mukan's blog

つれづれなるままに ひぐらしPCにむかいて

壊れていくのか溶けていくのか

2023-11-10 08:57:20 | 日記
 昨日、ささらほうさらの月例老人会。1月の予定を立てるときに交わす言葉の狭間に、近況が混ざる。サトルさんの連れ合いの所謂認知症が急速度に進行しているという。
 えっ、9月に玄関口であったとき、私は言葉を交わした。
「短歌を詠む旅に出たり、会合に参加したりしてる?」
 と尋ねると、
「ハイ、どうにか続いています」
 とにこやかに応えていた。それなのに、どうして?
 いやね、娘婿が亡くなったのね。娘は婿さんの言い分を聞いて、病気のことも亡くなったことも知らせず葬儀も済ませ、父親に話をした。それを母親にも知らせたが、それを承知できないのか、婿さんにも電話をかけ「どうしたんだろう、電話に出ないわ」とこぼす、と。
 リョウイチさんが言葉を挟む。
 隣の奥さんが同じような症状で、進行が早くてね。それがもうすっかり赤ちゃんになったようになっちゃってるよ。そりゃあ、目が離せないね。サトルさんはたいへんだわ。
 だが他人事ではない。いつ自分がそうならないとも限らない。
 そう思いつつ家へ帰ってみると、兄からメールが入っている。連れ合いが赤血球が減る病で入院点滴を受けている、と。80代の半ばになる。赤血球の血小板が減るというのなら「再生不良性貧血」かもしれない。
 いやまだ病名が決まったわけじゃない。いまのところ増血剤と栄養補給の点滴を毎日3回、3時間、計9時間ほど受けてある程度恢復したら検査をする段階と。わりと軽い事態と考えているようだった。
 でも難病だよ、それは。
 うん、貧血で連れて行った病院だけど、医者には「即入院、え、帰る? 帰ったら命がないよ」といわれ、すぐに入院手続きをして、着替えや何やらを家を往復してもっていってねと、言葉を探しながら、落ち着こうとしている気配を感じる。「百貨店」などと昔の言葉が混ざる。だいぶ慌てているのかもしれない。
 おいおい、大丈夫かい。手が必要なら助けに行くよ。
 いやいや、むしろかみさんがいなくて楽になったくらいだよ、と平気な様子をみせるが、それがかえって肩肘を張っているように感じられる。娘にも知らせたら、ベネズエラから直に母親にLINEで話をするわと言っていたから、今日にでも、やりとりするようになるよ、きっと。
 先月亡くなった義兄の連れ合いであるわがカミサンの実姉も、ご亭主の入院の衝撃で認知症を発症した。「お大師さんへ行ってくるわ」とご亭主に告げて出かけたまんま、1年経った今も行方不明。
 植物観察に出かけていたカミサンも、「わたしが最高齢になっちゃった」という。十人足らず集まる同好の人たちはまだ60代から70代と若い。若い人と一緒だとホッとするというが、高尾山からの帰り、ロープウェイではなくてリフトに乗りたいと言ったら、リフトを降りてから歩く階段がコワイと皆さん腰が引けた。結局リフトに乗ったのは2人だけだったと、足腰の弱りが思いのほか早く進行していることに気づいたと言葉を添える。
 さてささらほうさらの老人会。八十爺3人を筆頭に古稀世代ばかり。自分たち自身もいつ怪しくなってもおかしくない年齢。そういう近況が、ひたひたと身に染むように押し寄せてくる感触。壊れていくのか溶けていくのか、世界から緩やかに消えていっているように思える。ああ、こういうのを彼岸と此岸がおぼろになって感じられるってことなんだろうか。