証拠金率には注意すべき点はいくつかあるが、大きく2つのポイントがある。
1.証拠金率と取引商品の変動率
証拠金率で表現する場合、率が高いほうが実際に必要な資金額に近づき(レバレッジが低いのと同じ)、率が低くなると実際に必要な資金額からは遠くなる。
実際の資金額が同じ100万円の取引が2種類あったとしよう。A:は1日に5万円変動することはよくあり、B:は精々1万円前後とする。
つまり、この値動きが1日の標準的な変動幅だとすれば、Aの取引の1日平均変動率は5%であり、5万円の証拠金で取引をした場合、1日を待たずして証拠金をすべて使ってしまう可能性が高い。レバレッジでいうと20倍である。
一方で、Bの1日平均変動率は1%であるから例えば2万円で取引しても十分な余裕があり、この場合のレバレッジは50倍ということになる。
ここで着目したいのが、低い証拠金率(高いレバレッジ)が危ないという通説があるが、一概に言えないという理由がここでもわかるように、取引の対象となる商品の変動率などによって証拠金率は変わらなければいけないということだ。
つまり、Bは2%(50倍)の証拠金率でAの5%(20倍)より低い証拠金率(高いレバレッジ)であるにもかかわらず、結果的には低いレバレッジの方が、安全であることがいえるのは不思議だ。
要するに、変動リスクが高い取引には低いレバレッジを、変動リスクが低い取引には高いレバレッジを用いることに何ら矛盾ない。
確かに2008年の後半の為替相場は異常だった。つい夏の価格からは60%程度に下落した通貨が実在するのはさすがに100年に一度といわざるを得ないが、歴史的に30%前後が為替変動の平均値であったとするなら、一か月では3%の変動率を見込んでも、お釣りがきた計算になる。
一方で、ミクロの要因で数日の間に50%程度の下落をする株式の銘柄がある以上は、信用取引で数倍のレバレッジが精いっぱいの株式相場と、為替市場を比較すること自体に、整合性はないことがわかる(続)。