mukan's blog

つれづれなるままに ひぐらしPCにむかいて

弔意と「再会」と「かんけい」

2014-06-29 10:17:57 | 日記

 同級生のTくんから、久々のメールが届きました。7月下旬に開かれる「Seminarのご案内」に対する返信です。出席できないと記した後に、以下のような見舞いの言葉が添えられていました。

 


 遅ればせながら弟様のご逝去のお見舞いを申し上げます。一度だけですが玉野高校 東京支部 同窓会でJ三さんと親しく(多分テーブルで同席)させていただいて、お話した内容を今もハッキリと思い出すことができます。


 
 (F・Jと書かれていて、玉野高校の同窓会名簿では、一字違いの別人(岡山在住)もいらっしゃって、確証が持てるまでには時間(期間)を要しました。)


 
 その時の話ですが、時には私も図書館でも目にする雑誌「」山と渓谷」の出版社にお勤めとのことで、私の方が関心を覚え、入社の動機(確か在学中にワンダーフォーゲル活動のとりこになったとか)までお聞きしました。サラーリーマンといっても、出版社は特別なので色々ともっとお話を聞きたいなと思いました。

 

 確証が得られた後、「月刊アウトドア」の編集長をされていたことを知り、ますます驚きの念を持ちました。アウトドアの世界は、経済的に恵まれた方も多く活躍されている世界でもあり、小中高からそうした世界と関係ある方も多いと思い込んだりしていました。きっと、弟さんは、アウトドアを愛する広い世界の人との交流を楽しまれたのではないでしょうか。


ご冥福をお祈りします。                    6月28日

 

*******それに対する私の返信。

 

 Tさま。お見舞いありがとうございます。

 

  弟・Jと会ったことがあるという話を聞くと、その瞬間にJが我が胸中に蘇ります。「やあ、しばらく」という感じで、笑っています。Tくんと嬉々として自分の仕事の話に興じるJの姿が想い浮かびます。本当に仕事人間だったというか、仕事が遊び、遊びが仕事という生き方をしていました。

 

 1950年生まれですから、団塊世代のラストランナーだと思います。豊かな時代の日本の空気を吸って育ち、バブルを経て、物にあふれた豊かな社会においてどう人生を豊かに遊び暮らすかを、仕事にしていたと言えます。そういう意味で、Jよりも7歳上の私たちの世代とは、人生の構えが違っていたのではないでしょうか。

 

 私たちの世代は、戦中戦後の抑圧と混沌、貧しいが活気にあふれた時代に育ちました。そのせいで、近代前期の前向きの向上心とつつましく生きるという、プロテスタント的な精神を備えていたように思います。しっかり誠実に働いて豊かな暮らしをしたい、しかし贅沢はしない。のちに「もったいない精神」などとアフリカの女性から評価されたような、節約気分ももっていました。

 

 しかし弟Jがものごころつく小学校6年(1962年)頃は、すでに「所得倍増」の時代になっています。10年前の中国のような状態と言えましょうか。Jが大学を卒業して就職する1972年は、まさに高度経済成長のど真ん中、その1年半後の石油危機を予感することもなく、イケイケドンドン。インフレも毎年7%ほどではなかったでしょうか。「借金しないのはバカだ」と言われていたころです。しかもいまの中国と違って、わりと平等主義的な社会精神が生き残っていましたから、それほどの格差もなく、世の中全体が豊かになっている時代でありました。後に日本流の経営のやり方が実を結び、人々は自信を持ち、世の中の気分全体が前向き。これから新しい時代を築いていくのだという気風がみなぎっていたように記憶しています。そうそう田中角栄が総理を務めていましたね。

 

 人間の本質は遊びにあると論を展開した、ヨハン・ホイジンガの『ホモ・ルーデンス 人類文化と遊戯』の新装普及版が中央公論社から出版されたのが、1971年。まさに当を得た出版でした。弟Jは、その時期に「山と渓谷社」に就職したのです。遊ぶことに気持ちを引かれながら、しかし後ろめたさも感じていた私たちの世代とは、ひと味違う世界感覚を身に着けて、仕事に臨んだと思います。

 

 いやいや、話しがそれてしまいました。「やあ、しばらく」というふうに弟Jと会うごとに、私の想いは、Jと私との違い、Jの世代と私たちの世代との違い、Jの仕事人脈の作り方と私の作り方の違いと、ついつい比較して、けっきょくJの輪郭を思い描いているのか私の輪郭を思い描いているのか、わからなくなります。Jとの「かんけい」が、時間を超越して眼前に出来しているのだと考えることにしています。

 

 Tさま、ありがとうございました。

 

 次回Seminarにお会いできないことは残念ですが、ぜひ9月にはご出席ください。


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