指摘は、このところ顕在化している様に見えるのですが、その理由を探ってみましょう。(続)


ソブリン系ファンド【Sovereign Wealth Funds】

2008-06-04 20:31:11 |   -FX実用相場用語

政府系ファンドとも呼ばれるように、多くは国営機関として投資活動をしており、貿易等で得た余剰外貨を投資している。
既にご存知のとおり、産油国のソブリンファンドは昔から有名で、世界のお化けとして、昔の銀行間市場をにぎわせたこともある。

アブダビ投資庁(ADIA)、サウジアラビア通貨庁(SAMA)、クウェート投資庁(KIA)、カタール投資庁(QIA)、ブルネイ投資庁(BIA)、リビア投資庁(LIC)、ノルウェー中銀の年金基金(ペンションファンド系)などが産油国系ソブリン
他に、記憶に新しい中国の投資有限責任公司(CIC)、シンガポールのテマセックなどが主だったところ。

ソブリンという言葉が、リスクや格付けと組み合わさって使用される場合は、国債(ソブリン債)を指すケースもある(ソブリン・リスクを参照)。

こぼれ話
日本はというと、同様のステータスとなる機関は無いというのが、基本的なスタンスだが、昔の郵政省(郵便局)年金基金は、超円高時代において日銀のドル買い介入よりも効き目があったなどと介入を冷やかす材料となるほどの影響力があり、ペンションファンドが入るなら、混ぜていただいても悪くないのでは…という感じがする。