気軽に洋書ミステリー

家にいてもすることがないおじさんは考えました。このままではボケる。そうだ!好きなミステリーを英語で読もう!英語力???

Invisible City by Julia Dahl

2016-01-11 16:08:24 | 読書感想

フロリダの大学のジャーナリスト学科を卒業したRebekah Robertsは、世界の中心地New Yorkの一流紙の記者となり名声を得ることを夢見ていた。しかし、応募が殺到する一流紙の新聞記者となるのは容易ではなく、彼女は、タブロイド紙New York Tribuneの非正規の記者となり、毎朝、編集デスクからその日の取材対象を指示される遊軍記者となる。

そして 厳寒の一月の金曜日、彼女は編集デスクからBrooklynのスクラップ置き場で全裸の女性の死体が発見されたので取材に向かうよう指示される。
現場に着いた彼女は殺された女性がユダヤ教の厳格な規律に従うHasidicであることを知り胸騒ぎを覚える。
彼女の母親もHasdicで、彼女が生まれてまもなくフロリダに住む彼女と彼女の父親を見捨てて、New YorkのBrooklynのユダヤ人地区に移り住んでいた。彼女が New Yorkに職を求めた理由のひとつは、母親がBrooklynに住んでいることも関係していた。

取材を始めた彼女は 警察とHasdicとの奇妙な関係に戸惑う。彼女は、殺された女性の死体が死因の特定に必須である検死を行うことなく、現場に駆けつけたHasdicの男達に引き渡される場面に遭遇する。警察は真剣に事件を捜査する気があるのか?彼女は疑問を感じる
やがて、彼女は殺された女性がスクラップ置き場のオーナーAron Mondelssohnの妻Rivka であることを突き止め、さらなる情報を得るためにHasdicが住むユダヤ人居住区Borough Parkに向かう。そこは 新聞もTVも見ることを許さない世間とは隔絶したInvisible Cityであった。そして、そこは彼女の母親が生活している町でもある。彼らは自分達に起きた出来事は自分達で解決する自治権を主張し、部外者の介入を好まなかった。

Rivkaの自宅前で聞き込みを行おうとした彼女は、彼らに拒絶され取材は困難をきわめる。しかし、粘り強く取材を続けた彼女は、彼女もユダヤ人であることを知った数人から殺されたRivkaの人物像を得ていく。また、彼女は、そこで思いがけなく彼女の母親を知っているというユダヤ人の警官Saul Katzに出会う。彼は NYPDは捜査に消極的で、このままでは Rivkaの死の真相はあいまいなままに終わってしまうと言い、警察の捜査にプレッシャーをかけるため、事件を記事にして欲しいと話す。彼は 密かに、Rivkaの死体を彼女に見せ死因は殴打によるものだと教えるなど、他の誰も知らない情報を彼女に与えていく。

彼女は、スクープの予感に緊張する、今までは、デスクの指示で事件を取材しているだけで、一つの事件を追及し続けることはなかった。
Rebekahは、何時間も人々の前に無惨な姿をさらしていたRivkaの無念を想い、また、Rivkaのことを調査していくことは、同じHasdicだった母親のことを知ることになると考え、独自に取材していくことを決心する。

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ミステリーというよりは、Hasdicという閉鎖された社会に対する好奇心とRebekahのキャラで読ませる作品だと思う。また、Rebekahの取材を通して見えてくるRivkaの生き様、不合理と思われる戒律から抜け出そうともがき苦しむ彼女の様子がよく描かれている。

2015年のMWA新人賞と Mary Higgins Clark Awardsの最終候補作になったにも関わらず賞を逃したのは、おそらくミステリー色が、いまいち、薄かったため?。ただ、SHAMUS AWARDSのBEST FIRST P.I. NOVELを獲得している。たしかに Rebekahの粘り強く取材を続けるキャラは探偵としてとても魅力的。

 

また、作者が記者だという経験から描かれていると思われる取材の実態の様子。取材するのは記者、記事を書くのはエデェターという分担。なかなか事件の関係者からコメントを取れない点など、ワイドショーのレポーターが事件の関係者から情報を聞き出そうとマイクを突きつける姿を思い浮かべながらとても興味深く読めた。

 

 Kindle版 ★★★★ 298ページ


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