デラシネ日誌

私の本業の仕事ぶりと、日々感じたことをデイリーで紹介します。
毎日に近いかたちで更新をしていくつもりです。

「満洲国」とは何だったのか

2009-02-07 23:36:47 | 買った本・読んだ本
書名 「日中共同研究 「満洲国」とは何だったのか」
編 植民地文化研究会+東北淪陥一四年史総編室
出版社 小学館 出版年 2008年 定価 3400円(+税)

満洲に関する本の多さには驚く。いまは長谷川濬のことを書いている関係で、このところ断続的に満洲本を読んでいるのだが、良き時代を回顧するもの終戦後の悲惨な逃亡譚がほとんどを占めている。それ以外は専門的な本で、なかなか全体像を見れるような本がない。ということで本棚はどんどん満洲関係の本で埋まってしまうことになる。本書はさまざまな視点から、「満洲国」の歴史を全体として捉えようとしている。しかも日本側からだけでなく、中国の研究者の視点もいれることで、重層的な満洲研究書となっている。中国側の視点を入れることで、いままでほとんど省みることがなかった、例えば反満抗日運動の実体、日本軍の細菌・毒ガス兵器開発とその犠牲になった中国人たちを明らかにし、さらに満洲国崩壊後の中国東北の問題、特に残留孤児の問題などにも迫っていく。つい最近まで残留孤児の問題について裁判で争われていたということもわかる。私も会員となっている植民地文化研究会の皆さんが中国の研究者と共同研究を進め、最近日本には残っていない満洲時代の雑誌を掘り起こす作業がこうした本ができる背景となっている。その精力的な検証作業には頭が下がる。満洲の問題は、時間が経つに連れて、否定すべきものではなく、評価する傾向がこのところ目立っている。侵略であり、現地の住民を圧してつくられた傀儡国家であることを前提にしないといけない。その意味でこの基本の基本から検証している点は、とても大事なことだと思う。
読むのにずいぶん時間はかかってしまったが、非常に参考になった。
満足度★★★ 


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