外為ガイドブック☆FX取引の基礎や相場分析を解説…五里霧中の相場取引に一筋の光を

外為市場経験者の浅野敏郎が値動きに着目したチャート解説や個人的意見を綴る相場ブログ&用語集!

スプレッドのお話3.相対取引(1)後

2007-06-05 09:55:34 |   -【特集】スプレッドのお話
(1)相対取引はプロ市場-後

例え今、銀行間市場に42の売りが存在していても、需給によっては取引価格が全く異なります。勿論、何も交渉なく42から200本に達成するまで買い続けても良いのですが、買いきった時の買値が幾らで収まるのか解らない場合、顧客は確定できる価格で取引を望むわけです。

このような交渉ができるには、普段から実勢価格を良く監視し、たとえば前編のケースで言えば、45がトライするに値するかどうか判断しなければならず、一般投資家がそれを判断するのは非常に難しいことは解りますね。このように為替で世界的にも唯一のINDEXとなる銀行間取引市場でさえ、いたるところで2重価格、3重価格が存在しており、この点からも為替は相対取引の形態をとっていることがわかります。

いよいよ、初心者の方が手を出しづらい市場に見えてきました。相対取引は未経験者にとっては闇のようにも見えますが、この部分は随分と整備されてきました。また、インターネットの発達で、概ね世界中の為替が幾らぐらいの価格で取引されているのかが把握できる時代です。

本編ではそれでも気をつける点を幾つか申し上げ、現状とスプレッドの関係を探ってゆく予定です。

スプレッドのお話3.相対取引(1)

2007-06-04 10:19:40 |   -【特集】スプレッドのお話

(1)相対取引はプロ市場-前

ここまで、外国為替取引価格の構造について一面をお話いたしましたが、現在FX(外国為替証拠金取引)業界には知りえる範囲で、店頭取引と取引所取引の、大きく分けて2つの取引形態が存在します。

取引所取引に関しては内部事情は余り詳しくないので、店頭取引の解釈を解説いたします。

私の理解が間違っていなければ、店頭取引とは概ね相対取引と同義語であると把握しています。

店頭取引と取引所取引は、株取引では非上場と上場株式の取引形態の違いという側面もありそうですが、為替取引の場合は世界中で共通する“為替”という商品を、全世界で共通する価格にて取引額を調整することなど無理があり、提示する側と取引を希望する側が直接価格をやり取りして交渉し、折り合えば取引が成立するという相対取引の仕組みが必要でした。日本の外国為替取引が変動相場制移行後も、そして世界の為替市場が相対取引の仕組みをとってきたのも、必要だったからに他なりません。

つまり外国為替取引は本来、需要と供給に基づいて、プロ同士が直接値段を交渉する市場であったことは間違いないでしょう。たとえば、銀行間市場でのやりとりですが、

顧客:「今、ドル円は幾ら?」

銀行:「121.40/42ですね。」

顧客:「42で200本買える?」(1本は100万ドル)

銀行:「昨日、一度こなしたレベルで薄いかもしれませんね。47ならばロット見合いそうですが…」

顧客:「45でどうにかならない?」

銀行:「47以下でアット・ベストなら」(アットベスト=ベストを尽くす代わりに保証なしという意味で、47ならリスクをとって保証するという意味)

顧客:「OK、トライして」(47で確定する場合は、じゃ、47で…、という会話になる)

などのような感じです。(後編へ続く)

 
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スプレッドのお話 2.外国為替の取引価格変動(3)後

2007-05-25 13:57:32 |   -【特集】スプレッドのお話

(3)スプレッドの変動理由-後

 
ところで話を戻すと、50銭なら買っても良いと判断した買い手が、市場で50銭の売りは出てこないと判断した場合、50銭の指値を市場に入れてきます。つまり、38/60の取引価格は瞬く間に121.50/60円という価格になります。

ドル円のスプレッドが10ポイントである状況は、まだまだ広すぎますが、他の売り手が直ぐに55銭の売りを入れ、また他の売り手が53銭の売りを入れてくるなど、余程のパニック相場にならない限り、数分で通常の2~3ポイント相場に収束します。ドル円でいえば5ポイント以上のスプレッドは非常事態であり、市場では何か異常な状況が発生していると考えられます。

このワイドなスプレッドは長時間に及んで継続することは無く、サプライズ的な米国経済指標でも通常は3~5分もすれば平常スプレッドに戻っています。


スプレッドにまつわる経験で印象的なのは、何と言ってもプラザ合意直後の市場でした。


瞬間買い価格が市場から消え、ドル円ですら200ポイント以上も離れた下の買い価格が出ては売られ、出ては売られるというまさに地獄のような状況でした。暫くは100ポイントスプレッドの取引価格が続いていましたが、それでも30分もすれば30~50ポイント程度には落ち着き、60分では概ね5ポイント程度で取引できていたのではないでしょうか。筆者が新人としてこの世界に足を踏み入れた初めての秋のことでした。非常に長かった60分間であった記憶があります。


以上、ここまでは銀行間市場での取引価格の成り立ちについて、解説してまいりました。次章では、いよいよFX事業者でのケースなどをご紹介してゆく予定です。(後編&2章終了)

 
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スプレッドのお話 2.外国為替の取引価格変動(3)

2007-05-24 10:24:50 |   -【特集】スプレッドのお話

スプレッドのお話 2.外国為替の取引価格変動(3)

(3)   スプレッドの変動理由-前

スプレッドとは、前回の説明でも売値と買値の価格差ですが、スプレッドの良し悪しを表現する時は、通常は広い(wide spreads)、狭い(narrow spreads)という言い方をし、高い低いとか、高い安いなどの言い方はしません。

では、なぜスプレッドは広がったり狭まったりするのでしょうか。

前回の説明でも触れましたが、121.38/40の取引価格で40銭が買われた場合、この瞬間では買い気配が強いと判断します。この買い気配が通常の市場では穏やかに発生するので、買い方も売り方も少しずつ様子を見ながら取引できますので、比較的狭いスプレッドで取引価格が成立します。

しかし、経済指標の発表などで、売買のニーズが一方向に傾くと一斉に買価格や売価格に殺到します。

121.38/40の時に、例えば米国が金利を引き上げたと仮定します。

40銭が買われるのは当然ながら、ある買い手が50銭でも買って良いと判断すれば、買おうと物色をします。ところが一番安い売値が60銭しかなかった場合、さすがに買えないという判断を下せば、その時の取引価格は121.38/60となり、22ポイントスプレッドの取引価格が発生してしまいます。

言い換えれば、このように取引の方向が偏っている時の、反対側の価格(このケースでは買い価格)などあって意味の無い板となり、取引価格がワイドになったとき、そのどちらの価格に意味があるのか、見極める必要があります。(後編へ続)

 
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スプレッドのお話 2.外国為替の取引価格変動(2)

2007-05-23 11:09:50 |   -【特集】スプレッドのお話

(1)   売値と買値の発生

例えば、米ドル円のラスト出合い(前編参照)が121.40円だとします。この価格の意味は、買った人と売った人の値段が121.40円で一致しているということです。重要なのはこの成立価格がどのようにして取引されたかということです。このラスト価格が成立した状況を考えると、

A:121.38(買)/40(売)の板があり40銭が買われた≪40(ヨンマル)Taken(テイクン)≫

B:121.40(買)/42(売)の板があり40銭が売られた≪40(ヨンマル)Given(ギブン)≫

の、2通りが考えられます。

Aのケースでは、少なくともラストの時点で買いのニーズが高かったことからこの状況になったと言えます。つまり、次に売りたい人は40銭では売れる可能性を感じながら、1銭でも高く売れればという発想で、121.41円の注文を市場に指します。一方で、38銭で買いたいと考えていた人は、40銭ならまだしも、38銭では無理な可能性を感じ、

)41銭を買う

)40銭に指す

)39銭に注文を上げる

かの行動に出ます。

直ぐに)の行動に出られる時はかなり買い気が強い状況ではないでしょうか。

)の行動に至れば、取引価格は121.40/41となり、)ならば121.39/41となります。

40/41ならばスプレッドが1ポイント、39/41ならばスプレッドが2ポイントということになりますが、スプレッドとはつまり、売値と買値の価格差をいいます。

Bのケースも同様に考えれば、121.40円が売られて成立した場合は、その瞬間での気配を売りとして次の取引価格が成立してゆきます。銀行間市場ではこのようなやり取りが常に発生しているのです。


 
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スプレッドのお話 2.外国為替の取引価格変動(1)

2007-05-22 14:49:02 |   -【特集】スプレッドのお話

(1)   仲値に例えて

前編では仲値の解説から始まりました。
仲値を正確に言うと、TTS/TTBを決定する際に最も近い時間に取引が成立した価格をベースに、スワップポイントを加味した価格です。この仲値から1円高い価格を売り価格(顧客の買い価格)、1円安い価格を買い価格(顧客の売り価格)が導かれるわけですが、ここでは、最も近い時間に取引が成立した価格を基準に売値と買値が提示される、という事実を把握してください。

つまり、取引が成立するためには、その瞬間において売りのニーズと買いのニーズが一致しなければなりません。このニーズが一致した価格(成立価格)が朝一番のものであれば始値、その日の最後のものであれば終値、一日の中で最も高いものであれば高値、最も低いものであれば安値ということになります。仲値は、決まったある時間での成立価格から派生した価格といえますが、いずれにしてもその瞬間では、ニーズが一致した価格であることはまちがいありません。

この直近の成立価格を為替用語では、“ラスト(出合い)”と呼び、次の価格形成の基準になります。


 
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スプレッドのお話 1.外国為替の取引価格構造(3)・後

2007-05-11 21:02:34 |   -【特集】スプレッドのお話

(3)市場(いちば)の役割に例えて(後)

このFX取引事業者を、市場(いちば)の立場で考えてみると、金融機関と投資家の間に位置する、強いて言えば共同組合のような役割になるのでしょうか。一般投資家にとって、卸市場に限りなく近い取引環境が間近になったのは、市場に参加するにあたりネックだった“信用”を、金銭でFX事業者に預託、FX事業者は複数の銀行の顧客となることで銀行間市場と概ね同じ取引価格の提示を受けることが可能となり、信用問題を解決しています。

また、FX事業者はあくまで金融機関の顧客として、銀行間市場へ間接的に参加するため、銀行間市場の直接参加者のようなリスクを共有する必要も無く、パイプ役に徹していさえすれば、限りなく銀行間市場に近い透明な取引価格を、顧客に提供することができるわけです。従って、この場合は顧客と対抗する立場ではないのですが、FX事業者がリスクをとり始めると、価格は歪められる可能性が高まってくるわけです。

最後に、一般投資家にとってご自身の信用の代表者となるのがFX事業者であり、それにふさわしい業者選択をする必要があります。FX事業者の信用問題が重要なのはここに理由があります。

本編では、仲買人はあくまで金融機関であり、格安な仲買取引価格をいかに一般投資家へ届けるかがFX事業者の役割であることをご理解いただきました。やや話題がそれましたが、次回はいよいよ外国為替市場で取引されている売買価格が成立してゆく仕組みを解説して参ります。

 
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スプレッドのお話 1.外国為替の取引価格構造(3)・中

2007-05-10 12:03:15 |   -【特集】スプレッドのお話

(3)市場(いちば)の役割に例えて(中)

ニーズが発生してから手当てに行くなどのんきな商売だ…という印象がぬぐえない皆様もおいでかと思いますが、ニーズは企業一般などから発生するだけとは限りません。同じ土俵にいる金融機関からリクエストが出てくる場合もあり、さっきまで味方だった隣のA銀行が突如として敵となることが日常です。興味が無いとばかりに取引に応じない場合は、次回に自分がその立場になった時に同じ仕打ちを受け、苦境に立たされてしまいます。このように、銀行間市場参加者はお互いにリスクを共有しながら共存しています。

ただし、金融機関は基本的に一切の仕込みはしないのか…といえば、それは違います。相場に一方向の流れが発生した場合は、次のニーズに備えて予め仕入れておくような短期的な動きをします。また、将来の相場変動を見越して長期間の保有を前提に、売り持ちや買い持ちのポジションを取るケースはありますが、この場合はあくまで小売を前提としていないのが一般的です。

銀行間市場の取引価格は確かに格安、つまりスプレッドは非常に狭いですが、様々なリスク共有による賜物であることは間違いありません。しかし、仲値方式は特別にしても、一般の投資家が為替取引を投資の対象として考える場合、間接的なコストとなるスプレッドは狭い方が有利です。それを実現したのがまさに外国為替証拠金(FX)取引です。

本来FXとは外国為替(Foreign Exchange) の略語ですが、近年では外国為替証拠金取引の略語として一般的になっています。(続)

 
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スプレッドのお話 1.外国為替の取引価格構造(3)・前

2007-05-09 22:46:32 |   -【特集】スプレッドのお話

(3)市場(いちば)の役割に例えて(前)

冒頭のガソリンの例や鮮魚などの品物にしても、通常は売り物を市場に持ち込む卸側はいつも供給者として存在します。これらの売り物を競り落とす仲買人はこの場においては需要者ですが、小売を前提に本当の需要者(一般消費者)を代表して先に買い付けており、小売段階で初めて供給者として機能することになります。

外国為替の取引価格構造をお話しする前に、一般投資家は直接参加できない銀行間市場とは本当に無縁なのでしょうか。この辺りを確認するために説明を挟みます。

為替の需要は、前述したとおり小売に相当する流れが常に“買い”といった一方向ではないため、仲買人のように小売分の為替を先に買いつけるという行動は無く、為替の売買ニーズが発生してから手当てをする動きが基本となります。したがって外国為替の銀行間市場に参加している金融機関は、顧客のニーズによっては前出の仲買人の立場である一方で、売りのニーズを抱えた場合は一転してその場で供給者たる卸側の立場となる特徴があります。したがって、売り物を市場に卸すことに徹した立場の参加者は存在せず、各仲買人が立場を入れ替わり立ち代りしながら、ニーズを吸収しています。

通常の市場と外為市場の共通点は、価格の基本が成立するこれらの卸市場に、一般の方々は直接参加できないという点です。理由は、扱う額が基本的に大きく、ある程度安定した需給を常に市場に提供できること、或いはもっと根本的に信用という共通点がありえます。

特に外国為替市場では、通貨を扱う点で信用問題が一番のネックであり、無理やり参加できたとしても先方から承認を受けられず、結局は取引できないことになるのは明白です。昔、大手証券会社が莫大なコストを掛けて銀行間市場に参加したことがありましたが、当初の数年は直接取引させてもらえず、結局は銀行を通じて取引せざるをえなかったという経緯がありました。(続)

 
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スプレッドのお話 1.外国為替の取引価格構造(2)・後

2007-05-09 11:28:07 |   -【特集】スプレッドのお話

(2)仲値とTTS/TTB(後)

これらを回避するために、ある時間の取引成立価格をその後24時間以内の為替取引の基準価格と定め、銀行の売渡価格(TTS-顧客の買価格)と銀行の買受価格(TTB-顧客の売価格)を決定し、これらの価格で全ての取引価格とする方法がいわゆる仲値方式です。

通常TTS/TTB共に、仲値より上下1円ずつ離した価格が採用されていますが(高い方が売価格、安い方が買価格)、実際の市場取引価格がこれらを越えて変動しない限り、需要が発生した時点で市場にて手当てを行えば、損失が発生せずに取引を実現することができ、仲値と手当レートの差額が手数料となります。

TTSとTTBとの価格差が2円存在するので、この場合は「2円のスプレッド」ということになります。TTS:120円/TTB:118円だと仮定した場合、市場価格が118.01円で取引されていても、買価格が120円である一方で、119.99円で取引されていても買価格は120円となります。前者のような最悪のケースでは、概ねスプレッド分の手数料を覚悟しなくてはいけません。ましてや、反対売買を伴う場合はそちらでも同じ覚悟が必要であり、最高でスプレッドの2倍が往復のコストになりえます。

24時間という長丁場を一通りの価格でこなすには、2円のスプレッドが必要かもしれませんが、もし12時間ごとに仲値があれば、もっと幅の狭いスプレッド、例えば1円のスプレッドでも可能になるでしょう。このように、期間を短くして直ぐに手当てをする構造が存在すれば、スプレッドも狭くなってゆくはずです。次回はその構造について説明いたします。

 
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