外為ガイドブック☆FX取引の基礎や相場分析を解説…五里霧中の相場取引に一筋の光を

外為市場経験者の浅野敏郎が値動きに着目したチャート解説や個人的意見を綴る相場ブログ&用語集!

為替市場と債券市場への考察-(3)公式は無いが・・・

2008-09-30 03:06:56 | ☆外国為替を読む
さて、長々と書いてしまいましたが、私は今回の為替変動の中で、基本的にドル買い(ドル円を除く)であることには、大きく3つの理由があります。

一つはチャート的な理由ですが根拠はそれだけではなく、上の理由にもあるように、あまりにリスク投資が強すぎた過去数年において、調整が入るのは自然なことです。圧倒的な流動性を誇ったドルは、債券を売って(金利は上昇)商品やBRICSの株式が買われました。土地も然りです。
それが巻き戻っている最中だとすれば、流れた資金の多くは一旦ドルに回帰すると考えます。あくまでストレートでの欧州売りを唱えていたのもそれが主要因で、クロス円もストレートに押されて売られることで、ドル円の上値も重たくなっています。

二つ目に、アメリカの金融機関がこれほど傷んでいる中で、欧州への飛び火は限定的だという妙な市場ムードを疑っています。英国政府は戦後最大の危機とまで言っているにもかかわらず、1.75まで下落後、1.86台まで戻すなど根拠が見えません。またECB圏内の欧州は景気政策よりも金利政策を重んじる傾向があり、利下げに躊躇している場合、欧州経済は再び暗黒の時代へ引き戻される懸念を抱いています。アメリカですら大手証券を破綻に追い込んだこの流れは、欧州に置き換えるとかなり深刻となる可能性があるかもしれません。そうなると先に手を打ったアメリカがどうも先手必勝と成りそうに思えます。

三つ目は、今回のテーマである短期金利の上昇による投機です。本日は米国債も買われており、スワップ協定による多額の流動性強調介入が好感されているようですが、債券が買われ金利が下がれば通常、株式市場は上昇しなければなりません。しかし、相変わらず信用不安からリスク回避の流れが払拭できないと資金繰りは改善されず、矛盾は解決されそうにありません。我々は為替を通じて、債券市場特有の金利投資という手段を得たと思いますが、その分随分と乱暴な相場になったと言う印象があり、理論が通じにくくなっていると思います。また、今まで商品市場や株式市場との関連性が重視されてきましたが、今後暫くはもしかすると市場金利とリンクする可能性が高くなり、それは単に、金利高=買いという図式から、債券高=買いという矛盾(でも無い側面もありますが・・・)する動きを伴う場合を想定する必要がありそうです。

私ごときが債券相場と為替相場との関係を矛盾無く論破するには無理がありますが、理論だけで動かないと言うのもまた、相場ではあります。適切な資金が適所に回れば問題ないのですが、市場に大量の資金を放出したところで、企業などへの貸し出しは結局、金融機関に依存します。かつて日本でも90年代前半でバブルがはじけたにも関わらず95年まで円高となって79円台を付けています。当時、不景気の円高という矛盾により多くの企業が悲鳴を上げていたことが思い出されます。

ドルの危機が叫ばれる割には、クロスの影響を受けるドル円を除き、ドル売りに勢いが無く映るのは私だけでしょうか。相場は第二波動を終了し、下落が早すぎた分直ぐにとは行かないかも知れませんが、静かに第三波動となる下落への準備を始めているように見えて仕方がありません。(了-為替投資郎)

為替市場と債券市場への考察-(2)債券市場と金利

2008-09-30 02:57:10 | ☆外国為替を読む
話がそれましたが、債券市場で扱われるいわゆる「国債」は、国家が保証する有価証券です。臨時的に資金が必要なとき、利回りを保証して投資家に売ることで、資金を集める手段です。昨今では特に日本の為替投資家にも債券市場の動向がメジャーとなりました。その発端は、為替取引を行う中で金利差メリットであるスワップの意味がようやく理解され始めたからに他ならないと考えています。今回の通貨危機による短期金利上昇というイベントに遭遇しなくても、遅かれ早かれ話題になるべきテーマではありましたが、元来、為替市場はヘッジの市場であり、為替を投機或いは投資の対象とする考え方は王道ではありません。

つまり、あくまで債券(金利)と株式と商品(貴金属を含む)が3大柱として国際金融は成り立っていたように理解しています。つまり、全てが変動する相場である場合、せめて何か一つは固定しないことには目論見すら描けません。そのときに最も最初に固定(つまりヘッジ)されるのが為替だったと言うことです。その一つの理由は変動幅が少ないこともあるでしょう。

それが、日本でも今は国際投資が一般的となる中で(直接は縁が無くても、投資信託では海外投資がポートフォリオに入っていない商品は殆ど無いのではないでしょうか)、為替がヘッジされない商品があふれるようになっています。つまり、今では4大柱で国際金融を判断しなくてはならない複雑さがあります。

債券は、ご存知のとおり、買われれば利回りが下がり、売られれば利回りが上昇するものです。買われる=国家信用の上昇となり、金利は低下。その逆は金利の上昇です。債券相場と為替相場の相関関係は金利とスワップの関係にあるといっても、基本的には過言ではありません。つまり、自由金利(市場金利)できまるスワップは、市場金利そのものと言うことになります。

国債等の債券利回りがもし、常に市場金利より低かったらどうなるでしょう。誰も買わずに銀行へ預金することになり、国家は資金を集めることが出来ないので、債券利回りのほうが高いのが普通です。ただし、人気が出て買われすぎると金利が下がるため、それこそ市場金利とせめぎ合うわけです。ですから、よく債券市場が売られると金利上昇となり、市場金利の上昇が期待されて為替が買われたりという動きになります。その代わりに、株式市場は嫌気され株価が下がり、株式が売られると、為替も売られて調整されます。

為替を含めた4大市場の中で信用と言うことになると債券か通貨であることは、国家信用を伴うと言う点で誰もがうなづける事だと思います。では、どちらで持っていたほうが無難か…となれば、やはり金利が高い方だというのは大方の賛成を得られると思います。
したがって、ある意味では安全投資先としてのステイタスが債券にはあり、よく言われるリスク回避行動の際には債券が買われるように、資金の一時避難的な投資先になります。逆に、リスク投資への流れが強くなれば、債券を売って得た資金で株式や商品を買う行動になるため、債券は売られ金利が上昇。まさしくこの流れが2005~2007年8月までの相場でした。(続)

為替市場と債券市場への考察-(1)その前に

2008-09-30 02:45:44 | ☆外国為替を読む
サブプライム問題から派生したこのところの金融危機は、既にご存知のとおりいわゆる“貸し渋り”を生み、多くの金融機関が資金繰りに苦労し始めているようです。

特に米国金融機関でありながら、ドルの資金手当てに苦慮する状況は、理解に苦しむ方も多いかと思いますが、かつて日本がバブルの崩壊を体験したように、信用が悪化すると当然そのような機関(民間であればまさに自分たち一般国民ではありますが)にお金を貸してくれる貸し手は少なくなります。
1%で貸してくれなければ2%で、それでも駄目なら3%で…と言うように、借り手は借り入れレートを引き上げてでも、資金調達を余儀なくされます。
それが、昨今の短期金利上昇の主要因であり、資金調達が出来ない→金融機関が潰れて預金が危ない→引き出すという流れから、大げさに言う向きは“金融恐慌”に例えているようです。

資産がありながら借金をしないと大手金融機関も資金が回らないのか…という疑問は自然です。狭義のデリバティブのような分野を除いた一般的な金融市場には、ご存知のとおり住宅ローンや教育ローンなども含まれており、「信用」という目に見えない担保が実際の金銭の何百倍、何千倍と言うキャッシュを生み出しています。例えば、私が住宅ローンで2000万円の借り入れをしたとします。建築会社は家を建てるとその場で2000万円をもらわないと困ります。
そこで、私の生涯賃金の中から数十%に相当するその大金を、金融機関が私の替わりに建築会社に支払い、後払いで私から分割で資金を回収します。今、この時点で2000万円というキャッシュは実在しないにも関わらず、ここに2000万円という価値(信用)が瞬時にして生まれたというわけです。

では、この2000万円はどうやって生まれたか?と言えば、単純に例えるなら、皆さんの定期預金や普通預金で預けた資金の一部が運用されていることになります。それでも、銀行が貸しすぎた場合、2000万円の信用の例えば50%を担保にすれば、貸借市場で借りることは通常で言えば難しい話ではありません。しかも、翌日になれば逆に貸していた別の資金が入ってくる保証があれば、借り入れ期間は1日ということにもなり、もっと簡単な話ではあります。

ところが、もし当てにしていた返済金が焦げ付いた場合、これまでの計画に矛盾が発生し、もう一日、或いはもう一ヶ月借りないと帳尻が合わないなどと言うことになり、返すために借りるような悪循環が発生すると、一気に資金繰りが悪化し、金利を上げても借りられないなら、最初に貸した私から「家を売ってでも返せ!」ということになり、今回のような住宅価格の下落やいわゆる“貸し剥がし”という、バブルを知っている方ならば、鳥肌が立つ行為に及んでしまうわけです。

本日も主要国の中央銀行が、聞いたことも無い額のスワップ協定を次々と発表しています。
まさに、誰も貸してくれなくなった資金を、中央銀行が市場に放出しようと言うのが主旨であり、日本が景気回復のために円資金を多量に注ぎ込んだ、いわゆる“ゼロ金利政策”の一種と同じことで、こうすることで貸し出し金利を抑えて、どうにか流動性を引き出そうとしています。(続)

各相場は壊れ気味-薄くて乱高下も高金利通貨売り先行か

2008-09-18 02:21:15 | ☆相場分析-ユーロドル
先月20日にアップして以来、概ね一ヶ月が経過してしまい、大変ご無沙汰してしまいました。
決してマーケットを離れていたわけではないのですが、週末も含め時間がとれずただズルズルとしてしまいましたこと、お詫びいたします。
 
その間、随分いろいろなドラマがありました。
 
その中でも「いよいよ来たか!」と、鳥肌を立てながら見守ったイベントは、やはり米系大手証券会社の破綻とAIGが資金の援助を受けたこと。そして、メリルリンチが買収されるなど、一世を風靡した無く子も黙る米系の機関投資家が次々とギブアップを始めたことです。
 
ただ面白いことに、相場はこれらの真実が明白になった後でも大きなドル安とはならず、ユーロやポンドなどメジャーの対ドル相場は、どちらかというと上値が重く感じてしまいます。
 
たしかに、数週間前の底値からは一相場となる戻りを見せていますが、ここ数日のサプライズだけをとってみれば、値動きは荒いもののどちらかに傾いた動きには至っていません。
 
その大きな理由は、リスク回避を主眼としたレパトリの動きが巻き起こり、一旦はドルに置き換えられるリスク資産が、ドル買い圧力となっているのも一つだと思われます。例えば、高金利投資をしていた資金が、今後の不透明性を理由に一旦は解消と言うことになれば、例えばポンドを売りドルに戻したり、ニュージーランドドルを売り米ドルに戻すなどの動きは想定の範囲で、本邦のこうした動きを想定すれば、まさにクロス円での円高を演出することになります。
 
また原油や貴金属などに流れたリスク投資も、解消の売戻しということになれば一旦はドルを買い戻す動きになることから、ハプニングに驚いた割にはドルが売られない状況となっていることは充分考えられます。
 
金利はというと、実は非常に興味深い現象が起こっています。日本のバブルがはじけた直後とまったく同じ現象ですが、信用が失墜した金融機関は足元の資金繰りに苦しくなります。つまり、こうした金融機関へのドル貸し出し金利は急上昇するわけです。したがって市中の短期金利は連動して上昇するので、政策金利ではドルよりも高いユーロやポンドでも、対ドルでは金利差の逆転現象が発生し、何とポンド買いドル売りをすればスワップを支払わなければいけない状態となっています。
 
まさか、これを受けてドルの政策金利が上昇するという先読みをすることは無いと思いますが、ストレートでなかなかドル売りが進まない一つの理由付けになっている可能性があります。
 
テクニカルには、やや下落スピード速すぎたため、売り疲れているようにも見える市場ですが、残念ながら特に対円のクロスが上昇する目は非常に薄い気がします。増して、ストレートでもドル売りは非常に不利に展開しており、ある程度の時間を調整した後は底値探しが再開されるように思えます。ドルの悪材料が出るたびに、何故かドルが売られず、クロス円が売られる“からくり”が少しでもご理解いただければと思います。つまり、ドルを買っているのではなく、その他の通貨が資金離れを起こしていると考えれば、幾分か納得できるかもしれません。
 
詳細な分析をしていないので、ターゲットを示すことは過剰誘導に聞こえるかもしれませんが、ユーロは対円で140円、対ドルで1.3500、ポンドは対円で160円、対ドルで1.7200辺りはあっておかしくない水準です。イメージは・・・ドルの悪材料は格好のドル買い相場(ドル円を除く)!上手く回り始めたらクロス円の売りにも挑戦する・・・ような展開に見えます。(為替投資郎)