気軽に洋書ミステリー

家にいてもすることがないおじさんは考えました。このままではボケる。そうだ!好きなミステリーを英語で読もう!英語力???

Exit Strategy by Kelley Armstrong

2016-02-28 10:14:37 | 読書感想

32才になる元警官のNadia Stafford はカナダ,オンタリオ州トロント郊外の湖畔でロッジを経営している。しかし、その裏では、ロッジ経営の赤字を補填するために殺し屋として、アメリカのマフィアからの殺しの依頼を受けていた。

何時ものようにマフィアから殺しの依頼を受けた彼女は、ニューヨークで彼らの縄張りを荒らしている男を毒殺する。報酬を受け取っての帰途、彼女はラジオニュースから、警察は彼女が犯した殺人事件を、ここ数週間、アメリカ各州にまたがって4件の殺人を繰り返しているシリアルキラーの犯行と見ていることを知る。この男は犯行後、カルト的殺人者Charles Nansonの伝記本、Helter-Skelter の小説本の1ページを犠牲者の傍らに置いていくことからHelter-Skelter Killer(HSK) とマスコミから呼ばれていた。

彼女は自分の犯行がHSKの犯行と思われていることに戸惑う。それは捜査の主体が組織の規模も人員も地方警察の数倍の規模を持つFBIが彼女の犯行を捜査することを意味する。彼女は現場に何の手がかりも残さなかったことに自信を持っていたが、何がHSKの殺人と彼女の犯行とを結びつけたのかマスコミやネットを通じてHSKの情報を調べようとする。

そんな中、彼女に殺し屋としてのテクニックや心構えを教えてくれた凄腕の殺し屋Jackが、HSKに対するFBIの捜査情報をもって会いに来る。FBIは、何れの殺人現場にも手掛かりとなる証拠物件が残っていないことから、HSKの正体は単なる連続殺人犯人ではなくプロの殺し屋ではないかと考えていた。そして、彼らがプロの殺し屋としてマークしていた殺し屋たちをさしたる証拠もなしに勾留し始めていると、Jackは彼女に話す。また殺し屋たちはいつ自分も逮捕されるかもしれないとパニックになっていて、殺しの依頼を受けられない状況になっているとも。Jack は我々の誰かが、一刻も早くHSKの正体を突き止め、彼の犯行を阻止する必要があると主張し、元警官である彼女に協力を要請する。

彼女はこの仕事を長く続ける気はなかった。自分の存在が他の殺し屋たちに知られることは彼女にとって最悪の事態であると思い、彼女は、いったんはJackの要請を拒否する。しかし、殺人事件、犠牲者、捜査の手がかりがないというのを聞くと、彼女は、警察官として凶悪犯を逮捕することに全力をあげていたことを思い出して平静でいられなくなる。そして、彼女は、他の犠牲者が出る前にHSKを探し出すができれば、20年前に姉をレイプ殺人犯から守れなかったことへの彼女の悔恨の情への癒しとなることを期待して、Jackの要請に応える決断をする。しかしそれは、殺し屋という社会の裏側に存在する闇社会、自分以外、誰も信じることも頼ることもできない危険な世界に、より深く、彼女が踏み込んでいくことを意味していた。

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殺し屋が自分たちの商売に邪魔になっている殺人犯を、下手すると自分たちも逮捕されるという危険を冒して、捜査当局に代わって捜査するという発想が面白くて楽しく読めた。

ストーリーの展開はスロー、なかなか手掛かりが得られないが、クライマックスはかなり盛り上がり、ワクワクドキドキさせてくれる。

ヒロインのキャラは魅力的だ。常に主体的に行動する。何か決断するときは最終的には自分で判断する。たとえ、Jack の意向に逆らっても。また腕力もありそうだ。

exit strategyというタイトルから、彼女がこのまま殺し屋稼業を続けるのではなく、この事件をきっかけに探偵にでもなるのかと思って読んでいたが....TVドラマの必殺仕事人のようなものになりそうだ。
殺し屋たちが人殺しを商売としているように見えず、ごく普通の市民のように見える。暗さがない、Jackをのぞいて。Jack 以外の殺し屋とは知り合いになりたくないと思っていた彼女も次第に彼らに心を開いていく。ただ、闇の世界に生きる殺し屋たち、彼らが彼女に見せる好意的な態度が本物かどうか、裏があるのではないか?何時かどんでん返しがあるのではないかと読んでる僕をドキドキさせる。

ただ、犯人の動機、目的がいまいちわからなかった。そんなことをしても目的を達成できるとは思えなかった。

電子書籍(Kindle版) ★★★★ 480ページ 934円 2007年6月 出版


Moonlight Weeps by Vincent Zandri

2016-02-21 09:32:34 | 読書感想

The Shamus Award by PWA(Private Eye Writers of America) Best P.I. Original Paperback部門  2015年受賞作品

俺、Dick Moonlightは拳銃で自殺しようとして失敗し、その銃弾が脳に止まり、何時死んでもおかしくないと医者に言われている。人々から気違いじみたやつ(head case)と呼ばれる俺は探偵を生業としている。

そして、今日、俺は一文にもならないと分かった調査の報告を依頼人にしている時、死んだはずの俺の最愛の恋人Lolaにうり二つの女性が目の前を通り過ぎていくのを見て衝撃を受ける。数ヶ月前、俺は彼女が息を引き取ったのを見て路上に彼女を放置してその場を去った、彼女の死んだという事実からできるだけ遠ざかるため。
俺は、彼女を失った絶望感の深さから、Lolaについては思い出さないように努力していて、彼女の葬儀が行われたかどうかも知らなかった。
Lolaが生きている可能性はあるのか?彼女の後を尾行して彼女がLolaであるか確認したいという欲求が俺の心を騒がせる。しかし、別人だと分かったときの落胆と今以上の絶望感を思い、俺は、確実に報酬を払ってくれる依頼人の下に自家用に使っている父親が残してくれた霊柩車で向かう。

俺を待っていたのは高級なスーツを着た脳外科医Schroder。酒とパーティー好きな彼は飲酒運転で運転免許を取り上げられていた。彼は、免許停止が解かれるまでの間、運転手兼ボディーガードとして俺を雇いたいと話す。報酬は一日300ドルプラス経費、金欠気味の俺にとって悪くない仕事だ。俺は彼に、俺は脳には障害があり、運転中に気を失う可能性があることを話すが彼は気にしないと言い、俺は仕事を引き受ける。

俺が与えられた最初の仕事は、女子学生にレイプされたと訴えられ、停学処分になった彼の馬鹿息子Stephenを学校に迎えに行くことだった。未成年であるにもかかわらずビールとタバコを要求する馬鹿息子、息子の停学処分を気にもせず、その要求に応えてビールとタバコを用意するSchroderの親馬鹿ぶりに俺は唖然とする。

そして、その馬鹿息子がレイプと殺人で警察に逮捕されたことで俺は探偵として雇われることになる。彼は自宅で開いたパーティーにやってきた女子学生をレイプし、その場面を写真に撮りネットに公開した。レイプされたと訴えている女子学生は、それを苦にして自宅の地下室で首を吊って自殺していた。警察は自殺は写真投稿に因るものものだとしてレイプばかりでなく殺人容疑(reckless murder)で彼を逮捕していた。
Schroderは息子はレイプなどしていないと断言し、息子の無実を突き止めてほしいと俺に調査を依頼する。

俺は銃弾が脳にあるために いつ死んでもおかしくない状況にある。そのため俺は依頼人の利益よりも何が正義であるかに留意して調査を行う、あの世で神に祝福してもらうために。
Stephenは女子学生をレイプしてその写真をネットに投稿したのは事実か?Schroderは、彼らを監督することなく息子のために自宅でパーティーを開き、未成年者の彼らにアルコールをふるまったのは事実か?そしてみずからも酔っ払い運転で捕まったのは事実か?もし それが事実ならそれは正義ではない。またそれが事実でないならば警察が逮捕したのは正義に反する。
そして、警察が女子学生が自殺であるのが明白であるにもかかわらずStephenを殺人罪で逮捕するのは正義に反する。

俺は事件当夜なにが起こったのか、真実を突き止めるべくSchroder父子はもちろん当時現場にいた人間から事情聴取を始める。そして、警察がなぜ、Reckless Murderという不可解な理由で彼を逮捕したのか、警察は明らかに彼らに対し遺恨を持っているように見える。警察と彼ら父子にどんな対立関係があるのか、俺は視野を広げて事件を調べることを決意する。

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各章が短く、コミックのカット割りの描写ように場面転換が早い。なかなか読み易い。
プロットもうまく捻ってあって、Moonlightの推理も聞き込みをするたびに軸が揺れ、事件の真相がなかなかわからない。そのまま、最後のクライマックスに突入、どういう風に終わるのかとわくわくドキドキさせるが、僕としては、違う結末を期待していたので、ちょと期待はずれな終わり方だった。

キャラはなかなか魅力的、脳の中に手術不可能な銃弾があり、何時その銃弾が脳に衝撃を与え死ぬかわからない。しかし、彼はその事実を達観している。昔の探偵小説コミックを読んでいるような錯覚を覚える。今は亡き(?)恋人を想い続け、酒を浴びるほど飲み、たばこをくゆらしながら事件の調査を行う。運転する車は葬儀屋だった父親が彼に残した霊柩車。依頼人の利益を考えず、常に何が正義かを考えて行動する。

Kindle版 ★★★★ 235ページ 2014年8月出版 480円プライム会員なら無料


Armed and Fabulous by Camilla Chafer

2016-02-14 12:15:20 | 読書感想

アラバマ州のMontgomery市にあるGreen Hand損害保険会社の非正規従業員として働くLexi Gravesは上司の要求する保険に関する法律や資料を調べる仕事をしている。仕事は単調退屈で、彼女は素早く上司に提出する調査レポートを作成しては、就業時間の残りは、密かにネットサーフィンで買い物などをして過ごしている。たまに 上司で超イケメンのAdam Maddoxのプリンターに誤って買い物した商品の内容(下着)を送って慌てたりするが。

そんなある日、調査資料の作成に熱中するあまり残業になってしまった彼女は、残業代が稼げたと喜びながら、人気のない社内を依頼された資料を届けに副社長のMartin Deanの部屋に行く。そこで彼女は、銃で撃たれた彼の死体を発見する。呆然としていた彼女は殺人犯と思われる男の足音が近づいててくるのを聞き、慌ててクローゼットに隠れるが、そこにはAdamが隠れているのを見てパニックになる。

ふたりは、男たちの隙を見て、その場を抜け出す。そして彼女は、Adamが数百万ドルの保険詐欺を捜査している潜入捜査官であることを知る。Adamは彼女にDeanが容疑者であったこと、殺人犯はDeanから彼女が作成した資料を欲していたと話し、心当たりがないか問う、また社内に詐欺に関係している者が他にいると云い、彼女に同僚の中に疑わしい行為をしている者がいるか密かに調べるよう捜査協力を要請する。

Lexiは、シリーズ全作品を見たジェームズボンドのように自分がスーパー シークレットエージェントになった気分になり、興奮する。そして、秘密にするようにAdamから忠告されていたにもかかわらず、つい、親友のLilyにすべてを話してしまう。

そして、LexiとLilyのふたりはゲーム感覚で独自にDeanの身元を調べ始める。Lexiが第2の犠牲者を発見、これが遊びではなく現実の殺人事件であることに気づき、恐怖におびえるまでは。

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重めのミステリーを読んだ後は、こういう軽めのミステリーを読むと気分が楽しくなる。決して死体が出てこないと言うのではないけど、散々、死体が無惨に切り刻まれていたというミステリーを読んでいた僕には気軽に読んでいける。

プロットがいまいち。内定捜査を始めているなら、その根拠となる資料や証拠を掘り下げて捜査が進むと思っていたら、結局、Lexiの身勝手な行動(?)、推理によってだけ捜査が進展していく。肉体的には魅力的な二人の捜査官、もうちょっと捜査能力のような知的な魅力も必要だと思うのだけど。

Lexiの語り口がすごく心地よく、どんどんストーリーに引き込まれていく。退屈な事務仕事に飽きていたLexiが、まるでスパイ映画のヒロインのように、潜入捜査のメンバーとなって(?)、無邪気にわくわく、興奮する様子が彼女のナレーションから伝わってきて、読んでいる方もわくわくしてくる。超魅力的なAdamとの潜入捜査という響きに引かれた軽薄なキャラかと思っていると、Adamが、彼が言うとおり、本当に警察官であるか、警官である兄にそれとなく確認したりして意外としっかりしている。

Lexiが二人の魅力的な男と出会い、どちらとも決めかねずに両方に恋心を抱いてしまう。ちょっと、他の作者のシリーズの設定と似ているところもあるがこういう設定はロマンスミステリーの定番として気にしないことにしよう。


Lexi Graves
29歳、 Alabama州 Montgomery市在住
好奇心は人一倍あるが、超臆病。犯人捜しに夢中になっているにもかかわらず、何かあると、すぐに怯えたり悲鳴をあげたり・・
死体を見ても冷静に状況を判断する。自分の指紋を現場から消去したり、死体を調べたり・・・
スマート⇒与えられた仕事を上司が想定したよりも短時間でこなす。また調査能力も抜群。
要領がいい⇒地下室に資料を調べに行くと言ってスターバックで時間を過ごす。

Kindle版  ★★★ 300ページ 2012年5月 出版 300円


A Faint Cold Fear by Karin Slaughter

2016-02-07 09:49:15 | 読書感想

日曜日、小児科医と検視医を兼務するSara Lintonは妊娠中の妹Tessaと買い物を楽しんでいるとき、元夫で警察署長であるJeffrey Tolliverから検視の要請を受ける。
SaraはTessaを連れて、死体があるという大学の敷地の河川敷に車で向かう。大学のセキュリティ責任者のChuck Gainesによって、死体は学生のAndy Rosenだと判明したが、彼は橋の上から飛び降り自殺したと、Saraは結論づける。自殺にしては不自然な傷が彼の背中についていることに疑念を持ち、最終的な結論は解剖を待ってと言いながら。

検視を終え、車に戻ったSaraは、妹のTessaがいないことを知る。Tessaを探しに行ったSaraは何者かに刺されて血だまりの中に倒れている彼女を見つける。たとえ、Tessaが頼み込んだったことだとしても、彼女を犯罪現場に連れてきたことで起きた惨事にSaraは自責の念にかられる。Saraは瀕死の状態の妹が助かることを神に祈りながら救急ヘリで彼女とともに病院に向かう。

JefferyはAndyの手首に自殺しようとした痕跡があることや遺書も発見されたことから彼は自殺した可能性が高いと考える。しかし、すぐ近くでTessaが何者かによって襲撃されたことやTessaが襲われた現場付近でAndyが身に着けていたネックレスが発見されたことなどから、JeffreyはTessaを襲撃した犯人がAndyを自殺に見せて殺した可能性も考慮に入れて捜査を指揮することを決心する。

また彼は元部下だった刑事のLenaがTessaを襲撃した犯人を追跡したにもかかわらず、犯人の特徴や服装を供述しなかったことに、彼女が何かを隠している?という疑惑を持つ。

そして翌日、また、大学生が自殺する出来事が起こる。現場を検証したJeffreyは 、自殺というには不審な点があるのを発見する。Jeffreyからこのことを聞いたSaraは、自殺か殺人か見極めるために二人の司法解剖を自ら行うことを決心する。

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一年前の事件から立ち直れないLenaの行動に終始やきもきしながら読み終わった。会う人々、皆に敵対的行動をとるLena。Lenaの活躍を期待していた僕にはがっかりな彼女の態度、行動だった。

つぎつぎと犠牲者が出て飽きることなく物語に引き込まれていくが、犯人が分かる過程、謎解きがいまいち説明不足で不満。

SaraとLena、二人の女性のキャラが前作(Blindsighted)と比べるとひ弱になっている。犯罪捜査にあたる女性なのだから容疑者や大男にあってもビクつくことなく対応できることを期待していたのだが。 

前作の感想で家族の絆の強さが清涼剤と書いたが、今回はその家族の絆の強さがピンチ。爽やかな部分が無くなって、読んでいくうちに、すごく重苦しい気分になってしまう。

SaraとJeffreyの関係も、仲がいいと思うと急に関係が悪化したり、また親密になったりの繰り返しが延々とつづられていって、ミステリーというよりロマンス小説?と思ってしまう。

 Kindle版  ★★ 343ページ 255円 2004年7月 出版