気軽に洋書ミステリー

家にいてもすることがないおじさんは考えました。このままではボケる。そうだ!好きなミステリーを英語で読もう!英語力???

Little Girl Lost by Brian McGilloway

2015-01-25 10:13:54 | 読書感想


1ヶ月前、故郷の北アイルランドのDerry市のPrehenに認知症の父親の介護のために転勤して戻ってきた北アイルランド警察(PSNI)重犯罪捜査課(CID)所属の刑事 Lucy Blackは冬の早朝、上司の警視正Traversから捜査中の行方不明の16歳の少女、Kate McLaughlinがLucyの自宅の近くの森で目撃されたという情報を確認するよう命令され、大雪の中現地に向かう。降りしきる雪と凍える寒さに一刻も早く彼女を見つけだすことが急務と感じた彼女は同僚の警官の到着を待たずに森に入っていく。
森にわけいったLucyは胸にAliceと刺繍されているパジャマしか着ていない8歳ぐらいの少女が木の根元にうずくまっているのを発見する。
病院に収容された少女は自分を発見、保護してくれたLucyを頼りにし、他の者が手をさしのべると激しく泣き叫んで触られることを拒否した。しかし、Lucyを含め誰に話しかけられても一言も返答しなかった。
LucyはAliceを発見したことや少女に信頼されていることから上司のTraversから一時的に子供の虐待などを扱うPPUという部署に配置転換を命じられる。PPUで彼女はAliceの身元を捜査を命じられるが、彼女は行方不明のKateの捜査に携わっていたCIDの仕事にやりがいを感じていて、少女の身元の確認という単調なPPUの仕事に不満を感じる。そんな中、鑑識員、Tony Clarkeから少女の着ていたパジャマから多量の血しぶきが検出されたという知らせを受ける、さらにTonyが少女を調べた結果、少女の手からもルミノール反応があり、彼女は多量の吐血をした人物と一緒にいたと告げられる。Lucyは少女が誰とも口を聞かず、人との接触を拒否している原因は全身に血を浴びたせいだと推測する。Lucyは検出された血液型を手がかりに12時間以内に吐血して病院に運ばれた該当者がいないか調べるが、少女と結びつけられる人物を見つけることはできなかった。

翌日、Kateの父親McLaughlinが娘の誘拐についての情報提供者に100万ポンドの賞金を提供するという記者会見を行う。それに便乗してLucyはAliceについての情報提供を少女の写真を掲げながらテレビを通して市民に呼びかける。
すると、テレビでLucyを見て彼女がKateの捜査をしていると勘違いした賞金目当ての女性から電話があり、事情聴取に向かったLucyは 女性から自分の同棲相手だったBilly Quinnという男が事件に関与しているという証言を得る。女性は証拠として男の車の中に落ちていたというロケットをLucyに見せる。その中にはKateと思われる若い少女と父親McLaughlinの写真が入っていた。

早速、この情報をPPU上司のTom Flemingに話した彼女は一人で行動するのは危険だと叱責され、この事件は自分達の担当ではない、CIDにまかせると言われる。しかし、行方不明のKateに関して初めて有力な手がかりを得た自分が捜査から外されることに不満を感じた彼女は密かにBillyの住所に向かい家を見張るのだが・・そこで彼女は大失敗をしてしまう。
Lucyは、誘拐事件の捜査責任者のTraversから叱責され、警察副本部長Wilsonのもとに出頭するよう命令される。警察副本部長はLucyの母親でもあるのだが、母娘を公私混同を避けるため、そのことを隠していた。WilsonはLucyの取った行動に理解を示すが、CIDの仕事に介入しないように注意する。
そんな中 Lucyは 鑑識のTonyからAliceのパジャマにKateの髪の毛が付着していたと教えられ、二人が一緒にいた事実に興奮する。またテレビを見たという男からの情報でAliceの身元、両親の所在が分かる。
やがて、二人の少女の関係に注目して捜査を進めるLucyは事件の背後にアイルランド紛争時代の出来事が関連していることに気づく。

いっぽう、認知症の父親が盛んに口にするJanetという名前の女性が気になり彼女の身元を調べたLucyは、少女だった彼女が家族とともに受けた忌まわしい悲惨な出来事と再び対峙することになる。

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Lucyは泣く。老いていく父の姿を見て。同棲している男の暴力から母親を守るために学校へ行かない少女に。森で発見されてからも誰も彼女の身を案じているように見えない少女の孤独に。何とかしてあげようと思いながらもなにもできない自分の無力さに。しかし、現実の厳しさ、残酷さに打ちひしがれながらも、彼女はその事実から目を背けることなく、父親や少女達にいつも自分がそばにいることで安らぎを与えようと頑張る。
そんな人々に対する思いやりが彼女の周りに人脈を作っていき、捜査の手助けになっていく。
父親の介護、捜査と頑張る彼女に希望と安らぎを与える出来事があって欲しいなぁと思っていたら、最後にそんなシーンがあってホッとする。
殺人や誘拐事件など重大犯罪を捜査することが刑事としてのやりがいと感じていたLucyが児童虐待などを扱う部署に配属されて、その部署の存在意義を理解、刑事として成長していく姿が好ましい。次回作では彼女はまだPPUにいるのだろうか?
事件の背後にアイルランド紛争という北アイルランドの暗い歴史があり、全体に暗く重々しいストーリーだったので、次なる作品ではもうすこし明るい感じになって欲しい。

 ★★★★  本の長さ 384ぺーじ Kindle版  ¥343円


Alex by Pierre Lemaitre

2015-01-11 11:29:44 | 読書感想

男は皆、その魅力に惹きつけられる美貌の女性Alexは、パリの町でウィンドウショッピングしているとき、50代と思われる大男が彼女をストーカーしているのに気づく。彼女は2、3日前、自宅の近くでその男を見かけたことを思い出す。動揺した彼女は店に入り、しばらく様子を窺う。そして、通りに男がいないことを確信してから店を出て近くのレストランに入る。
しかし、食事後、通りを歩いて帰宅する途中、待ち伏せしていたストーカー男に襲われ車で拉致される。彼女は広大な倉庫に連れ込まれ、裸に剥かれたうえ、身動きができないほど狭い木枠の中に閉じこめられる。そして鳥かごのように天井からロープで 吊される。

恐怖に泣き怯える彼女に男は「俺はおまえが死んでいくのを見るつもりだ。」と言って、彼女をレイプするでも、暴力をふるうでもなく、また殺そうともせずに、黙って彼女を見つめ、携帯で彼女の様子を撮って彼女を放置して去っていった。
彼女は男の言葉から彼がいつか自分を殺すと確信する。そして足音が聞こえる度に彼女は死の恐怖に怯える。しかし、男は彼女のやつれていく姿をじっと見つめ写真に撮り、去っていくことを繰り返していた。やがて数日が経ったとき 吊り下げられたロープを伝ってネズミが降りてくるのを見て、彼女はおとこの陰湿な計画、男の言った言葉の意味を理解して慄然とする。
そんな時、死の恐怖に怯えながら彼女は奇想天外な計画を思いつき実行に移す。

パリで起きる殺人、誘拐など重大犯罪を担当する犯罪捜査課の捜査主任のCamilleは、身長150センチに満たない刑事、その身長のため証人から彼の捜査能力に不信の目を向けられることもたびたびある。4年前、彼は、妊娠中の妻を誘拐されたうえ殺され、精神的ショックから数ヶ月間休職していた。復帰してからも彼は痴情による殺人、隣人の殺害などを担当し、誘拐事件などの重大犯罪は妻の事件を思い出すので辞退していた。しかし、今、人員がいないことを理由に彼は上司で長年の友人でもあるLu Guenから誘拐事件の捜査を命じられる。
彼は、誘拐などほとんど起きないこのパリで自分が誘拐事件を担当する不運に憤慨しながらも、ほかの捜査主任の手が空くまで と言う条件で事件を担当することを承諾する。

事件が起きた現場に行ったCamilleは、目撃した男から若い女性が大男に襲われ、白い車に拉致されたという証言以外、男の特徴、車の特徴など有力な手がかりが得られないことに苛立ち、同じように手がかりを得られないまま最終的に死体で発見された妻の誘拐事件を思い出し、この捜査から早く手を引くことを考える。しかし、被害者の女性が拉致される様子を思い描いた時、あのような事件の後に自分が刑事に復帰したのは、今、この瞬間にも誘拐犯から拷問されたり、レイプされているかもしれない女性を一刻も早く助け出すためと考え直し、女性の救出に全力を挙げることを決意する。

Camilleは目撃者から誘拐犯が白い商用車に乗っていたという証言を得て、現場付近の防犯カメラに映っている犯人の車を発見し、車のサイドに文字が書かれていることを見つけだす。しかし文字の下部しか映っておらず科捜研に文字の解読を依頼する。
科捜研は映像から車のメーカーとモデルを特定し、さらにサイドの文字を解析して可能性のある文字の車の所有者をチェックしていくが、すべての所有者をチェックするには数週間かかると思われた。とくに商用車は頻繁に転売されるので所有者を特定するのは困難を極めた。

Cammileは、誘拐された女性の身元を特定をするべく警察本部に失踪人調査の依頼が届いていないか調べさせるが、捜索願は出ていなかった。
さらに、事件から数日が過ぎても女性について、家族や恋人、勤務先のどこからも捜索願いが出てこないことを知り、彼女の失踪に関心を持っている人が誰もいないことに彼は違和感を覚える。
そんな中、地道な捜査の成果が実って犯人と思われる男をCamille達は探し出す・・・そこでCamilleは想定外の事態に直面する。
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捕らわれたAlexの様子の描写が残虐すぎて読むのを止めたくなったが、我慢して読んでいくと俄然おもしろくなった。想定外の出来事が次々と起こり、事態がどうなっていくのか、読み手をどこにつれていってくれるのかわからず、次なるアッと言わせてくれることを期待して読み手をわくわくさせてくれる。そして期待通り、最後の最後に「なるほど!」と納得、感動させてくれる。

原作はフランス。フランスのミステリーはアメリカのミステリとはひと味違う気がする。じっくり人物を書き込んでいく。昔読 んでいた松本清張のようなストーリー、犯罪を通して人間を描く。

とくにAlexという女性。いつまでも心に残る女性。美貌の持ち主ながら恋愛は自分とは無縁と達観している、引っ越しを頻繁に繰り返す彼女が持っている持ち物の中身、子供の頃からのものを大切に今も保存している。その背景がわかると、彼女の人生が見えてきて、心にジーンとくるものがある。愛というものを教えてあげたくなる。

またCamilleという刑事、誘拐と殺人の違いは何か、誘拐犯の一般的特徴は何か、理詰めに考えて捜査方針を決めていく。身体
的ハンディも含めてアメリカの刑事とは違うキャラクターが設定がおもしろかった。

★★★★★  Kindle版 368ページ