東洋経済online2024/09/12に《｢若手を叱るな｣｢本気ですか？｣で組織崩壊の悲劇》という記事があった。遅刻してくる「若手を叱るな」と上司から指示されたベテラン社員。「叱るとすぐに辞めてしまう」そうだ。指示の通りにしたら、当の社員ばかりか社内の気風が弛んでしまった。部長が社長に報告・交渉したら、いま若手がやめたらあとの採用ができない。オマエ責任取れるのかと逆ねじを食らわされた。その結果、何人かのベテラン社員が辞め、「うちの会社、崩壊寸前ですよ」というお話。
知人のKさんが書いてきた学校現場の話しとダブって、いずこも同じ秋の夕暮れかとおもった。
このレポートは「経営心理士、税理士、心理カウンセラー」の肩書きを持つ藤田耕司。《｢プライドを傷つけない｣叱り方を全力で考えよ》と副題をつけて指南している。
それにしても、遅刻を叱られて仕事を辞めてしまうって、なんだこれ。労働力不足という社会的背景もあろうが、人間が変わってしまったのか。
＊＊＊
遅刻して叱られたからといって、すぐに仕事を辞めてしまう若い人って、すごいなあ。収入の心配なしでやっていけるくらい余裕があるのかな。人手不足というから、辞めてもすぐ仕事にありつけるのかな。
ああ、そうか。親が面倒をみてくれるってことか。それなら気軽でいいやね。
でもそんなことをしていたら、安定した暮らしは自分のものにならない。当然結婚もできないし、家庭も持てない。
えっ？ 仕事に就こうと就くまいと、その日暮らしの底辺生活が変わるわけじゃない。端から安定した暮らしを夢見るなんてことは忘れてますよ。結婚とか家庭を持つとかも、考えたこともない。
デスペレートだって？ 希望のないことをそういうの？
そうか、そうだね。いつ行き詰まって死んだ方がましってことになるかもしれねえんだよ、オレたち。希望なんて持てないよ。
遅刻したくらいで「叱られる」なんてイヤなこった。我慢するくらいなら、辞めてやるよ。
ああ、そう。会社の社長が「叱るな」っていってんの？ オレの気持ちわかってんじゃねえか。ははは、そうやって会社の方とか、大人の方が変わってくれりゃあ、いいよね、そりゃあ。
えっ？ 会社の気風が緩んじゃってぐずぐずだって？ そんなこと、オレが知ったこっちゃねえよ。社長に叱られてベテラン社員もやめてったって？
へへへ、おもしれえじゃねえか。オレが辞めたことが、そんなに大きな波風立てるなんて、いつも虫けらみたいにこき使われて、何の価値もないみたいなのにさ。
世の中、景気が良くなって給料もどんどん上がってる大手企業と低賃金で人手不足になってやってけない零細小企業とに、分かれてんだって？
そりゃあわかるよ。おれたちとおなじさ。世の中が大きく二つに分かれて、少数の豊かな人たちと大多数の貧乏人とに分離してるってさ。
へえ、ロングテールっていうんだって、そういう所得分布のグラフのことをさ。一億総中流って1980年代の日本のことを持て囃していた時代は、所得の分布は標準曲線だった。中くらいの所得者が一番多くて、う～んと裕福なのとう～んと貧乏なのが同じくらいの数だったってえから、その後の三十数年ですっかり変わっちまった。
人手不足で潰れたってお店、いっぱいあるよ。
ああ、そう、中国にもねそべり族ってのが、いるの？ えっ、政府が手を焼いているんだって？ ははは、中国も少子化で労働力不足だって？ でもさ、大学は出たけれど、これといった職に就ける人は多くないんだってさ。そりゃあ、寝そべりたくもなるわ。オレたちと一緒だね。
＊＊＊
少子化とか労働力不足ってのが、こんな風に人の気質を変えてしまうとは、思いもしなかったんだろうさ、古い大人たちは。相変わらず、昔の夢よもう一度って歌を歌ってる人たちは、政治家にだってゴマンといる。ロングテールには気づかないふりしてさ。
でも、気質の変わった若い人を責められないよ。むろん頑張ってチャンスを摑む人がいることは、知ってるさ。だけど誰もが大谷翔平になれるわけじゃない。いや、ま、大谷とまでは言うまい。才能とチャンスと幸運に恵まれた2，3割の人たちには、そういう（中堅どころにとどまるっていう）希望もいいだろうさ。
でも残りの7，8割は、ロングテールの低賃金の平々凡々。どうせたいした人生じゃない。そう思うのが当たり前。となると、寝そべりたくもなるさ。
そう思うのがわるいってことかい？
そう思うのも仕方がないって思わないかい？
この事態を目にした「経営心理士、税理士、心理カウンセラー」さんは、《｢プライドを傷つけない｣叱り方を全力で考えよ》っていってるけど、そんな小手先のワザを弄するより、三十数年由来のロングテールをどうにかしてよ。
もうそれだけでオレたち、すっかりプライドを傷つけられてんだよね。ロングテールを標準曲線にもどした上で、「遅刻するな」って叱ってくれよ。そうすりゃあオレたちだって、すぐに辞めたりはしないさ。
知人のKさんが書いてきた学校現場の話しとダブって、いずこも同じ秋の夕暮れかとおもった。
このレポートは「経営心理士、税理士、心理カウンセラー」の肩書きを持つ藤田耕司。《｢プライドを傷つけない｣叱り方を全力で考えよ》と副題をつけて指南している。
それにしても、遅刻を叱られて仕事を辞めてしまうって、なんだこれ。労働力不足という社会的背景もあろうが、人間が変わってしまったのか。
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遅刻して叱られたからといって、すぐに仕事を辞めてしまう若い人って、すごいなあ。収入の心配なしでやっていけるくらい余裕があるのかな。人手不足というから、辞めてもすぐ仕事にありつけるのかな。
ああ、そうか。親が面倒をみてくれるってことか。それなら気軽でいいやね。
でもそんなことをしていたら、安定した暮らしは自分のものにならない。当然結婚もできないし、家庭も持てない。
えっ？ 仕事に就こうと就くまいと、その日暮らしの底辺生活が変わるわけじゃない。端から安定した暮らしを夢見るなんてことは忘れてますよ。結婚とか家庭を持つとかも、考えたこともない。
デスペレートだって？ 希望のないことをそういうの？
そうか、そうだね。いつ行き詰まって死んだ方がましってことになるかもしれねえんだよ、オレたち。希望なんて持てないよ。
遅刻したくらいで「叱られる」なんてイヤなこった。我慢するくらいなら、辞めてやるよ。
ああ、そう。会社の社長が「叱るな」っていってんの？ オレの気持ちわかってんじゃねえか。ははは、そうやって会社の方とか、大人の方が変わってくれりゃあ、いいよね、そりゃあ。
えっ？ 会社の気風が緩んじゃってぐずぐずだって？ そんなこと、オレが知ったこっちゃねえよ。社長に叱られてベテラン社員もやめてったって？
へへへ、おもしれえじゃねえか。オレが辞めたことが、そんなに大きな波風立てるなんて、いつも虫けらみたいにこき使われて、何の価値もないみたいなのにさ。
世の中、景気が良くなって給料もどんどん上がってる大手企業と低賃金で人手不足になってやってけない零細小企業とに、分かれてんだって？
そりゃあわかるよ。おれたちとおなじさ。世の中が大きく二つに分かれて、少数の豊かな人たちと大多数の貧乏人とに分離してるってさ。
へえ、ロングテールっていうんだって、そういう所得分布のグラフのことをさ。一億総中流って1980年代の日本のことを持て囃していた時代は、所得の分布は標準曲線だった。中くらいの所得者が一番多くて、う～んと裕福なのとう～んと貧乏なのが同じくらいの数だったってえから、その後の三十数年ですっかり変わっちまった。
人手不足で潰れたってお店、いっぱいあるよ。
ああ、そう、中国にもねそべり族ってのが、いるの？ えっ、政府が手を焼いているんだって？ ははは、中国も少子化で労働力不足だって？ でもさ、大学は出たけれど、これといった職に就ける人は多くないんだってさ。そりゃあ、寝そべりたくもなるわ。オレたちと一緒だね。
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少子化とか労働力不足ってのが、こんな風に人の気質を変えてしまうとは、思いもしなかったんだろうさ、古い大人たちは。相変わらず、昔の夢よもう一度って歌を歌ってる人たちは、政治家にだってゴマンといる。ロングテールには気づかないふりしてさ。
でも、気質の変わった若い人を責められないよ。むろん頑張ってチャンスを摑む人がいることは、知ってるさ。だけど誰もが大谷翔平になれるわけじゃない。いや、ま、大谷とまでは言うまい。才能とチャンスと幸運に恵まれた2，3割の人たちには、そういう（中堅どころにとどまるっていう）希望もいいだろうさ。
でも残りの7，8割は、ロングテールの低賃金の平々凡々。どうせたいした人生じゃない。そう思うのが当たり前。となると、寝そべりたくもなるさ。
そう思うのがわるいってことかい？
そう思うのも仕方がないって思わないかい？
この事態を目にした「経営心理士、税理士、心理カウンセラー」さんは、《｢プライドを傷つけない｣叱り方を全力で考えよ》っていってるけど、そんな小手先のワザを弄するより、三十数年由来のロングテールをどうにかしてよ。
もうそれだけでオレたち、すっかりプライドを傷つけられてんだよね。ロングテールを標準曲線にもどした上で、「遅刻するな」って叱ってくれよ。そうすりゃあオレたちだって、すぐに辞めたりはしないさ。