スリー・マハー菩提寺からルワンウェリ・サーヤ大塔へ。
ゴミ一つない道を歩く。
人通りは多いのに、静かだ。
大都市の、世界共通の喧噪を除けば、この国は、静かで穏やかな空気が支配している。
◇ルワンウエリ・サーヤ大塔
日本の寺ならば、さしずめ山門か。
正面にアヌラーダブラのシンボル、ルワンウエリ・サヤ大塔が聳えている。
その高さ55m、紀元前2世紀造立だが、古さを感じさせないのは、毎年、壁を塗り替えて、純白さを保っているからです。
小人のいるガードストーンを見ながら石段を上がる。
上がった広場が仏塔の基壇になっています。
そして基壇の外回りには、象がズラリ。
重い仏塔を群象が支えているイメージを作り出しているが、実際に巨大な仏塔の沈下を防ぐには地面を深く掘り下げ、砕石や粘土、鉄の網、樹脂などをきっちり詰め込んで、象に踏み固めさせたと云われている。
つまり象の力なくしてこの塔はありえなかったわけで、こうしたモニュメントがあってもなんら不思議ではないのです。
塔に近づいて、上を見上げる。
塔の先端は、見えない。
「一足分下がって見上げてみて」とガイド氏のことば。
わずか20㎝ほど離れることで、先端が見えるようになる。
「どこでやっても同じこと」だそうだ。
仏塔は、もともと釈尊やその高弟の遺骨(舎利)を祀る記念建造物。
スリランカでは、インド、ミャンマー、タイなどと同じくストゥーパ(仏舎利塔)となり、中国、朝鮮、日本では三重塔、五重塔として変化します。
世界中でも、こと仏塔の高さ、巨大さではスリランカが群をぬいている。
どうやらスリランカの人たちは、高い場所に聖なる神秘を感得する性向があるようだ。
大塔の周りは、歩いて回れます。
所々に仏殿があって、各国からの仏像が展示されている。
これはミャンマーからの仏陀像。
塔の内部にも多数の仏像があり、一番中枢の場所は、ローマ皇帝アウグストスに謁見したスリランカ国王の使者がローマから持ち帰った地中海の珊瑚で飾られている、という。
ローマ皇帝の名前なんかが出始めると、つい眉につばしたくなるが、どうやら嘘ではなさそう。
となると、我々はとんでもない遺蹟にいることになり、つい感激してしまう。
何度も繰り返すが、スリランカでは時代の古さを感じ取ることは難しい。
ここルワンワリサーヤ大塔のように毎年塗り替えられているからでもあるが、遺跡がお祈りの場として現役であることも大きい。
毎年塗り替えられているペンキは、大塔のすぐ脇で作られている。
白壁だから、白ければいいと云うものではないんだそうだ。
むしろブルーがかるように仕上げたほうが、塗った時に白く見えるのだそうで、青い貝殻を潰して塗料の材料にするのだという。
塗り替える作業は、僧侶とボランティアの在家信者。
女性は参加できない。
急に騒々しくなった、と思ったら、五色の長い布を頭上に掲げて、大勢の人たちが基壇の上を歩いて来る。
人々が集まってきて、布に合掌したりしている。
ガイド氏の説明では、今、塔に巻いてある赤の布を、近く、この五色に代える予定で、村をあげて五色の布を寄進しに来たグループだそうだ。
とにかくスリランカでは、信者たちの寄進行為がすさまじい。
◇トゥパーラーマ大塔
ルワンウエリ・サーヤ大塔の北500mにある。
アヌラダープラ最古のストゥーパで、釈迦の鎖骨も祀られているのに、ルワンウエリ・サーヤ大塔などよりも重要視されないのは何故なのか。
ガイド氏にうっかり訊き忘れてしまったが、多分、それはルワンウエリ・サーヤ大塔が上座部仏教の本山だったからに違いない。
紀元前1世紀、それまで口伝だった経典をシンハラ語に書き写すという画期的な出来事は、ルワンウエリ・サーヤ大塔で行われた。
タイやミャンマーなどの仏教は、ルワンウエリ・サーヤ大塔の流れを汲んでいる。
トゥーパーラーマ大塔については、もう一つ、疑問がある。
釈迦の歯は、キャンデイの「仏歯寺」に国宝並みの扱いで保護されているというのに、釈迦の鎖骨を収めたトゥパーラーマ大塔は、ほとんど注目されることなく、存在している。
何故だろうか。
「仏教の教義は、釈迦の言葉で伝えられた。言葉は、口から発せられる」。
だから、「骨よりも歯の方が重視されるのです」とは、ガイド氏の説明。
仮に、彼の説明が正解でも、その差は大きすぎはしないだろうか。
日本にこの舎利があれば、国宝間違いない。
スリランカの仏教遺跡の「凄さ」が垣間見える出来事です。
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