東京での仕事を終え、JR両国駅から傘を差しながら歩いて向った『蕎肆・穂乃香』(きょうし・ほのか)さん。
落ち着きと静けさの感じられる店構えで、傘を差している夜ということもあって、暖簾は下がっているものの普通に歩いているとお店があることに気付かず通り過ぎてしまいそうです。
お店に到着し、暖簾をくぐったのは開店直後の17:45頃でしたが先客は無く、「こちらどうぞ!。」と花のある清潔感漂う明るいカウンター席に案内されます。
静かな店内には音楽が流れ、お客さんがいつ訪れてもよいように紙のランチョンマットと箸が既に準備されていて、お蕎麦屋さんというよりは「お洒落な和風ダイニング」といった雰囲気です。
更には、フロアで接客に当たっている店員さんも気さくな若い女性で、仕事帰りの女性が一人でフラッと立ち寄って美味しい肴をつまみながら日本酒を傾けることのできるお店ではないかと思います。
そんな、お蕎麦屋さんとは思えないお洒落なお店のカウンター席に着いて、ウィスキーのロックでも注文したい雰囲気の中、まずは生ビールをお願いします。
そしてビールを待っている間に料理を選びますが・・・。
お店のメニューは、まず料理とお酒が別の冊子(メニュー)になっていて、料理メニューの一品料理のページを開きますが、「蕎麦屋ならではの肴」(定番料理)、「馳走」(こだわりの肴)、「あらかると」と大きく3つのカテゴリに分かれていて、更には「本日のおすすめ」まであって何をいただこうか迷ってしまいます。
それも、単に品数が多いだけでは無く、どれも美味しそうなそそる料理ばかりです。
しばし時間を掛けてあれこれ迷いましたが、「だし巻き玉子」(蕎麦屋ならではの肴)、「江戸千住葱のぬた」(あらかると)、「鴨吟醸」(本日のおすすめ)の3品をお願いします。なお、メニューには書かれていませんでしたが、「だし巻き玉子はハーフサイズにできますが・・・。」とのことでしたのでハーフサイズでお願いします。
まずはお通し(チーズ&酒盗)を食べる間も無く運ばれてきた「江戸千住葱のぬた」。
小鉢で登場かと思いましたが、葱の他にワカメやタコなども含まれていて思いのほか量が多く、蕎麦の実(?)が振り掛けられています。その「江戸千住葱のぬた」は冷え具合も程良く、葱の歯応えとぬたみその甘辛加減がいい感じで美味しいです。
続いて、写真を撮ったりメニューを眺めたりしているうちに運ばれてきた「だし巻き玉子」。
ハーフサイズをお願いしましたが、大きめの玉子焼が4切れあり、酒の肴としては十分な量です。
その「だし巻き玉子」ですが、大根おろしを付けずにそのままでいただくと、油を多目に使用しているのかな?という印象ではありますが、出汁の効いた控えめな甘さと程好い食感が美味しいです。
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「だし巻き玉子」をいただいている間にビールが無くなったので料理とは別冊子になっている分厚いお酒のメニューを開きます。最初、「お酒のメニューがなんでこんなに厚いんだろう?。」と思いましたが、開いてみると、日本酒の品揃えがマニアックかつ豊富で、1銘柄毎に1ページを使用して丁寧に説明が書かれています。
今回は、そんな豊富な品揃えの中から、まず島根県の地酒「純米生原酒・蛍舟」を冷でいただきます。
自分で選んだ猪口でいただいた「純米生原酒・蛍舟」は、辛口(+7)の日本酒ではありますが、まろやかな味わいの感じられる優しい喉越しで、料理をつまみながらゆったりした気分でいただくことの出来る日本酒です。
最初の「江戸千住葱のぬた」がまだ残っている状態ではありますが、残る「鴨吟醸」が運ばれてきたので日本酒をいただきながら早速いただいてみます。この「鴨吟醸」も量が多く、食べ始めたばかりですが、過去考えたことも無かった「蕎麦どうしよう?。(腹に入るかな?)」という心配が頭をよぎります。
そういえば、『穂乃香』さんでは「小さいせいろ」、「小さい辛味おろし」、「小さいかけ」、「小さい玉子とじ」、そして「小さい柚子切り」と、小さい蕎麦のメニューが充実しています。
過去、お酒を楽しんだお客さんが締めにいただくために「小盛り(さくら)」のせいろを用意しているお店を見掛けたことはありますが、これほど「小盛り」が充実しているお店は初めてです。最初は「?」と思いましたが、蕎麦前が進むにつれ、その存在とありがたさがなんとなく理解できたように思います。
なお、『穂乃香』さんで量が多いのは料理だけではなくお酒も何となく多いように思います。
柔らかい「鴨吟醸」とまだ食べ切らない最初の「江戸千住葱のぬた」を食べながら「純米生原酒・蛍舟」をいただいていますが、飲んでも飲んでも無くなりません。当初予定では、週末の金曜日ということもあり、お店が混雑していなければ日本酒を2銘柄いただく予定(もう一つは秋田の「春霞・純米」と決めていたんですが・・・。)でしたが、「純米生原酒・蛍舟」だけで十分な量です。
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「鴨吟醸」と最後まで食べていた「江戸千住葱のぬた」が食べ終わったところで予想通り腹八分を少し超えた状態となり、「どうしよう?。小さい蕎麦か?。」なんて思いましたが、蕎麦を食べない訳には行かないし、「小さい蕎麦」ではそのお店の「普通」が分らなくなってしまうので、ここはやはり普通に「せいろ」をお願いします。
そして「せいろ」をお願いしたところで、熱い蕎麦茶が運ばれてきました。
多くの場合、お店に入って席に着いた時点で蕎麦茶が出され、最後が蕎麦湯で終わるので蕎麦茶はそれでおしまいになるケースが多いですが、そうすると、飲み物の順序が「飲まない熱い蕎麦茶、お酒、冷えた蕎麦茶、蕎麦湯」となります。しかし、ここ『穂乃香』さんでは最初に「何かお飲みになりますか?。」と聞かれ、お酒をお願いすると蕎麦茶は出てこないので、「お酒、熱い蕎麦茶、蕎麦湯、(温くなった蕎麦茶)」という順序となり、熱い蕎麦茶が蕎麦前と蕎麦を区切ってくれるので気持ちも新たに蕎麦をいただくことが出来るように思います。
「料理とお酒の品揃えといい、蕎麦茶を出してくれるタイミングといい、酒飲みを満足させてくれる嬉しい蕎麦屋だ!。」なんて個人的な印象を勝手に描きながら待っていると、「せいろ」が二段重ねで運ばれてきました。
「蕎麦汁はやや辛めかな?。」という印象ですが、艶のある、出汁の効いたしっかりした蕎麦汁で、腰のある蕎麦を美味しくいただくことができました。
そして最後に蕎麦湯をいただき、美味しい夕食が終了となりました。
ごちそうさまでした。