外為ガイドブック☆FX取引の基礎や相場分析を解説…五里霧中の相場取引に一筋の光を

外為市場経験者の浅野敏郎が値動きに着目したチャート解説や個人的意見を綴る相場ブログ&用語集!

原油安がインフレを阻害して景気が悪化する?黒田節の予防線に過ぎない

2014-12-09 19:46:55 | ☆外国為替から離れる(雑感)

こんにちは、
解散総選挙を控えて、皆さんの行動は決まりましたでしょうか?

具体的な政党批判はNGの時期に差し掛かり、いささか腰が引ける内容ですが、タイトルは少し大げさとしても、最近は原油安が物価を押し下げるとして、『インフレ目標の達成には原油高が必要』という、理解に苦しむ理論がまかり通っています。少し前にも座談会のようなテレビ番組でもこの話が議論されていた記憶があります。

インフレは好景気の一要素ではありますが、その逆のインフレを起こせば好景気になるか…と言えば、NOと言わざるを得ません。私は経済研究所員のような専門家ではありませんが、恐らく義務教育課程を終わった方々であれば充分知っていることだと思います。にもかかわらず、コストインフレだろうと何だろうと、インフレ目標の2%を達成するためなら出来ることは何でもやると、数字にこだわる日銀ですが、コストインフレで2%を達成しても何の意味もありませんし、さすがに原油価格を操作することは、いくら日銀でも「できない事」ではありますね。

また、政府は政府で、景気判断を株価に求めていますが、日経平均を見た場合、皆様もご存じなように最安値からは既に2倍以上に上昇しており、ケースによっては景気回復の根拠にされています。そこで、もし株価上昇が本当に景気回復を意味するのであれば、今は正に好景気まっただ中ということになりませんか?つまり、インフレになっていなくても株価が上昇するような好景気が現実のことになっていると言えてしまいます。しかし、現実は決して好景気ではなく、所得は下がる一方…となると、インフレ=好景気という嘘に加えて、株価上昇=好景気という政府の判断基準にも矛盾があることになります。

例えば、ドル円の為替レートが、円の史上最高値(終値ベース)を付けた2011年10月は76.25円でした。
同じ月のWTI終値が92.55ドル、日経平均の終値が8434円でした。原油の対円相場は1バレル=92.55×76.25=7057円となり、実に日経平均株価1に対する原油価格の比率は83.7%という数字が出てきます。この数字自体に何の意味もありませんが、景気が最悪だった時の目安とします。原油高と原発停止で移動手段に自転車がはやり始めたタイミングでもありますね。

では、原油のWTIが100ドルを割り込んだ本年7月30日を見ると、ドル円の終値は102.80円、日経平均の終値は15646円でしたので、原油を100ドル計算した場合の対円相場は10,280円になり、株価比較では65.7%
そして、終値ベースでドル最高値を付けた先週の金曜日、ドル円相場は121.57円、WTIは65.6ドル、日経平均は17920円でしたので、原油の対円相場は7,975円となり、株価比較では何と44.5%という数字になります。

極端な例として、日経平均株価が38915円の最高値を付けた1989年12月はバブルのピークと言うべきですが、ドル円相場は143.90円、WTI終値が19.68ドルであり、株価比較は7.2%という驚愕な数字になります。もっと言えば1ドル200円からの第一次超円高期の出来事であり、原油価格は少なくとも安い方が良いに越したことはないことが見えてくる気がします。

産業構造も、技術も大きく変わり、バブル期と現在は比較にはなりませんが、株価上昇=景気上昇が今の真実かどうかは別としても、政府見解を正しいと仮定した場合、まさに株価と原油価格は逆相関の関係にあり、原油価格が安ければ安いほど、日本の株価は上昇して、景気も上昇するという理論も十分成り立ちます。原油安によって、コストが低下しても価格が変わらないという事は、事業者の収益は拡大しているはずであり、円安による高収益企業に給与引き上げを要請するのも重要ですが、原油価格がダイレクトに影響する業態に対しても、値下げではなく給与を引き上げる要請をした方が、賃金上昇には広く且つ手っ取り早いような気もします。勿論、電力会社などはもっとコストが減るように料金の値下げをするべきで、一般企業の収益増加と家計には協力すべきです。

個人的には、原油安は新幹線計画にとっても原発推進にとっても逆風ですし、原油安を悪者論にしようとしている主眼は別にあると疑っています。ただ、エコは大賛成であり、原油浪費論者ではないことだけは申し上げておきたいと思います。税に関しては、ここでは止めておきたいというか…本当に難しい問題ですね。