石仏散歩

現代人の多くに無視される石仏たち。その石仏を愛でる少数派の、これは独り言です。

118スリランカの仏教遺跡巡り(7)コロンボ(シーマ・マラカヤ寺院)

2016-02-26 06:32:56 | 遺跡巡り

下は今回のスリランカ旅行で撮った写真で私の好きな一枚。

直線だけで構成されたシンメトリーな建物となよなよした曲線的なブッダ像の組み合わせが、すっきりと爽やかさに、見る人を惹きつけます。

このモダンな建物は、コロンボ中央のベイラ湖に浮かぶシーマ・マラカヤ寺院の一部。

シーマ・マラカヤ寺院は、前回取り上げたガンガーラーマ寺院の末寺で、湖上に浮かぶ仏教寺院として、人気の観光スポットでもあります。

実は、この写真には、スリランカを代表する二つのものが含まれています。

一つは、いわずもがな、ブッダ像。

もう一つは、この寺院の建築を手がけたジェフリー・バワ氏。

ジェフリー・バワは、スリランカが世界に誇る天才建築家として有名です。

彼は、スリランカの上流階級の家に生まれ、英国のケンブリッジで英文学を修めた後、改めて建築家を志して留学、建築家としてスタートしたのは38歳でした。

ジェフリー・バワは、リゾートビーチホテルを数多く手がけていますが、そのホテルに宿泊すること自体が、現在、スリランカ観光ツアーの目的の一つになっているかのような現象をきたしています。

かくいう私たちも彼が設計したホテルに3泊しました。

連泊したヘリタンス・カンダラマ ホテルは、ダンブッラ市街10キロの山中にあります。

公道からホテルへの私道に入ると、道は未舗装で穴だらけ、スピードダウンで、車は進むしかない。

ホテルの理念「自然との共生」が、この未舗装のでこぼこ道に現れています。

当然、道の側には、野生のクジャクやマングースがいる。

マングースがいるということは、コブラもいるということです。

野生のゾウに出会うことも珍しくないのだとか。

 このゾウは野生ではない。

ホテルの前方に広がっているのは、カンダラマ湖。

対岸にシキリヤ・ロックも見える。

ホテルのフロントロビー前のプールは、向こうの湖に溶け込んで、境目がはっきりしない。

日本各所にもあるこのインフィニティエッジプールの発案者は、いわずもがなジェフリー・パワ。

親水性は、彼の設計の重要ポイントです。

部屋に入って外を見るとサルがいる。

サルがいないのを見計らってベランダに出る。

密林の木々は、ホテルの5階まで伸びて、建物を包み込みそう。

岩や樹木の位置をそのまま取り入れて、屋外と屋内の連続性を重視した造りは実に見事というほかありません。

ガイド氏の話によれば、このホテル建設にあたり、村から土地を30年契約で借用しようとした時、自然破壊だと猛烈な反対運動がおこって、再契約は出来ないだろうと云われたのだそうです。

ところが、ホテルの稼働とともに野菜などの食材を地元から仕入れるので、村は潤い、今では、自然破壊の反対の声も上がらなくなったのだとか。

 

もう一泊したのは、ワドゥワにあるザ・ブルーウオーターホテル。

プールの青い水面にヤシの木が映りこんで、「ザ・ブルーウオーター」のホテル名に恥じない。

ホテルの中にまで水を引き込んで、水使いの魔術師バワの面目躍如。

老人の保養というよりは、新婚さん向きか。

 

ちょっと寄り道が長くなった。

最初のシーマ・マラカヤ寺院に戻ろう。

シーマ・マラカヤ寺院は.3つのパートからなる。

中央が本堂。

本堂の右に礼拝堂。

冒頭の写真は、本堂側から見た礼拝堂でした。

そして、本堂の左の、デワレ(ヒンズー教の神々の神域)。

本堂入口には勿論、ムーンストーンとガードストーンがある。

本堂内部には、何体ものブッダ像が柔らかい光の中に静かに坐して、雰囲気はまるで美術館のよう。

湖上の寺院だから、全体に狭い。

狭いけれど仏教寺院であるための必要条件、菩提樹とストゥーパ(仏塔)は、ちゃんとある。

ホロンナルワのガル・ヴィハーラのアーナンダ立像のコピーも、なぜか、ある。

デワレだから4隅にヒンズーの神々が祀られている。

日本の神仏混合に似て、スリランカでは仏教とヒンズー教の混合は至極当たり前。

商売繁盛とか家内安全、合格祈願などの現世利益は、専らヒンズーの神々にお願いして、ブッダには死後の安寧しか願わないのが普通。

仏教の守護神でもあるヴィシュヌ神は、手が4本、それぞれにほら貝、転輪、蓮の花、棍棒が握られている。体はブルー。

カタラガマ神の乗り物はクジャク。顔は6面、12本の手すべてに武器を持っている。

ガネーシャ神は、ゾウの頭で4本の腕を持つ。商売の神であり、学問の神でもあって、人気が高い。

 これで2か月にわたった、「スリランカ仏教遺跡巡り」の報告は終わり。

旅行記は、現地を知っている人は興味を持って読むが、知らなければまず読まれることはない。

余程の筆力があれば、別だが。

読まれないだろうことを前提に描き続けたブログでした。

心残りがあるとすれば、スリランカの庶民の信仰生活に触れることがなかったこと。

駆け足の観光旅行だから仕方ないが、普通の家の日常の信仰のあり方を知りたかった。

出家と在家、寄進、供物、現世利益祈願、仏教とヒンズー、バラモン教との混合など日本とは格段に違った敬虔な仏教徒の諸相を知りたかったのです。

わずかな期間のスリランカ滞在で、私はすっかり、上座部仏教に魅せられました。

帰依するのも、拝むのも、信ずるのも信仰の総てはブッダだけ、と云うのは単純明快で、すっきり分かりいい。

宗派によって宗旨が違い、拝むべき仏像も千差万別、出家者は世襲で妻帯し、酒を飲む日本の、大乗仏教よりずっと魅力的に私には思えました。

仏陀のことを少しずつ勉強するつもりです。

≪参考書≫

◇杉本良男『もっと知りたいスリランカ』昭和62年 弘文社

◇中村禮子『わたしのスリランカ』1985 南雲堂

◇青木保『聖地スリランカ』昭和60年 NHK

◇竹内雅夫『スリランカ 時空の旅』2008 東洋出版

◇楠元香代子『スリランカ巨大仏の不思議』2004 法蔵館

◇中村元『ブッダ入門』1991 春秋社

◇アルボムッレ・スマナサーラ『仏教は宗教ではない』2014 エボルビング

◇三浦朱門『海のシルクロード ブッダと宝石』1988 日本放送出版協会

◇『世界の聖域9セイロンの仏都』昭和54年 講談社

◇『地球の歩き方 スリランカ』2014 ダイヤモンド・ビッグ

◇『Beyond the Holiday スリランカ』2015アール・イー

◇『るるぶ スリランカ』2014 JTBパブリッシング

◇『 Sacred city of Anuradhapura』

◇J.B.Disanayaka『Anuradhapura the Sacred City』

◇Chandra Wikramagamage『Tantric Buddhism and Art of Galvihara』

◇Chandra Wikramagamage『The beayty of the entrances to the buildings in ancient SriLanka』

◇Anuradha Seneviratna『The Temple of the Sacred Tooth Relic』

 

 

 

 

 

 


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