2019年 MWA Best Paperback Original
ニューヨーク州の北部の町Havenkill 10月19日金曜日、午前3時
80年代に流行歌手だったAmy Nathansonという女性が雨の中警察署に駆け込んでくる。彼女は乗っていた高級車がカージャックにあい、助けを求めた声に気づいた17歳の少年Liam Millerが車の前に立ち塞がり、犯行を止めようとしてひき逃げにあったと訴える。
事情聴取した署で唯一の女性警官Pearl Mazeは、彼女の証言に不信感を持つ。彼女はかなりの酒を飲んで運転していた、彼女はカージャックを止めようとして轢かれた少年の安否よりも奪われた車により関心があるように見える、もしかしたらカージャックにあったというのは彼女の狂言で彼女が誤って少年を轢いてしまったのでは?彼女の証言の信憑性を調べ始めたPearlは彼女の証言には嘘があることを発見する。
一方、ひき逃げ事件があった現場の近くに住むシングルマザーのJacqueline Reed(Jackie )は、Wadeという17歳の息子の様子に不安がいっぱいだった。クラスメイトから悪魔崇拝主義者と揶揄されていて、友人も作らず、学校から帰ると自室に閉じこもって彼女と話をしようとしない。ひき逃げ事件があった後の彼の行動は、いっそう彼女を不安にさせていた。事件の翌日、衣類をこっそり乾燥機に入れていたり、弟に頼んで自宅から離れたゴミ捨て場に袋に入った携帯電話と思われるものを捨てさせていた。Amyがカージャック犯が着ていたと証言した服装と酷似している衣類、捨てさせた携帯電話はAmyが車と一緒に盗まれたと言った携帯電話?JackieはWadeに事件当夜、どこにいたか詰問するが彼は自宅のベランダでたばこを吸っていたと話し、外出していないと主張する。彼女は彼が雨で濡れたと思われる衣類を乾燥機に入れていたことから彼が嘘をついていることを知る。
やがてLiam Millerの死が発表され、事件は殺人事件となり州警察から刑事が派遣されてくる。そんな中、殺された少年の勇敢な行為を称える声がSNSで拡散し事件現場に設置された献花台には同級生をはじめ多くの人々が訪れ献花台は日に日に巨大なものになっていった。
そして、Jackieの不安が現実になり、容疑者としてWadeの名前が浮かび上がってくる。彼女の再三の要求にもかかわらずWadeは頑として彼が当夜何処にいたか話すことを拒否する。そんな中、彼を非難する声がSNSで拡散し、Jackieたち家族はコミュニティから孤立していく。
SNSが炎上という言葉をよく聞くが、SNSのつぶやきによって、疑われている息子ばかりでなく家族までも周囲から孤立していく緊迫感がすごい。
思春期に入った息子への対応に悩む母親がよく描かれている、タバコを吸っているのを見て見ぬふりをしたり、プライバシー侵害と非難されるのを心配して、彼の散らかっている部屋を掃除するのをためらったり...
Pearl Mazeのキャラに魅かれた。母親を殺したことを悔い、結婚しないことを決断、一夜限りの相手をネットを通じて探す。前の警察署で母親を殺した過去を隠して勤務に就くが同僚たちに露見してこの地にやむなく異動してくる。自分はパトロール警官で事件を捜査する刑事ではないと言いながら、腑に落ちないことがあるとすぐに捜査にむかう行動力はすごい。事件は自分が解決してやるという意欲は感じず、サラッと捜査している感じが良い。この著者の別の作品、私立探偵Brenna Spectorのようにシリーズ化されないかな。
E-book(Kindle版)★★★★★ 394ページ 2018年3月出版 550円(2019年5月購入)