石仏散歩

現代人の多くに無視される石仏たち。その石仏を愛でる少数派の、これは独り言です。

138東京都北区の石造物-15a-岸町

2020-03-01 08:37:33 | 石造物巡り

岸町の岸は、海岸の岸の意。

大昔、この辺りは海が入り込んでいた。

◇王子稲荷神社(岸町1-12-26)

落語のまくらに「江戸名物、伊勢屋稲荷に犬の糞」があるように、お稲荷さんは江戸のいたるところにあった。

その稲荷の関東総元締めというのだから、格式が高い。

正門をくぐる。

正面に急な石段。

子どもたちの甲高い声がわっと押し寄せて、格式ある神社の荘厳さは求むべくもない。

神社経営の幼稚園だから自業自得というべきか。

石段などの写真を撮ろうとしていたら、若い女性の声で「階段は上れませんよ」。

幼稚園の先生が、不審者とみて注意に来た。

正門を出て、右折、神社の塀沿いに坂を上がると南門がある。

ここは24時間常時開いている。

狛犬ならぬ狛狐は当然か。

灯籠の列が列をなして、中に1基、道標常夜燈がある。

寛政3年(1791)造立で、正面に「王/子 稲荷大明神」、右面「これより/王子みち」、左面「古礼与り/王子ミち」。

中山道に立っていたものと云う。

細長い石は、句碑。

苗代や飛鳥盤(は)瀧乃(の)川つづ幾(き)  古帳庵
「乃(の)寶(ほ)る日耳(に)露能(の)む稲農(の)者(は)らみ可(か)南(な) 古帳女

カラフルなチャイルドシート自転車がずらり。

境内が、幼稚園の駐輪場と化している。

その幼稚園を階段上から望む。

振り返ると本殿正面。

空襲で焼けたが、拝殿のみは、造立時の文政5年(1822)の郷社さを残している。

社務所前に狂歌1基。

加(か)くて古(こ)そ
 以(い)の流(る)加(か)ひ安(あ)連(れ)
                            衣食住
奈(な)尓(に)くら可(か)らむ
三つの燈火(ともしび)  千種庵霜解」

社務所前を左折、突き当たると石造物多数と境内社がいくつかある。

 

ももちろん、句碑もある。

 

「此里尓(に)    林甫
 こ能(の(流(る)阿(あ)り
 梅柳    鉄舟居士書」

「    梅堂

 瀧寿(す)ずし
 王子ハ夏能(の)
 別世界  」

突き当りの社は、本宮。

ここにもあそこにも、キツネがおわす。

奥の境内社については、社務所に訊いたが、「知りません」。

どんづまりは「お石さま」。

石を持ち上げて、その軽重で、願いの可否を占うというもの。

祠の中には、漬物石様な石がごろんと置かれている。

立看には

御石様
 願い事を念じつつ
 持つ石の軽重により
 御神慮が伺えるとか」

とある。

しかし、これでは、よく分からない。

以前の説明板はもっと丁寧だった。

願い事を念じながら「お石様」を持ち上げ、
   予想した重さよりも、
   ※軽く感じたら、願いが叶いやすい
   ※重く感じたら、叶いづらいので、
    まだまだ努力が必要
    との言い伝えがあります。
   
無理をして腰を痛めないようにご注意下さい。
   
触ってご神徳を頂き、心願成就に向けて
                  お励み下さい。

お石さまから、さらに石段があって、

やっとの思いで上ると、そこは、狐穴と呼ばれる石室。

 

そその昔は、ここにキツネが実際に住んでいたというのだが、多分、本当だろう。

最後に、落語「王子の狐」のあらすじをWikipediaから転載しておきます。

 

ある男、王子稲荷に参詣した帰り道、一匹の狐が美女に化けるところを見かける。どうやらこれから人を化かそうという腹らしい。

そこで男、『ここはひとつ、化かされた振りをしてやれ』と、大胆にも狐に声をかけた。「お玉ちゃん、俺だよ、熊だ。よければ、そこの店で食事でも」と知り合いのふりをすると、「あら熊さん、お久しぶり」とカモを見付けたと思った狐も合わせてくる。

かくして近くの料理屋・扇屋に上がり込んだ二人、油揚げならぬ天ぷらなどを注文し、差しつ差されつやっていると、狐のお玉ちゃんはすっかり酔いつぶれ、すやすやと眠ってしまった。そこで男、土産に卵焼きまで包ませ、「勘定は女が払う」と言い残すや、図々しい奴で狐を置いてさっさと帰ってしまう。

しばらくして、店の者に起こされたお玉ちゃん、男が帰ってしまったと聞いて驚いた。びっくりしたあまり、耳がピンと立ち、尻尾がにゅっと生える始末。正体露見に今度は店の者が驚いて狐を追いかけ回し、狐はほうほうの体で逃げ出した。

狐を化かした男、友人に吹聴するが「ひどいことをしたもんだ。狐は執念深いぞ」と脅かされ、青くなって翌日、王子まで詫びにやってくる。巣穴とおぼしきあたりで遊んでいた子狐に「昨日は悪いことをした。謝っといてくれ」と手土産を言付けた。

穴の中では痛い目にあった母狐がうんうん唸っている。子狐、「今、人間がきて、謝りながらこれを置いていった」と母狐に手土産を渡す。警戒しながら開けてみると、中身は美味そうなぼた餅

子狐「母ちゃん、美味しそうだよ。食べてもいいかい?」

母狐「いけないよ!馬の糞かもしれない」

 

 


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1 コメント

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ありがとうございます (ジュンペイ)
2020-12-03 12:00:32
 先日 王子稲荷に参りまして 句碑等を解読しようと 試みましたが 残念ながら 苦悲怪読に終わり
後日 画像をもとに連歌師の名前を調べていたところ こちらのブログを拝見させていただくことができました ご見識に感謝いたします 
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