気軽に洋書ミステリー

家にいてもすることがないおじさんは考えました。このままではボケる。そうだ!好きなミステリーを英語で読もう!英語力???

Expats (The) by Chris Pavone

2013-08-25 09:52:19 | 読書感想

2013年MWA新人賞

ワシントンDCに住むKatherine(Kate)はシステムセキュリティのプロである夫のDexterからルクセンブルグへ移住することを提案される。ルクセンブルグはスイスと同じように世界の富裕層を対象とした匿名口座を作れる銀行が多数存在しており 彼はその銀行の一つから不正アクセスなどを阻止するセキュリティ部門の責任者としての仕事の提供を受けたと話す。


かってはCIAの暗殺部門に所属し、今は南米担当の情報分析官として働く彼女は、夫にはState Department(国務省)に勤めていると嘘をついていた。しかし、この5年の間に二人の息子に恵まれた今、彼女は仕事よりも家庭を大事にしたいと考えていた。夫の提案はそのチャンスと考え、夫には秘密にしていたCIAを辞め 彼女はルクセンブルグに行くことに同意する。

ルクセンブルグに移り住んでまもなく、彼女は昼は子供と夜は夫との幸せな時間を過ごすという彼女の目論見が誤算だったことに気づく。夫は毎日、残業で夜遅くまで帰宅せず、子供を学校へ送った後は 何もすることがなく友もない彼女は孤独で退屈な日々を送っていた。

そんな中、KateはシカゴからやってきたBillJuliaと名乗る夫婦と知り合いになる。

KateはJuliaから仕事や生活についての話を聞くうちに その饒舌な話し方に長年の情報員としての直感から彼女が嘘をついていることを見抜く。
夫のDexterは彼らと意気投合するがKateは 旅行先のパリやスイスなどでも彼らに出会うことに意図的に彼らがKate達につきまとっているように感じ、彼らに不信感を覚える。さらに、ある夜、4人はナイトクラブから出たところを拳銃を持った強盗に襲われるがBillは瞬時に彼らから拳銃を奪い、撃退した。その腕前から、KateはBillは彼が言うような金融関係者ではなく以前の自分と同じ同業者ではと疑う。
ネットで彼らのことを調べたKateは彼らが偽名を使っていることや仕事などについて嘘を言っていることを確信する。

Kateは密かにBillの事務所に入り込み、彼が銃を隠し持っていることを発見する。彼らの住まいが宮殿を見下ろす場所にあることと考えて彼らは政府要人を暗殺するためにルクセンブルグにやってきたのではないかと彼女は疑う。
KateはCIAの欧州支部長と会い、彼女の推測を話し、彼らの写真を渡し、彼らの身元を調べて欲しいと頼む。
やがて、彼らが何者であるか分かったとき、Kateは、夫が彼女に隠していた秘密、彼女が夫に隠していた秘密と対峙する必要に迫られる。

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一画面(?)ごとに段落があり、次の段落が前の段落の続きであったり、他の場面に転換していたりと新聞の連載小説のように段落の区切りが多くて読みづらい。また、時系列が分かりづらい。Kindleはパラパラと今までのストーリーを読み戻すことはできないので この本はPBで読んだ方がいいかもしれない。

この本はユーモア小説?と思えるほどKateの行動が面白い。専業主婦に退屈していた彼女は彼女たち夫婦に接近してきた怪しげな夫婦に関する調査に生き甲斐を感じる。ある時は暗殺者と思い、ある時は、海外逃亡犯ではと疑い、アメリカの犯罪記事をネットで四六時中調査したり、またあるときは、彼女がCIAに所属していたときに実行した暗殺について捜査しているCIA職員?と疑ったり、ついには、手がかりを求めてBillの事務所に潜入したりと、こんなことをする意味があるのかと自問自答しながらも、退屈していた彼女が水を得た魚のように生き生きと行動する様子は微笑ましい。

Kindle版 ★★

 


All I Did Was Shoot My Man by Walter Mosley

2013-08-11 09:12:37 | 読書感想

昔、俺はParole officeに勤める元彼女のGertと組んでマフィアやプロの犯罪者の依頼を受けて、文書を偽造したり、証拠を捏造したりして、Gertが選んだ犯罪者を彼らが犯した犯罪の犯人にでっち上げていた。そのGertが 俺たちが犯人と仕立てあげた男の娘によって殺されてから、俺は その仕事から手を引き、まっとうな探偵として女房、子供のために働いている。

しかし、俺は今、そのころ犯人に仕立てあげた女が8年の刑期を経て、刑務所から出てくるのを待っていた。
今から9年前、Rutgers保険会社を強盗が襲い、5千8百万ドルを奪う事件が起きた。ガードマンの一人Clay Thornが内通者と分かったが 彼はその場で射殺されており、他の犯人の行方と金の行方は分からないままだ。
そしてその直後、相棒のGertのところにStumpy Brownという男が現れた。そいつは強奪された金の一部を持ってきて、犯人をでっち上げて欲しいと俺たちに依頼した。
そのでっち上げた女が 今、俺が待っているZella Grishamだった。強奪事件の6日後、Zellaは 彼女の夫が彼女の親友Minnieと浮気している現場に出くわし、夫に向けて銃を発射し、怪我させたことで逮捕された。世論は彼女に同情的だった・・俺たちが彼女を強奪犯の一人とでっち上げるまでは。

彼女が妊娠中であることを知り、俺は彼女を犯人にする事に良心の呵責を感じたが Gertの頼みに逆らえず、Stumpyが持ってきた金をZellaの保管庫に入れてから 警察に匿名の電話をかけた。ただ、俺たちがでっち上げに成功した後、Stumpyは俺たちを殺そうとするのではと不信を持っていた俺は 密かにStumpyが用意していた札束に付いていたClay Thornの血痕を第三者の血痕に換えておいた。

警察の雑な捜査のおかげでZellaは強奪犯の一人と見なされ共犯者の名前を言うように尋問される。 彼女は自分は夫を撃っただけで強奪事件とは関係ないと主張したが、強奪された金が彼女の保管庫にあったことから16年の刑を宣告されてしまった。
数年後、このことに関して後味が悪い思いをしていた俺は友人であり、弁護士でもあるBreland Lewisにすべてを話した。Lewisは彼女に会いに行き、自分を彼女の弁護士に指名させ、8年の刑期を過ごした彼女を釈放させるよう判事に請求した。そして、俺は彼女が釈放されて出てくるのを待っていた。

しかし、Zellaは出迎えた俺に非友好的だった。彼女は 突然接近してきたLewisが、彼女が強盗事件の実行犯であり数千万ドルの金をどこかに隠していると思って弁護を引き受けたという不信感をもっていた。夫の浮気から始まった彼女の身の上に起こった一連の不運の出来事を考えると彼女の態度も無理もないと思い、俺は LewisがZellaのために用意した部屋の地図と当座の資金、そして俺の名刺を渡して Zellaが去るのを見守っていた。
しかし、その夜遅くZellaは俺に会いたいと電話してきた。俺とLewisの好意に不信を抱きながらも、彼女が頼れる人間はこの地球上に俺以外いなかった。彼女は昼間の俺に対する無礼を詫び、入所中に彼女の頭を離れなかった二つのことを俺に依頼する。一つは、生まれたときに養子に出した子供の行方、もうひとつは謝罪するために元恋人を探すこと。

彼女が釈放されたことで 強奪された会社の調査員、警察などが動き出した。俺の過去の経歴を知っている調査員や警察は俺が彼女を釈放させたことで 事件に俺が関与しているのではと疑っていた。
周囲の喧噪など気にせず 俺は彼女の裁判をやり直しさせるべく強盗事件の調査を開始する。

この事件を調査しようと考えたとき 俺は裏社会ではNo1の強盗のプロとして知られるBingo Hamanが頭に浮かんだ。しかし、彼は3ヶ月前に何者かによって銃殺されていた。彼が実行犯かどうかは 俺たちに金を持ってきたStumpyに聞けば分かると考え、俺は情報屋に1000ドル払い奴の居所を聞き出し、そこに向かうが、すでに奴は殺されていた。奴の体には拷問の後が残っていた。
Stumpyを拷問した男たちの目的は 金の隠し場所を聴くためか、それとも強奪実行犯が、彼らにつながる糸口を絶とうと考え、Zella をスケープゴートに仕立てあげたのは誰か問いただすためか。 Bingoが拷問されずに殺されたことから考えてどうも後者の可能性が高い。そしてGertがいない今、どうも、俺が殺しの次の標的になりそうだ。

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最後はあっけなかった。盛り上がりがちょっと足りなかった。
登場人物が多すぎて誰がだれだか混乱する。強盗に関係する人物、息子の初仕事にもなる金持ちの息子の素行調査に関する人物、家族に関係する人物。

今時の探偵にしては珍しく車を運転して調査を行うのではなくタクシーや電車を利用して目的地に向かうのはユニークだった。

主人公のキャラクターはかなりユニーク。素手で相手を殺すほどの凄腕の黒人探偵、依頼人も今は弁護士だが、数年前まではマフィアなどの犯罪のプロ、そのため今でも裏社会に幅広い人脈を持っているというかなりユニークなキャラクターで興味深く読んでいける。

★★★ Kindle 881円