Georgia州、Grant CountyのHeratsdaleという小さな町で小児科医と検死医を兼務するSara Lintonは昼食を取りに行った店のトイレで女性がレイプされ刺殺されているのを発見する。
殺された女性はSaraも顔見知りのSibyl Adamsという目が不自由な33歳の大学教授だった。
彼女は直ちに警察署長で元夫のJeffrey Tolliverに連絡する。現場に到着したJeffreyは腹部を十字に切り裂かれた死体を見て慄然とする。被害者Sibylは犯罪捜査課の唯一の女性刑事Lenaの双子の姉であった。被害者の身内であるLenaを捜査から外すべきか悩んだ彼は、彼女を捜査から外すと独断で捜査を行うことを懸念、また彼女が刑事として優秀であることを考慮して、彼女を捜査チームに加える。LenaはSibylの死に驚愕するが、Sibylの死を悼むよりも彼女を殺した犯人を突き止め電気椅子に送ることに全力を挙げることを決意する。
捜査会議に参加したSaraは、犯人は盲人であるSibylのお茶に利尿作用のある薬belladonnaを投入し、トイレでSibylを待ち伏せて殺したと話し、犯人が誰であろうと、かなり注意深く計画された犯行であると断言する。
Jeffreyは、Sibylの身近な人間への聞き込みの他、性犯罪歴のある住民のリストを作り、捜査員たちに個別に当たるように指示する。
そんな中、Sibylの交友関係を調べに彼女の教えている大学に行ったJefferyとLenaはJulia Matthewsという女子学生が行方不明だということを知る。そして翌日、彼女がSaraの車のボンネットに放置されているのがSaraによって発見される。
彼女を綿密に調べたSaraは、12年前に、自分に起きた悲惨な出来事が事件の手がかりを握っている可能性に気づく。それはまた、彼女の身に危険が迫っていることを意味しているのだが。
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Sara Lintonが主人公の物語と思って読み始めたが、Grant Countyシリーズと名付けているようにSara、Jeffrey、Lena3人が主人公で展開するストーリーだった。Saraが死体から殺された状況を的確に推理していく様子がかっこよく、彼女の主導でストーリーが進むかと思ったら、やはり検死医という立場のため捜査には関与せずにJeffreyが捜査の主体となっていたのは残念。もうすこし彼女を捜査に関与させてほしかった。
検視の場や救急現場では毅然とした態度を取りながらも、自分の過去の悲惨な体験をJeffreyに知られることを恐れるSara。黒人や女性を対等とみない南部アメリカ社会の偏見と苦闘するJeffery、そしてなんとかSaraの愛情を取り戻そうと奮闘するJeffrey。女であることで同僚の刑事たちから軽んじられていることに苛立ち、反発するLena、また保守的な町でSibylがレスビアンであったことを隠し、姉の名誉を守ろうとするLena。それぞれのキャラがとても魅力的に語られていく。また、Saraを見守る両親、妹の絆の強さが物語の清涼剤となっている。
検視の場面、犯行の場面、過激な描写にびっくり。絶対、映像では見たくない。頭にその場面を思い浮かべたくないけれど、He didn't want to think about Sibyl Adams,blind,sitting on the toilet while her attacker slit....と描かれたら読んでる方は、つい、そのシーンを頭に想い描いてしまう。文章を通して被害者の恐れ、動転した様子、またLenaの回想を通して幸せそうに微笑むSibylの姿が見事に描かれている。
blindsight ➡ 盲視(光源や他の視覚的刺激を正確に感じ取る盲人の能力)、またbelladonnaの薬効によって起こる作用you can see ,but your mind can't make out what it is you're seeing p242より
Kindle版 ★★★★ 434ページ 985円 2001年出版