気軽に洋書ミステリー

家にいてもすることがないおじさんは考えました。このままではボケる。そうだ!好きなミステリーを英語で読もう!英語力???

Lost ( Like This For Ever(UK版))  by S.J.Bolton

2014-02-23 09:59:43 | 読書感想

Lostは『Like This For Ever(UK版)』のUS版です。

雨が降り続く冬のロンドン、10歳から11歳の少年が誘拐され殺される事件が相次いで4件起こり、世間は騒然となる。
4件とも同一犯によるものと思われた。少年達は頸動脈を切り裂かされて殺されており、大量の出血により体内にほとんど血が残っていなかった。また、いずれの死体もテームズ川の岸辺に遺棄されていた。

警察が犯人についての手がかりを発表できない中、マスコミは精神分析医Bartholomew Huntの「犯人は子供達の血を求めて彼らを誘拐しているドラキュラのような男である」という主張を大々的に報道し世間はドラキュラの話題で騒然となる。

捜査を指揮することになったDana Tullon警部は犠牲になった少年たちが性的暴行や暴力を振るわれた痕跡がないこと、また現場に残されていた犯人の靴のサイズが大人の男にしては小さいことなどから犯人は女性ではないかと推理する。また、少年たちが誘拐されたとき、近所の人々が叫び声を聞いていないことから 少年たちが信頼してついていく人物として犯人は女性警察官であるという可能性を考え、彼女は、かって自分の下で働いて、現在病気休暇中のLacey Flintを容疑者のひとりとして疑っていた。

Laceyは前の事件の時に受けた精神的ダメージから立ち直ることができず、休職して精神科医の治療を受けていた。しかし、回復する見通しはなく、彼女は精神的苦痛を和らげる手段として、定期的に手首をカットして血の臭いを嗅ぎ味わうことによって精神的安らぎを得ていた。
じっとしていると心の中に徐々に広がってくる精神的苦痛を免れるため自傷行為を繰り返すと考えたLaceyは、肉体を酷使することによって、その悪習を断ち切ろうと考え、昼はランニングやフィットネスクラブに通い、夜は散歩に出かけ、ヘトヘトになるまで体を動かし続けていた。
ある夜、彼女は隣に住むBarneyという少年が閉鎖された空きビルに忍び込んで仲間の少年たちと遊んでいるのを発見する。
彼を自宅に送り届けたLaceyは、父親の残業のため彼が一人で自宅にいる夜があることを知る。
この地域で起きている少年の拉致殺人事件に彼が巻き込まれることを危惧したLaceyは緊急の際は連絡するように自分の電話番号を彼に教える。

11歳のBarneyは 父親に秘密でしていることが二つあった。一つは彼が4歳の時に行方知れずになった母親の行方を探していること。彼は新聞配達して稼いだ金で、新聞の尋ね人の欄に母親宛の広告を出していた。もう一つは、今、マスコミを騒がしている少年拉致殺人事件の情報を逐一集めて自分なりに犯人像を推理しようとしていること。それらの情報の中でも特に彼は、この事件を扱ったFacebookのサイト「Missing Boys」に頻繁にアクセスし、警察しか知られていない情報を書き込んでいるPeter Sweepという男の投稿に注目していた。そして、彼はこれらの情報を分析した結果、まだ、誰もが気づいていない事実、犯行は火曜と金曜日に起きていることを発見する。

そんな中、Twitterで犠牲者のひとりRyan Jacksonの死体が遺棄されていた場所でRyanの幽霊を見たという投稿があるのを見て、Barneyたちは好奇心にかられて、夜、親に内緒で4件の殺人現場の探検にいく。そしてそこで彼らは思いも寄らぬ事態に遭遇する。窮地に陥ったBarneyはLaceyのことを思い出す。

自分の関わった事件の裁判が終わったら警察官を辞める決意をしていたLaceyだがBarneyの電話によって深く眠っていた警察官としての本能が甦ってくる。

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物語冒頭、いきなりヒロインLaceyが自分をナイフで切り裂くこと、そこから流れ出る血を見ると精神に安らぎを覚えると精神科医に告白する。タイトルにLacey Flint Novelとあったが このLaceyという女性は殺人犯?それとも精神異常者かと 最初から物語に引きつけられてしまった。


プロットがうまい!次々と容疑者が出てくる。ある人物が犯人であると思わせる事実を次々と述べていく。こちらがそうでないと思っていた人物が、もしかしたら犯人?とだんだん不安になってくる。著者の思うとおりにストーリーに導かれ、著者の意図とおりにハラハラさせられ、思わぬ結末に衝撃を受けた。ただ、よく読めば手がかりがうまく散りばめられていて犯人を特定できる。しかし、私は最後までわからなかった。犯人を推理しながら読むことをお勧めします。

Barneyという少年の母を思う気持ちがいじらしい。幼い頃に家を出ていった母親に帰ってきてもらおうと、新聞の尋ね人の欄に広告を出し続ける。他の母子の触れあいを見て自分の母親も同じような優しい人であって欲しいと思ったり、屋根裏部屋で古いアルバムを探し、その中に母親の写真がないか探したり、、と母を慕う気持ちが切々と伝わってくる。一方で子供とは思えない観察力、分析力で連続殺人犯の行動を推理してみたり、少年探偵としても魅力十分。母親をLostしたBarneyと未来をLostしたLaceyの交流は微笑ましいようでもあるし労りあっているようにも見える。

この物語はシリーズの3作目のようで前2作を読んでいないので分からない部分が出てくる
自傷行為をする理由。刑事と犯罪者という関係よりはむしろ友人のように思える収監者(シリアルキラー?)との関係。
でも なんか辛い物語のようであまり読む気が起きない。次作は読むつもり。

★★★★ Kindle版米国版 391ぺーじ1426円 
???UK版 『Like this For ever』は512ページ?値段も897円こちらのほうが安い!違いは何なのだろう?

 


City of Fire  by Robert  Ellis

2014-02-09 13:11:19 | 読書感想

ロサンジェルス、4月の木曜日、深夜、閑静な住宅街でNikki Brantと言う名の若い女性が殺される。犯人は彼女をレイプしたうえナイフで刺し殺し、彼女の足の指を切断して持ち去っていた。

2ヶ月前にLAPDのRHD(Robbery Homicide Division)に移動して、初めて捜査主任に指名されたLenaは部屋一面が血しぶきで深紅に彩られた殺害現場に慄然としながらも、冷静に現場を観察し、犯人の体液がPCのある机まで点々と続いているのを発見する。犯人はNikkiを殺害した後、すぐに立ち去らず被害者宅のPCを使用して2時間近くネットサーフィンしていた。また、現場には第三者が侵入した形跡がないことや、殺害に使用した凶器はキッチンにあるナイフであることが分かる。このような状況からLenaたち刑事は第一発見者の夫Jamesを容疑者として考え 彼のアリバイの有無の捜査を開始する。
そして、夫にアリバイがないこと、二人が年中口論していたことがわかる。

署内で本格的に尋問を開始したLenaに対してJamesは弁護士の立ち会いを要求し、さらに弁護士を通して彼を嘘発見器にかけることを要求する。普通は拒否する嘘発見器のテストに容疑者が積極的なことにLenaは不安を感じるが、テストの結果はJamesが犯人であることを示唆していた。Lenaをはじめ刑事たちはJamesの犯行と確信していたが 決定的証拠となる現場に残された体液のDNA鑑定結果がまだ出ていないことから弁護士の主張によりJamesの帰宅を認める。

翌日、あまりに異常な殺害方法とJamesを結びつけることに一抹の不安を感じたLenaは、見落としがないか、再度、殺人現場の検証に赴く。
そこで、彼女は台所に置かれていた殺人当日の新聞のクロスワード欄に書き込みがあるのを発見する。クロスワードの書き込みはその日以外の新聞には行われておらず、しかも筆跡はJamesともNikkiとも異なっていた。
その瞬間、LenaはRHDに移籍してからの最初に担当したレイプ殺人事件、Teresa Lopezの事件との関連性に気づく。Teresaは自宅のベッドで殺されていたがベッドの脇にはクロスワード欄に書き込みがある新聞が置かれていた、そしてベッドわきに置かれていたラジカセにはベートーベンの交響曲6番のCDがセットされていた。すぐにNikkiの自宅にあったラジカセを調べたLenaは交響曲7番がセットされているのを発見する。Teresaの事件は夫が自白して捜査は終了していたがLenaは上司のBarreraに二つの事件は同じ犯人の犯行であるとしてTeresaの事件についても再捜査を主張する。
 
それぞれの殺人の現場に交響曲6番、7番とCDが置かれていたことから,犯人はこの犯行の前に、5件のレイプ殺人事件が起こしている可能性があり、LenaはRHDのデータベースで調べたが該当する事件はゼロだった。
また、クロスワードに書き込まれた文字を筆跡鑑定した結果、犯人は左利きであり、Pという字に独特の書き癖があるのが分かり、Jamesの犯人である可能性はなくなる。

翌朝、急遽開かれた捜査会議で プロファイラーBernhardtはコードネームRomeoと名付けた犯人は、現場に証拠となる体液を平然と残していることから自分が捕まらないことに絶対の自信を持っている傲慢な男で、レイプから殺人へと犯行をエスカレートしていると犯人像を分析する。しかし、何故Romeoが犯行後現場に留まり2時間もインターネットを利用していたかは不明だった。
LenaはRomeoが使用したパソコンを署内の専門家に分析してもらい、Romeoはインターネットの会員制ポルノサイトにアクセスしていたことが分かる。そして、サイトの運営者Charles Burellからその会員の名前を聞き出すが、Romeoが使用した名前は彼が盗んだクレジットカードの名前を使用したものだった。

手がかりが全くないまま、Romeoはレイプから殺人へと犯行をエスカレートしていったというプロファイラーの指摘に基づいて、Lenaたちはここ2年内に起きたレイプ犯罪をデータベースから洗い出し、数百にものぼる事案を、それぞれ分けあって調査する。 Lenaはその中の3件がRomeoの手口と似ていることに気づく。それぞれの事件は10月、12月、1月と起きており、今回の2件の殺人が3月、4月、10月を交響曲一番とすれば3月、4月が6番、7番となる。Lenaはこれら事件の地図上の位置関係を調べ、それらの事件がVenice Beachから2マイル以内で起きていることを発見し、Romeoがこの地域に住んでいると推測する。
そして、その地域にRomeoにクレジットカードを盗まれた若い女性がいることを知り、Lenaは、彼女が次に狙われるのではないかと危惧する。

そんな中、パートナーのNovakから電話があり、LenaはRomeoによる新たな犯行があったことを知る。

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ちょっとえげつない描写の箇所があって公衆の場では読みたくないが、Lenaのキャラクターがとても魅力的でおもしろく読めた。
彼女の捜査能力も抜群。地道にこつこつと捜査資料を調べ、ほかの刑事が見落とした手がかりを発見していく。
被害者のそばに置かれた新聞のクロスワード欄の書き込みを記憶に留める観察力、手がかりを求めて何度も現場に出向く根気、その努力から、先ず犯人の特徴を導き出し、次に犯人の行動範囲をと徐々に犯人に迫っていく。
また、たとえ上司の命令でも自分の信念に反することは断固拒否する。
正統派の刑事物として物語を追っていける。

このヒロインの物語は前に書かれた作品があるのか。同僚の刑事との関係、以前何があったのかが気になってしょうがない。

ちょっと欲張りすぎかなとは思うのだけど、5年前に殺された最愛の弟の事件がからんできて予想もつかない展開、結末に驚かされた。

★★★★
Kindle版 483ページ