外為ガイドブック☆FX取引の基礎や相場分析を解説…五里霧中の相場取引に一筋の光を

外為市場経験者の浅野敏郎が値動きに着目したチャート解説や個人的意見を綴る相場ブログ&用語集!

原油の高騰に一抹の不安材料 反応が素直すぎる・・・

2008-05-27 21:15:35 |    -ドル円

某米系証券のレポートで「原油は150ドルを目指す」と報告してから、あっという間に数十ドルの上昇を示現し、全世界的なコストインフレが、米国景気を更に悪化させる可能性をリスクとした米国売りが際立っています。

ユーロや豪ドルなどはまだしも、ポンドまでもがシフト先として選好され気味となり、対ドルで買われる中で、対円のクロスでもこれらの通貨の買いが先行しているらしく、その円売りの影響でドル円はかえってドル買いとなっています。

もちろん行き先は、ドルを経由したあと豪ドルやユーロ、ポンドを対ドルで買っている構図は概ね間違っていないと思われます。月曜日がロンドン、ニューヨークの為替市場が閉場していたこともあり、流動性は乏しかったことが想定されるため、アクションはやや過剰に見えます。

ただ、これまでのところ原油の上昇が異常なほどに強いことから、米ドル離れは確実…といったイメージを持ちやすいのは事実です。しかし、一般紙やTVなどで危機が報道されるようになると、一旦は相場が切り返すというのは、昔からの定説であり、特に投資系ファンドを抱える彼らが、一般に向けて声明を出すこと自体、実にきな臭く、今頃追随組みの買い注文で、確実に利益確定をしている可能性は十分あります。

今回の原油高は、50ドル越えあたりから高騰ぶりは再三報道されており、昔の定説は既に破られた感は否めませんが、それにしてもこの数日の上昇には足の裏がむずむずして仕方ありません。調べていないので何ともいえませんが、取引のロットが伴っているのかどうか心配しています。万が一、さほどの出合いもなく上昇しているとすれば、一つの下落サインであるということは心のどこかで意識しおく必要がありそうです。

インフレは生産者物価を引き上げ、消費者物価も引き上げることから、各経済指標の数字は一見強く見える場合があります。是非そのあたりの判断は慎重にお取引ください。

ドル円は102.50-60円というクリティカルな水準を前に、下に行きづらくなっています。しかし、もしドル売りが今後も継続するようなら、ドル円の下落は時間の問題にも見えます。今月もあと数日で終ろうとしていますが、月足では最安値の陰線を先月にははらみ返し、リバーサルボトムに見えた後の当月は、今のところ陰線です。つまり、2000年、2005年の年頭につけた下値で一致している102円中盤よりは、上方での推移となっていますが、反転の力は今のところ限定的といわざるを得ません。このまま暫く揉み合うか、102円中盤割れで決定的となる方に、リスクを感じています。もちろん102円台を買って、102円ミドル割れでドテンという戦略も、順当ではあります。


マーケットのコンセンサスはインフレリスクの解釈へ 

2008-05-15 22:54:14 |    -ドル円

先日のTV番組で、物価高騰の中の不況ということで、第二次オイルショック時代を紹介していました。

当時の記憶はそれなりに鮮明であり、消費者がトイレットペーパーを買いだめに走ったため、品不足となったという代表例も、ぼんやりとした実感として残っています。お一人様何ロールまで…という販売方法に、頭数(あたまかず)として買い物に同行した記憶があります。

ここには、原油高騰による消費財の高騰→消費者の買いだめ→品薄による消費財高騰というジレンマが見えますが、消費の増加が物価の高騰を招いたという教科書どおりのシナリオはどこかに活きている匂いがし、本来のスタグフレーション(不景気の中の物価高)だったのかという疑問は残ります。

もちろん、買いだめた後は消費が控えられ嗜好・贅沢品は避けられてしまうので、確かにスタグフレーション…と思う側面がありますね。ボーリング場が見る見る姿を消していった時期だったような気もしています。

さて、昨今の原油高騰にスタグフレーションをかぶせる世論の高まりを感じています。私も以前にその指摘をした記憶がありますが、最悪のシナリオとして紹介したと思います。

原油の高騰は、対ドルで見ると確かに狂気の沙汰としか見えませんが、1リットル80円程度だった数年前の原油価格から計算すれば、300円くらいになっていてもおかしくはありません。なぜ160円程度で収まっていられるのか、その一つの原因に、円高による抑制効果が指摘できます。未だにオイルはドル決済が主流だと思いますが、その結果、まだ160円でいられる現状があるとも言えそうです。
万が一1バレルが150ドルなどという時代が本当に訪れるのであれば、それこそドル円は70円台を期待せざるをえませんね。

インフレの増大は本来、通貨の価値がさがることを意味するのですが、同時に金利が上昇することも意味するため、最近はどうも通貨の価値が上がることを意味する「買い」が先行します。
今まさに、サブプライム問題の沈静化が僅かに見え隠れする状況下で、インフレリスクが台頭する度にその通貨が買われています。この現象は、もはや常識として対応しなければいけないステージがあることは認識しているのですが、金融的に考えると素直になれない自分がいます。いくら金利収益が増えても円高によって相殺されるように動くのが金融システムというものです。特段の円安要因も無いままに、このまま円安に流れるようなら、真剣に過剰流動性の問題が露呈することになり、価値を守れる通貨なりモノなりへの資金シフトを、個人ベースでも考えなければいけなくなりそうです。

テクニカル的には、ドル円は95円台をつけた日から、上下しながらも上昇トレンドと見える軌跡を残しながら上昇しているのは事実です。
ただ、107円台を割り込んで95円台に至った日数が僅か14日間であるのに対し、そこから105.66円をつけるのに要した日数は35日で、さらにその日から本日まで既に10日が経過していることから、45日かけても107円台からは程遠く推移しています。

この事実は少なくとも本日現在で、ドル買いの勢いが弱いことを意味しています。
また、週単位で見てみると、95円台をつけた3月17日の週から今週は9週目で、今週から来週にかけては変化週となる可能性があり、安値以来上昇してきた相場は下落反転を試す可能性が指摘できます。もちろん、何も起きなければこのまま一進一退を継続することもありえますので念の為。

今週中にここまでの高値となる105.66円を上抜けないと下落リスクが高まりそうです。もちろん、上値を抜いた場合は軽いブレークを伴い上昇を継続する可能性がありますが、こちらの考え方は通常の上昇の継続と捉えればよいわけで、ここまでの流れを反転する可能性の根拠を、変化週として取り上げてみました。高値圏での売りは一つのチャンスであり、上抜けでストップあるいは軽いドテンというシナリオが浮かんできます。


本日の反転相場に疑心暗鬼 イギリス経済の強さとは? 

2008-05-12 22:04:08 |    -ポンド円

本日中盤までは想定内の動きを継続した形となっていましたが、欧州時間を迎えると相場はこれまでの動きと逆行して推移しています。

先週末あたりでは世界株安の動きから、総じてリスク回避的行動という連鎖は間違っていないと思います。しかし、以降散見されたドル楽観論を盾に、ドル買いの裏づけとする理論展開に矛盾を覚え、リスク許容度の回復想定にいたってはやや懐疑的にならざるを得ません。

本日午後から始まった、ドル円を中心とする対円通貨の上昇は、決してリスク許容度の向上と見るのは、時期尚早といわざるを得ず、ドル円が上昇したのはイギリスの経済指標が改善?したことでポンド買いが先行。ポンド円の上昇が他の対円を引っぱっているという見方はありえます。

しかし、本日の英国経済指標は生産者物価関連の数値であり、原油高騰を背景とした材料費の高騰は世界共通の現象です。従って高い内需の結果による生産者物価の上昇ではないのは明白なことから、数値の伸びだけで「改善」とか「強い」という判断は危険に思います。現状では消費関係の数値の方が実体経済を反映しうるという点でより重要だと考え、本日のような動きでは特にクロス円の絶好な売り場として捉えたいスタンスは変わりません。

時期的には、今後日本企業の業績発表の番がやってきます。業績を伸ばす企業が少ないと予想される中で、もし株価が下落すればこれまで通りドル円は円高に行くのかどうか、興味深いところです。いずれにせよ、為替はこのところ変動幅は大きくなりつつあります。数日かけて成し得る値幅を短期間で達成した場合は、確実に利益を確定した方が、体力が付きそうです。いつか来るべき大相場に備えて、余程のフェーバーポジションが取れない限りは、地道に貯金を増やすことを最優先に考えた方が良さそうです。

難しいお話なのですが、同じようにドルが買われているように見えても、他通貨側の売りなのか、ドルそのものが買われているのかを、複数の通貨ペアを見比べながら見極める必要がありそうです。


ドルショートカバーが先行

2008-05-08 13:50:08 |    -ユーロ円

想定どおり、着々とショートカバーが進行しています。ユーロポンドなどでのポンド買いが先行した時は、やや苦しかったポンドドルも、ようやくユーロドルに追随をはじめています。

以前のブログでも解説していますが、ドル買いと考えると非常に矛盾を感じる相場ですが、ドル売りをキャリーしていた筋のスクエア化が一歩踏み込んで発生しているという解釈が納得行きます。

つまり、これまでドル売りユーロ買い、ドル売りスイス買い、ドル売りポンド買いなどを進めていた向きが、ポジションを縮小している状況だと考えることができ、資金が投資先から一部、回帰しているとしたほうがしっくり行きます。

ドル買い=リスク許容度が回復というよりはむしろ、ドルの利下げ“のりしろ”が狭まる中で、欧州の弱い経済指標を背景に、金融引き締め期待からうち止め感あるいは、やや利下げムードが漂い始めた結果、金利差の拡大の思惑が、むしろ縮小懸念に変化しつつあるのだと考えます。事実、債券相場は堅調であり、決してリスク投資の増加とは言えない地合いがあります。

では、なぜドル円は下落するのかという矛盾を感じますが、幾度か述べている様に、ドル円の上昇を打ち消すストレートの下落が背景に想定できます。
つまり、外貨ポジションを縮小させることは、ユーロやポンドから円に資金が戻る動きにもなり、ユーロドルでユーロを売り、ドル円で円を買う動きが根底に発生している可能性があります。ドル円の動きがハッキリしないのも、ドル買い戻しのヘッジとしてドル円が買われる半面で、クロス円の売りが円買いに作用するという2つのベクトルがぶつかり合っている可能性が指摘できます。瞬間的にクロス円の下落が勝るのは、先のような投資資金のシフトが原因で、単純な外貨ポジションのストップロスが巻き込まれるのが理由とも考えられます。

ストレートという観点では、ドル買いで後暫くは持続しそうですが、ドル円がドルカバーで上昇する局面では、どうしてもクロス円は上昇します。今後、チャンスは限定的になると思いますが、このようなステージがあれば、落ち着いて、クロス円を売ってみると期待できるかもしれません。特にユーロ円はもう少し下落余地がありそうです。

前回の上昇波動の高値をザックリ165円、安値をザックリ151.70円とすれば、158.30円あたりはターゲットとなり、さらに割り込めば前回安値への挑戦機運は強まりそうです。
また、ポンド円は既に下値水準での揉み合いが継続しています。203円割れでは、下値補助線割れを伴い、下落に拍車が掛かる可能性があり要注意です。ユーロ、ポンド共に対ドルで上昇しなければ、当作戦の勝機が高まりそうな予感です。

地政学的要因で、オイルが一時的に上昇の速度を速めています。波乱要因ではありますが、一方でGOLDは1オンス900ドルが遠く感じ始めました。こちらはユーロの上値を重くしている要因でもありそうです。


ユーロ安 行き過ぎた通貨調整と見るのが無難か レパトリ第2弾

2008-05-01 20:20:36 |    -ユーロ円

4月後半は本業の方で大変革があり、投資郎に“改名”後、更新がおろそかになってしまいました。
こちらのブログはあくまで個人ベースということで、各方面での執筆活動は一旦停止となった部分が多い中、今後も頑張ってまいりますが・・・、以前のような頻度が保てるか不安なところですが、どうか皆様のご支援を、これまで以上によろしく御願いします。

 
さて、月初こそは更新と思い、早めに引けた本業の後、したためております。
 
ユーロドル下落は相場観に一致しており、苦しかった4月のご褒美かとワクワクしておりますが、ポンドのステディーさにはやや意外です。
 
ユーロドル下落の相場観は、豪ドルやNZドル、カナダドルなどを含めた資源国通貨の下落トレンドの開始が前提ではありますが、このところの経済指標から若干の陰りが見え始めており、少しずつその傾向を感じています。
 
ユーロの独歩安とも見えるこの数日間の変動ですが、ダウントレンドと言い切るには早計であることは事実です。ユーロが本当に安くなっているのかと、各クロス相場を巡回しました。
その結果、ユーロは対スイスでは買われていることが判明したため、ではスイスは・・・とばかりに確認してみると、現在の短期に限定すれば、概ねメジャー通貨の中で最も安く推移しているのは、スイスだということになりました。もちろん、これまでは最強の通貨であったので、そこから僅かに戻しているだけと見るのが順当にも見えますが、要するにこれまで行過ぎていた相場の調整が、全体的な現在の金融市場の流れではないかとの、結論を導いています。
 
ドルは、追加利下げの目を残しつつも、そのスピードが減速しつつあることは事実ですし、高金利通貨との金利差拡大も概ねMAXというイメージもありそうです。そういった観点からも、今回のテーマこそリスク資産からの逃避ではありませんが、高金利の投資先からの資金が投資元へ戻り気味だと見ることも出来そうです。この動きが行過ぎ調整の範囲として収まれば、再度ユーロ高などの可能性は残りますが、スイスなどへ避難した資金は相当額であるようにも見え、レパトリエーション先行の流れが想定できます。
 
また、これまで円を除く2強として存在した、ユーロとスイスの弱含みの原因は、金相場の調整が深めに入りそうな目となっていることも背景として見逃せません。1オンス=900ドルへの乗せ返しが難しいようであれば、850ドル割れを契機に、一気に800ドル程度へ弱含む可能性も出ています。
 
ポンドは対ユーロでいくらレパトリ先行だといっても、基本的な立場の逆転は想定仕切れません。ユーロの再上昇という戻り方も否定はしませんが、このままユーロ調整が先行すれば、ポンドはその動きに追随すると見ています。
 
円はもし海外投資資金のレパトリとなれば、ゴールド円、ユーロ円、豪ドル円などの資金が戻り円高要因となります。一方で円買いヘッジを外すような動きが強まれば、円安要因となるでしょう。ドル円に関しては、ドル買い圧力と、クロス円の円転圧力との、珍しい綱引きが発生する可能性も出てきました。