気軽に洋書ミステリー

家にいてもすることがないおじさんは考えました。このままではボケる。そうだ!好きなミステリーを英語で読もう!英語力???

The Girl on the train by Paula Hawkins

2016-10-23 19:25:30 | 読書感想


毎朝、8時4分発の通勤電車に乗りロンドンに向かう空想力豊かなRachelは車窓から見える家々の景色からいろいろなことを想像して楽しんでいた。特に、電車が信号で止まる時に車窓から見える家のテラスでくつろぐ若い美男美女の夫婦に興味を惹かれる。彼らの仲睦まじい様子は5年前、彼女が別れた夫Tomと幸せな日々を送っていたことを思い出させる。また、彼女は自分が理想としている夫婦の姿として彼らを見ていた。毎日、電車が止まるたびに彼らを見ている彼女は、彼らにJess,Jasonと名前をつけて、彼らの生活について職業を推測したり、休みは何処に行くかなど勝手な想像力を働かせて、彼らの様子を見ることを楽しんでいた。
だが、彼女は車窓から見えるその4軒先の家、かって彼女が住んでいた家を見ることを拒んでいた。2年前まで夫と暮らしていた家。今は、浮気相手だった女Annaと再婚した夫Tom、そして赤ちゃんが住んでいる幸せそうな家族の家。彼女は2年経った今も自分を裏切った夫を許すことができない。アル中の彼女は、呑んだ酒の勢いで、何度も何度も元夫Tomへの電話をかけ続ける、彼が応答しないことを知りながら。また、時には彼らの家の周りをうろついたりしていた。ただ、彼女には酔った時の記憶はなく、Tomからの抗議電話で自分のやったことを知る。

そんな中、彼女は、いつものように信号で止まった電車の窓から、彼女が理想的な妻と思っていたJessが、Jason以外の男性と熱烈なキスをしている衝撃的なシーンを目撃する。彼女は夫Tomの浮気を発見した時を思い起こして、夫Jasonへの裏切りだとして妻Jessに怒りを覚える。
翌日、一人酒を飲み始めた彼女は、Jessの浮気をJasonに知らせなけらばいけないと云う使命感にかられて彼に会いに行くため電車に乗る。酒で意識が朦朧とし始めた中、それが良いことか悪いことか自問しながら。

そして翌朝目覚めた彼女は、アル中による深酒のため昨日の夜の記憶がほとんどなかった。彼らの住む駅で降りたこと、地下通路でうずくまっていたことなど断片的なことしか思い出すことができなかったが、なにか彼女にとって最悪の事態が起こったと感じていた。
やがて、彼女の予感を裏付けるようにJessと彼女が名づけた女性Meganがその夜以来行方不明になっているというニュースを見る。妻が失踪した場合、疑われるのは夫Jason改めScotの可能性が高い。警察はMeganが浮気していたのを知っているのか?Scotを守るため警察にこの情報を与えるべきか彼女が悩んでいる時、警察が彼女を訪ねて来る。

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女性3人がヒロイン、3人とも精神的に追い詰められていく。うーん、重苦しい気分が最後まで晴れなかった。

通勤電車から見ている風景をテーマにしたのは、面白い着眼点だった。確かに通勤時間、毎日、同じ車両に乗り、線路脇の家や風景を意識せずに見てしまっている。

酔った時の行動を全く思い出すことができない不安、アル中であることを告白するときの彼女の恥ずかしそうな様子、でも酒をやめられない。何か言いづらいことを話そうとするときは酒を飲んで自分を鼓舞しようとする精神的弱さ、別れた夫や家族へのストーカー行為、しっかりしろよと思って読んでいたが、元同僚や刑事たちからも蔑みや憐れみの目で見られている彼女がだんだん愛おしく思えてきた。最後はこちらの期待に応えてくれたと思っているのだが…

E-book(Kindle版) ★★★★ 326ページ 2015年1月出版 854円(2016年10月)


The Body Reader by Anne Fraiser

2016-10-18 19:18:17 | 読書感想


ミネソタ州ミネアポリス市警殺人課刑事Jude Fontaineは何者かに拉致され、窓のない暗闇の小部屋で3年間、凌辱を受け続ける。しかし、彼女は脱出することを諦めず、一瞬の隙をついて男を殺し脱出に成功する。そして4ヶ月の精神的、肉体的検査を受けた後、Judeは刑事として殺人課に復帰する。彼女のパートナーとして任命されたUriah Ashbyは、長い監禁生活から彼女は精神的に不安定であり、精神的緊張に追い込まれた時の彼女の行動に信頼が置けない、と言って彼女の復帰に強く抗議する。が、上司のOrtegaは4か月の監察結果を通じて精神的に何の問題もなかったとして彼の主張を退ける。しかし、彼は彼女とのパートナーの関係が長く続くとは考えていなかった。

そして、2人は、パートナーを組んでの初仕事として、少女の溺死体が見つかったという湖の現場に向かう。彼らを出迎えた警察官は少女が服のポケットには大量の石を入れていたことから自殺の可能性が高いと彼らに話す。Judeは17歳以下にしか見えない少女の死体を頭からつま先までじっくりと観察し、最後に少女の手を握る。彼女の行為に不審を抱いたUriahにJudeは少女の死体が自分に語りかけてくると言い、少女は自殺でない殺されたと主張する。Uriahは危惧していたことが起こったと思い、精神的問題を抱えてる彼女に刑事は無理だと説得しようとする。Judeは 少女の顔の表情、筋肉の緊張度などから少女が死の瞬間、怯えていたことが分かると反論。彼女は、3年間の監禁中、何時殺されるかという恐怖から、人の表情やしぐさから 彼が何を考えているのか読み取る能力を身に着けていた。
やがて、検死の結果、少女はレイプされ、殺害されたことが判明し、Judeの主張が正しいことが証明される。Uriahは彼女の能力を公にすると、彼女の精神に問題があると思われ彼女は刑事の職を追われると考え、このことを彼の胸の内にとどめておくことにする。二人は少女の私物から交友関係などを調べ、親友と思われるLola Holtから事情を聴こうとするが彼女はかたくなに証言を拒否する。Judeは怯えているように見える彼女に自分たち警察が守るから知っていることを話してほしいと言って彼女の名刺を渡す。
そんな中、Judeは彼女が監禁されていた場所を発見する。彼女は勤務が終わった後、閉じ込められていた場所を突き止めようと近郊の空き家を片っ端から当たっていた。監禁現場に入った彼女は、当時のことがよみがえり精神的に不安定になる。彼女は、平静を装いながらUriahに監禁現場を報告し、到着した鑑識チームなどに状況について説明する。しかし、現場からの帰途、彼女は何者かに襲われ、意識を失う。そして意識を取り戻した彼女は、傍らに少女の切断された首が置かれていることに気づく。
彼女の上司Ortegaは続けざまに起きた出来事に彼女の精神が耐えられないと考えて何か問題が起きる前に彼女を辞めさせようと考え始める。
JudeもOrtegaの考えに気付くが、彼女にとって刑事という職業は天職であり生きがいであるという信念を持って、上司の懸念を払拭するために連続殺人犯の捜査、逮捕に全力をあげる決心をする。

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body readerなどという怪しげなタイトルなので超能力を持った刑事と思っていたが、本格的なミステリーで楽しく読めた。3年間、監禁されていた女性が刑事だったという事実にショックを受け、いきなり物語に引き込まれてしまった。
3年間、監禁されていたJudeの生き続けようとする唯一の希望は、彼女を待ち続けていた恋人からの暖かいハグ。しかし、やっと脱出できた彼女を待っていたのは現実の厳しさ。彼は彼女を待ち続けることが出来ずガールフレンドと一緒に住んでいた。また刑事に復職するも、監禁に伴うトラウマに苦悩し、仕事仲間や社会とうまく折り合うことが出来ない。父親の州知事Phillip Schilling とは母親の死を巡って絶縁状態。彼女の孤独感がひしひしと伝わってくる。
そんな絶望のどん底に陥った彼女がやがてそこから這い上がり再び少女の行方の捜査を始める姿はワクワク感動させてくれる。立ち直れそうでなかなか立ち直れない彼女の行く末が気になって先へ先へと読みたくなる。読後感が最高に良い。

E-book(Kindle版) ★★★★☆ 292ページ 2016年6月出版 読み放題を利用


DeadLine :(Tina Boyd3) by Simon Kernick

2016-10-03 20:27:41 | 読書感想


ロンドンの高級住宅街に住む女性実業家Andrea Devernは、夜8時ごろ帰宅するが夫も娘も帰宅していないことに気づく。2人で買い物にでも出かけたかと考えている時、携帯電話に娘を誘拐したという電話がかかってくる。パニックに陥った彼女に誘拐犯は、48時間後、身代金50万ポンドと引き換えに娘を返すと話し 、警察には連絡するなと警告する。すぐに夫に緊急事態を告げようとするが何度かけても留守電になるため、彼女は彼もまた事件に巻き込まれている可能性を疑う。1人で誘拐犯と取り引きすることに不安を感じた彼女は思い悩んだすえ、十数年前に不倫関係にあった男に連絡をすることを決断する。Jimmy Galanteという男は武装強盗と麻薬取引で 生計を立てる暴力的な男だったが、その容姿で女性を惹きつける能力を持っていた。今、スペインに逃亡している彼は、最初、彼女の救助の要請に冷淡だったが、誘拐された娘は彼の娘であるという告白を受けて、共に誘拐犯に対処することに同意する。
Jimmyは一人で来るように要求されている身代金の受け渡しに同行することを主張する。万が一、彼らが身代金だけを受け取って娘を返さない場合に備えて身代金の行方を監視すると言って。そして、身代金引き渡しの時、事態は最悪に向かう。誘拐犯は身代金を奪うと共にJimmyを殺害、約束を破ったとしてさらに50万ポンドを要求する。事態にパニックに陥った彼女は交通事故を起こし警官に職務質問されて、誘拐事件について話す。

SOCA所属の刑事Mike Boltは9月の金曜日の早朝、、誘拐事件発生の知らせを受ける。事情聴取に望んだ彼はその女性がかって彼が愛した女性であることに気づく。心の動揺を隠して尋問を終え2人になった時、彼は彼女も彼に気づいたことを知る。そして、誘拐犯からの電話を受けた場合の対応を整えるべき、二人で打ち合わせをしている時、彼女は彼に衝撃的な告白をする。警察は誘拐犯がすでに人質を殺している場合や身代金を受け取ったら人質を殺してしまう可能性を考えて、人質を無事に取り戻すという言質を被害者の両親に与えることを規則で禁止しているにもかかわらず、彼はその告白を受けて、警察官としての一線を超え、彼女に娘を無事連れ戻すとことを誓い捜査に全力をあげる決意をする。

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誘拐を扱ったストーリーは、人質がどうなるのか?救出までのタイムリミット。身代金の受け渡しの方法・・・ここで捕まっては物語が盛り上がらないから・・・どうやって警察の目を逃れて金を奪うのか?などに引き込まれて一気に読める。
この本はTinaのシリーズの一冊になっているが。誘拐された少女の母親が10数年前に彼が恋に落ちた女性だと知り、普段通り の捜査が出来ず、刑事と私人との間で悩み、当惑する彼女の上司Mike Boltがメインのストーリー。
またAndreaのキャラが魅力的だった、娘を救うためにあらゆる手立てを尽くす母親としての姿、強さに驚嘆した。
誘拐犯がなかなかわからず、いろいろこちらも推理したけれど、こちらの予想外の展開で最後の最後まで冷や冷やさせてくれた。

E-book(Kindle版) ★★★★ 490ページ 2008年4月出版 500円(2016年購入)