気軽に洋書ミステリー

家にいてもすることがないおじさんは考えました。このままではボケる。そうだ!好きなミステリーを英語で読もう!英語力???

Brittle Karma by Richard Helms

2021-10-23 11:04:49 | 読書感想

2021 PWA Best PI Paperback Original 

30年前、カリフォルニア州Sacramentoで現金輸送車が襲われ、犯行に加わった5人のうち4人が捕まり、運転手役のEddie Riceだけが2千万ドルの現金と共に逃走する。捕まった男たちは釈放されたとき奪った現金の分け前を受け取ることを期待してEddieのことを警察には話さなかった。30年後、犯人のうちの唯一の生き残りAbner Carlisleが釈放され、San Franciscoの私立探偵のEamon GoldにEddie Riceを探してほしいと依頼に来る。Eddie はCarlisleが拘留されてから5年間は刑務所に面会に来ていたが、その後消息を絶っていた。あろうことか、彼の娘Lydiaを道連れにして。

GoldはAbner Carlisleが彼が行方を突き止めた場合、Eddie を殺すつもりであることを察し、殺人に関与することを嫌い依頼を断る。数日後、Goldのもとに刑事がやって来てAbner Carlisleが殺されたことを彼は知る。Goldは殺人事件には興味がなかったが強奪された2000万ドルの行方には興味を持つ。2000万ドルを賠償した保険会社に連絡した彼は強奪金を取り戻した場合、10パーセントの報奨金が与えられると知り、強奪金の行方を突き止めることを決心する。それは25年前に遡って、Eddie とLydiaの交友関係を調べ現在の彼らの居場所を探るとてつもなく実現の可能性の低いものと思われた。

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このストーリーの魅力はEamon Goldの独特の個性だと思う。詐欺に会っている女性を張り込みを放棄してでも助けたり、ギャングのボスの護衛をしている男を真っ当な仕事につくよう勧めたり、身に危険が及びそうな時も咄嗟の機転で上手く乗り切る、現金強奪事件で現金が回収されてないと知ると保険会社に連絡して回収した時の報酬を約束させる。強奪金やLydia の行方をしゃかりきに追うのではなく、調査の合間には恋人と過ごしたり趣味の楽器作りに励んだり、法廷に出廷しない釈放犯を捕まえる時に油断して負傷した足について、どうしたのか訊かれるたびにホラで返す話術のうまさ、人生を飄々と生きている感じがして心地良い。

ストーリーもミステリーというより、25年前、両親との確執からパーソナル障害になったLydiaを中心としたアメリカンドリームを夢見て旅立とうとしていた若者達が、夢破れた現在の自分と比べて、当時を顧みる青春群像のストーリーに思えた。ストーリーの展開もゆったりしていて本格ミステリーのようなハラハラドキドキ感はなかったけど読み終わった後、ほのぼのした気持ちにさせてくれる。

E-book(Kindle版)★★★ 199ページ 2020年出版 Umlimited対象


The Good Detective by John McMahon

2021-10-02 09:49:44 | 読書感想

2020 MWA Best  first novel nominate

俺の名前はP.T.Marsh  36歳、Georgia州のMason. Fallsという町の刑事だ。自分で言うのもなんだが、この警察署でナンバーワンの敏腕刑事と云われていた…一年前までは。一年前、俺は自動車事故で最愛の妻と息子を亡くした。以来、俺は酒浸りの生活を送るようになり、同僚の刑事達からぞんざいな捜査をする刑事と云われるようになっていた。

クリスマスの飾りが見られるようになった日曜日、何時ものように俺は、妻と息子を失った事故現場近くのストリップバーの前に車を止め、車が故障したという妻からの救助要請を、捜査を優先して断ったことへの後悔を酒で忘れようとしていた。深夜、悪夢にうなされて目覚めた俺はバーで働くストリッパーとの約束を思い出す。女は同棲する男から繰り返される暴力被害を訴える。俺は2度と彼女に暴力を振るわないように男と話をつけてやると約束する。酔って朦朧としていたが、約束を実行するため俺は男の家に行き、テーブルの上に置かれた麻薬を見ながら警察だと名乗り、顔面に鼻血が飛び出るほどの強烈なパンチを浴びせ、二度と女に暴力を振るわないことを男に誓わせる。

翌朝、相棒で新人の黒人女性Remy Morganからの電話で殺人事件が発生したことを知り、俺はRemyと共に現場に向かう。殺されている被害者を見て、俺は呆然とする。被害者は昨日、いや数時間前、俺が女に暴力を振るうなと警告した男だった。俺は男を殴って脅したが殺してはいない、警告してすぐに男の家を去ったはずだが、断言できるほどの記憶がない。今朝起きた時、俺が男と会った時に着ていた上着が無くなっている。男の死亡推定時刻が俺が男と会っていた時刻に一致する、もしかして俺が殺したのでは…と俺を不安にさせる。

顔馴染みの鑑識の仕事を見ながら、俺が昨日残した指紋を検出されたら、俺が第1容疑者になってしまうと俺は焦る。内心の動揺を隠しながら家の中を捜索していた俺たちは多量の空のガソリン缶を見つける。Remy は昨日起きた放火事件と男の関連性を主張し、俺達は放火現場に向かい、そこで縛り首にされた上に火刑にされた黒人少年の遺体を発見する。殺された男は白人至上主義を標榜するタトーを腕にしていた。男が少年をリンチ刑にした可能性は高い。殺された少年はその日の友達の家に泊まる予定が突然キャンセルになり、家に帰る途中を拉致された。少年の予定外の行動を男に知らせる仲間がいなければならない。暴力的で麻薬取引をしている男が警察に捕まることを恐れ、白人至上主義の仲間が男を殺した。少年の予定外の行動を知っていた人物は誰か?俺は、俺の無実を立証するためにも、少年の両親、少年の友達などに聴き込みをして男を殺した犯人を突き止めていこうとする。

そんな中、少年の母親をはじめ黒人の一部が白人の俺が事件を捜査すれば、いい加減な捜査で犯人を見逃すのではと騒ぎ始める。

彼等がどう思おうと、俺は犯罪を犯した奴にはそれに相応しい裁きを与える、決してそのまま逃がさない、必ず捕まえてその犯罪に相応しい裁きを与える刑事Good Detectiveであり続けることを決意する。

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犯人の犯行動機などは解明されているのだけどプロットの中に提示された謎が未解決のままで終わっているものがあるので、読んだ後のスッキリ感が物足りなかった。

最愛の妻と息子を事故で亡くした衝撃から立ち直れずにいた男が自分の心の支えとなっているものが何かに気づき、立ち直っていく様子は読み終わった後にほっこりした気持ちになって良かった。

主人公は、俺には失うものなど何もないと居直り、酒浸りの生活を送っている態度から、上司や同僚の刑事達にもぞんざいな態度を取り、一匹狼的な捜査をしていくのかと思っていたが、捜査主任として上司には捜査状況をまめに報告し、パートナーの新人刑事と情報を共有して一緒に聴き込みに行ったりする、そして聞き込み先では丁寧な言葉遣いで対応する。捜査の手がかりが途切れた時は、やり残している証人への聴き込みや証拠品がないかどうか考える。気になったことがあれば 納得いくまで捜査を続け、いい加減な妥協はしない。真面目な(?)仕事ぶりはいい意味で予想外だった。また読んでみたくなる魅力的なキャラクターだった。

E-book(Kindle版)★★★★ 309ページ 2019年出版 277円(2021/10/2現在)