気軽に洋書ミステリー

家にいてもすることがないおじさんは考えました。このままではボケる。そうだ!好きなミステリーを英語で読もう!英語力???

The Long and Faraway Gone by Lou Berney

2016-06-12 19:31:14 | 読書感想

2016年 MWA Best Paperback Original受賞作品

過去を忘れて生きようとする男がいる。
26年前、Oklahoma 市の映画館が強盗に襲われ、マネージャーと5人のアルバイトの高校生が射殺される事件が起きる。当時、そこでアルバイトをしていた高校生Wyatt は独りだけ生き残る。何故、自分だけが殺されなかったのか?仲良しだった仲間の高校生が殺され、自分だけが生き残ったことに言い知れぬ罪悪感を男は抱く。彼は、他の州に移り住み、この出来事を忘れようとした。
しかし今、ラスベガスで探偵業を営む男は、上得意である客の依頼を受け、Oklahoma に戻るはめになる。20数年ぶりに町に戻った男は、昔と変わらぬ町並みや建物を眺めるうちに彼を苦しめている過去の記憶が甦る。何故、自分だけが殺されなかった?男は、やむにやまれぬ衝動にかられ、この謎を解明すべく調査を開始する。

過去を忘れずに生きようとする女がいる。
26年前の祭りの夜、一ヶ月前の映画館での惨劇の後、母親は12歳のJulianna が一人で外出することを許さず、5歳上の姉が同行することを条件に州が主催する祭りに行くことを許す。そして、その祭りの会場で、12才になる彼女 を独り残して、姉 は15分で戻ると言って、何処へともなく去っていき、そのまま行方不明になる。皮肉屋だけど妹思いの姉が自分を置いてきぼりにすることはあり得ないと信じて、以来、26年間、彼女 は姉の行方を探し続けていた。
そして、今、彼女は最有力容疑者だった祭りの売店にいた男Crowleyが町に戻っていることを知る。Juliannaは、姉は彼女を残して彼に会いに行ったと思っていた。姉の事件を担当している刑事から犯罪常習者である彼に近づくなと言う忠告を無視して、彼女は、彼に会いに行く決心をする。男はアリバイが認められ、姉については何も知らないと刑事に話していたが、彼女は男が姉に関する手がかりを知っていると推測していた。

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ある意味で、何とも不思議な展開。こういうミステリーもあるんだ?というのが率直な感想。僕には予想外だった。

Wyatt(男)は探偵という能力を生かし、証言、証拠資料に疑問点を見つけると、その点を徹底的に調査し、その調査の過程で更なる疑問点を見つけるという手法で徐々に真相に迫っていく。現在の事件を含め、謎の解明の仕方が見事だった。
Julianna(女)も、は何度も何度も、当時の捜査資料を精査し、どこかに捜査漏れがないか調べ、26年経った今も、姉の事件を担当している刑事と会い、気付いた点を捜査してもらうよう提言する。姉に関する情報を得るためなら、たとえ、全財産を失っても良いと考えているところに彼女の意思の強さを感じる。

ふたりのキャラも魅力的。たびたび出て来る過去の思い出の感傷にひたるシーンは、そこで人生を終えた人々と今も生きている彼らとの対比でしんみりさせてくれる。そして、Arielという若い女性、天涯孤独で、子宮がんの可能性が高いにもかかわらず陽気で楽観的にふるまいながらJuliannaにつきまとってくる。看護師であるJuliannaが過去と決別して、今を生きようと決心する大きなきっかけを与える、最後に、彼女とArielが語るシーンは良かった。

E-book(Kindle版) ★★★★ 2015年2月出版 454ページ 231円(2016年5月購入)


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