mukan's blog

つれづれなるままに ひぐらしPCにむかいて

恐るべきお気楽

2015-08-29 09:10:00 | 日記

 オーストラリアに行くと知人に知らせたら、「アラン・ムーアヘッドの恐るべき空白をたどるのか」と返信があった。そう言えばどこかで聞いたことがあったが、はて、何であったか。検索してみる。

 

 今から150年以上も前の1860年、オーストラリアの南東端、メルボルンから北へ向けて探検に出た8人がいた。未開の大陸を縦断して、大きくくぼんだカーペンタリア湾へ向かうを目指す探検隊。地図で言えば、大陸の東三分の一の人跡未踏の地を縦断した。彼らはついに到達したのだが、その帰途暑さに苦しみ、4人のうち1人が死にはしたものの残る3人が到着したときには、ベースキャンプはすでに引き払われた後。ついに1人が生き残って終わったというものでした。ドキュメント・ライターのアラン・ムーアヘッドが『恐るべき空白』(ハヤカワ文庫、1979年)に記したことによって、広く知られるようになった、と分かる。

 

 その、ロバート・オハラ・バーク探検隊のルートと並行するように、大陸の中央部を南へ進む。バーク隊が踏み込む24年前、1936年にチャールズ・ダーウィンが上陸した北部のダーウィンから中央部ウルルのエアーズ・ロックまでの縦断。おおよそ1600kmの探鳥の旅。入口のシドニーで行き帰りに4泊もするが、それ以外はダーウィンから南行する道路におおよそ沿って走り、14泊。マイクロバスに揺られ、気ままに降り立って鳥をみて歩くという、贅沢な道行。こちらからの一行は12人、現地鳥ガイドやドライバーをふくめて同行する案内人は4人。ちょっと多いのがどうしてなのかわからないが、こちらの主催者がむかし訪れたときのガイドというわけなので、私はまかせっきりの、お気楽な旅である。今日の夕方から行ってきます。

 

 私の関心は、鳥よりもオーストラリアという大陸の地誌にある。気候風土、アボリジニーという先住民、そこへの英帝国の侵入と植民地形成。そのころすでに日本は幕末と明治維新という近代化途上にあった。しかも山をふくめて開墾しつくさんばかりの限界に来ていたから、近代か以外に道がなかった日本と異なり、手つかずの未踏の地に満ちていたオーストラリアである。いまどのように開拓されつくしているのか。その原動力であった白人至上主義が、その後どう変形していっているのかどうか。とすると、アラン・ムーアヘッドの『恐るべき空白』を読んでいないのは、気にかかる。今日、図書館にでも足を運んで、もっていかなければなるまい。

 

 昨日は、午後から荷造り。事前の注意で、オーストラリアの入国に際しては「持病薬」に英文の説明書が必要という。どういうこと? と思ったので豪州観光局のホームページを覗いてみると、「you must have a prescription, or written authorisation」と書いてある。「地球の歩き方」でも「英文の説明書を」とある。持っていないと「審査」が面倒になり時間がかかるというのだ。そこで、調剤してもらっている薬局で「英文の説明書」を頼むと、快く作成してくれた。一安心。ところが、実際に行ってきた人に言わせると、「そんなことはなかったよ」という。無駄だったかもしれないが、行ってみなければわからない。なにしろ、トヨタの上級役員に任命されて来日した人も、「薬物疑惑」を掛けられ、職を辞任し、放免されたという出来事もあった。近頃どの国も神経質になっているのかもしれない。処方箋がない薬もある。海外旅行に行くとき持参する「下痢止め」とか「汚水の清浄剤」とか「入れ歯の洗浄剤」の「説明」は、自前でしなければならない。「下痢止め」はともかく、「汚水の清浄剤」がどうして必要かと問われると、どう説明すればいいのだろうか。入れ歯って英語でどういうのだろうと、辞書を引いたりする。

 

 荷造りはわりと簡単に終わった。カミサンもあれこれ用意しているが、重複するのはごく一部だから、それぞれに荷を仕分けしてパッキングする。連泊が幾度かあるから、洗濯することもできるだろう。何より山ではないから、自分で調理する必要がない。「靴についている泥などもうるさいらしい」とカミサン情報。ウォーキング・シューズの裏側を丁寧に洗う。干していると雨が降ってきた。今日出かける時の予報も雨。干すことはなかったか。

 

 何だか、小学生が初めて遠足に行くときのような気分だ。解放されるというほど日常に拘束されているわけではないが、非日常に羽を伸ばしに行くのは間違いない。ふと目に止めた本、谷村志穂『時のない島――オーストラリア、ノーザン・テリトリーの旅』(TOKYO・FM出版、1995年)では、シドニーで乗り換えるとき「ほんとうにダーウィンに行くのか」と問われた、とある。1992年のことだから、23年前。日本人にとっては「未開の地」だったというわけか。はてさて、毒蛇や毒蜘蛛、ワニもいるというアボジニナル・ランドを縦断する旅で、なにに出逢うか。

 

 行ってきます。今度このブログでアップするのは9月19日。日本ではまだ暑い日々が続くことと思います。お体に気をつけてお過ごしください。ではでは。


コメントを投稿