2008年は関西私鉄も熱い1年だった。とりわけ秋に中之島線の開業を迎えた京阪の変化が大きかった。車両面では新3000系が増備されただけだが、ダイヤの方は早朝から深夜まで一新された。データイムダイヤでは中之島線の目玉となる快速急行が30分毎に設定され、中之島線と京都方面を速達で結ぶ列車となっている。この列車の設定に伴い、特急は毎時4本が本線通しの運転、残りの2本が枚方市止まりとなり、同駅で快速急行に連絡するダイヤが組まれている。京阪では初と思われる中間駅発着の特急が昼間にも設定されるという快挙がなされている。特急は主力種別として終日運転されており、朝や夜間にも樟葉や枚方市止まり、三条行きが設定されており、朝夕の時間帯は8000系のみならず3ドアロングシート車も運用される機会が多くなっている。データイムは本線通しが基本8000系、枚方市止まりは基本9000系での運転となっている。なお、3000系は快速急行専用の車両となっているが、朝晩には間合い運用で特急や急行、普通、区間急行などにも入る。
中之島線は開業日こそ開業フィーバーで沸いていたが、普段は閑散としており、計画よりも利用者が落ち込んでいるという話だ。本線に並行して延伸されており、実質的に新線区間と言えるのは大江橋~中之島間という路線で、他線との連絡も本線より悪いので利用者が計画より増えないのも仕方ないところなのかもしれない。路線自体が不振では中之島以西への延伸の話は実現できない。しかし、中之島線は大阪西部へ乗り入れてこそ価値が上がる路線とも言える。新桜島や咲洲、舞洲方面あるいは阪神と連絡すべく野田あたりへの延伸などが考えられているようだが、この延伸を実現してこその路線と言える。現行路線の成果を挙げるのは並大抵では不可能だが、何とか採算性のある路線に持ち上げ、路線延伸への目処をつけて欲しいものだ。
京阪以外では阪神がなんば線開業に向けて新車1000系の増備が急ピッチで進められており、近鉄車のハンドル教習や尼崎駅改良工事なども佳境を迎えつつある。今のところ具体的なダイヤ発表はないが、伝え聞くところではなんば線はデータイム6本、ラッシュ時9本程度の運転となる見通しだ。朝ラッシュ時などはもっと多くの本数が運転されるのかもしれないが、こちらも中之島線同様、本線と競合する面も持っており、なんば線優先でダイヤを組むわけにはいかないという事情がある。このため、データイムの運転本数は現行の西大阪線の運転本数と同じに抑えられており、少々不満が残る本数となっている。近鉄奈良~阪神三宮間に快速急行が毎時3本運転され、これが終日ダイヤの基本となりそうな感じだ。近鉄線内は現行通りの停車駅を維持するものと思われるが、阪神線内では停車駅の改変が行われる可能性が高い。現在芦屋、魚崎の2駅がホーム延伸が完了しており、御影も無理をすれば21m級6連を停められる可能性がある。このためこの3駅に停車駅を絞り、現行特急と同じ停車駅とする可能性が高いように思う。西宮以東では甲子園には当然停車するものと思われるが、武庫川の扱いが微妙なところだろう。また、西大阪線内を各駅とするのか通過運転とするのかも注目されるところで、西大阪線内通過運転となれば、西大阪線内はなんば線開業で現行よりも不便になる。このあたりどのような処置をするのか注目したい。1月頃にはダイヤが発表されるだろうから楽しみに待ちたいところだ。
また、阪神~近鉄では将来的に近鉄特急を山陽姫路まで直通させる構想を発表している。近鉄からの一方的な直通となる見込みで、ハード面及びソフト面での対応を山陽に求めることになるため、当面は臨時列車などでの乗り入れとなる公算が大である。しかし、阪神の方は特に難色を示していないので、阪神三宮、あるいは高速神戸あたりまでの乗り入れは定期的に行われるかもしれない。本年度投入される近鉄の新型特急車は阪神、山陽直通仕様として登場する見込みだ。近鉄特急の乗り入れは大変結構な話だが、阪神線内の線路容量の問題、近鉄側ではアーバンライナーに使用されている21020系、21000系、さらには伊勢志摩ライナー23000系は本格的な地下路線対応にはなっていないため、岩屋以西の地下線への入線ができないはずだ。看板のアーバンライナーが神戸乗り入れとならないのは近鉄としてはマイナス要因と言えるし、阪神にとってもせっかくの直通用の投資が勿体ない。何とか21020系などの流線型車両が三宮の地下線に入れるように考えてほしいものだ。
他の私鉄では阪急で9300系の投入が目立った1年だった。都合2編成が増備され、さらにもう1編成がスタンバイ済みとなっており、6300系を廃車に追い込んできている。さらに6300系は嵐山線への転属化改造が行われ6353F以下4連が第1陣として秋の嵐山でお披露目式を行っている。来春からの運用開始ということで長らく京阪間の第1線を走り続けてきた6300系もいよいよ第2の人生を歩むことになる。今後は老兵2300系の動向も気になるところで、6300系なきあとの阪急京都本線のダイヤの動向にも注目していきたいところだ。
南海では2300系以来の新車として8000系が登場した。東急車輛製で、関東で流行りのE231系やE233系をベースにしたような車両ということで話題になった。車両の不具合でもあったのかなかなか動かなかったが、普通を中心に本線で運用されている。今後は大量増備とまではいかないものの老朽化してきており待ったなしの状態にもある7000系や6000系の置き換え用として増備されていくものと思われる。南海では秋に高野線で小規模なダイヤ改正を行っている。それ以外は特に大きな変化はなかった。
大手以外では三木鉄道が廃止されている。第3セクター鉄道の厳しさが伺えるが、同僚とも言える北条鉄道が残存しているのは心強い限りだ。三木鉄道はマイカーと神鉄との競合が厳しかったものと思われるが、北条鉄道は競合するのはマイカーのみだ。神鉄やJR加古川線と連携して北播磨地区の鉄道ネットワークを残して行って欲しいものだ。