気軽に洋書ミステリー

家にいてもすることがないおじさんは考えました。このままではボケる。そうだ!好きなミステリーを英語で読もう!英語力???

Moment of Truth by Lisa Scottoline

2014-09-21 11:31:08 | 読書感想

フィラデルフィアの巨大法律事務所のパートナーJack Newlinは娘のPaigeから母親のHonarと重大な話し合いをするのでその場に立ち会って欲しいと頼まれる。しかし、帰り際、同僚に仕事の件で相談を受け約束の時間に遅れてしまう。急いで帰宅した彼は、そこで妻の無惨な死体に遭遇する。そして、居るはずのPaigeの姿が見えないことから 彼は瞬時に妻を殺したのは娘のPaigeだと察知し自分が身代わりとなって自首することを決断する。彼は現場に残されていた凶器のナイフに自分の指紋を付け、着ている服に妻の血を付けるなど、警察に彼が犯人であると確信させるように工作してから警察に電話する。

彼の尋問を担当したReginald Brinkleyは無駄話を嫌い、せっかちに殺人の供述をしたいと繰り返すJackの態度、尋問への受け答えに違和感を抱く。
そんな刑事の態度に、自分が犯罪者にふさわしい態度を取っていないと感じたJackは 弁護士を要らないと言った前言を翻し弁護士の立ち会いを要求する。

その電話がかかってきたとき、法律事務所「Rosato & Associates」のアソシエイトMary Dinunzioは、今日終わった裁判の後味の悪さに落ち込み、自分は弁護士に向いていないと同僚のJudyに愚痴を言っていた。すでに業務時間を終了しているとMaryは電話を無視しようとするが、Judyにせかされ電話に出た彼女は殺人事件の容疑者Jackから弁護の依頼を受ける。

依頼人のJackに会ったMaryは自分は主任弁護士として殺人事件を扱った経験がなく力不足であると依頼を辞退しようとする。しかし、Jackは彼女の正直な態度に好感を持ち、自分は有罪を認める答弁をし、司法取引を求めるつもりだから、そう難しい事例にはならないと言いMaryを説得する。

MaryはJackがすでに刑事たちに自白し、刑に服するつもりでいることにショックを受けるが、先ずはJackの要請を受け娘のPaigeに、母親が殺され、父親が警察に拘留されている状況を伝えるために会いに行く。
Maryは彼女の部屋で彼女と恋人が映っている写真を見つけ彼とロビーですれ違ったことを思い出す。しかし、Paigeに聞くと彼は今夜来なかったと否定する。なぜ、否定するのか?さらに、彼女は今夜、母親と会う予定だったが行かなかったと話す。もしかしたらPaigeは母親に会いに行ったのでは?Jackと話したときの彼の娘への異常な気遣いと併せてMaryは彼女に疑念を抱く。

翌朝、MaryはJackに会い、一夜漬けで勉強した法律や判例などを参考に立てた弁護戦略を述べる。まず、犯行時彼は酒を飲んで酔っていたことを挙げ、自白していたときも酔っていた可能性があり酔っているときの自白は証拠にならないと話し、自白の削除を裁判で求めると。しかし、彼はそんなことはやめるよう強く要求する。自分の裁判で有利になることをやめようとする彼の態度にMaryは彼は娘をかばって罪をかぶろうとしていると確信する。

しかし、有罪であるのに無罪だと主張する依頼人を弁護することはよくあるが、無罪であるのに有罪だと主張する依頼人は初めてだった。Maryは娘を思う父親の気持ちを理解しながらも無実の人間を有罪にはできないと思い、依頼人の意志には反するが、事務所の調査員を助っ人にしてPaigeの身辺を徹底的に調査してJackの無実を証明しようとする。

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女性が書いたなぁと思わせる最後に心温まる作品。しかし、なかなか安心できない。Jackの無実がほとんど確実になって、ひと安心と思ったら、相手方の検事も仕事熱心、したたかで、父親に不利な証拠を発見、そう簡単には安心させてくれない。娘を守ろうとする父親、そんな父親に罪悪感を感じ、自首しようと考える娘、二人の家族愛に悩みながらも真実を追求するMary 。早とちりして失敗したりするが、とても好感が持てるキャラクター。

また、そのほかのキャラクターも魅力的。検事補のDavis、仕事の虫で犯罪者をこの世から無くすことが使命と考えている。朝早くから夜遅くまで、何度も何度も調書を検討しJackの有罪を確信し、それを立証すべく努力する姿は好ましい。そして警察の決定に反してでも自分の信念を貫いて捜査を外されるBrinkley刑事。
要領の良さでMaryを呆れさせる同僚のJudy、二人のやりとりは楽しい。


 ★★★★  Kindle版 398円 本の長さ 448ページ


Perish Twice by Robert B Parker

2014-09-14 13:16:14 | 読書感想


ボストンの私立探偵Sunny Randallは友人のSpikeの紹介でフェミニズムを広める団体の代表Mary Lou Goddardという女性に会う。

Maryは最近、誰かにストーカーされていると言い、さらに事務所の留守電に殺してやるという伝言があったりするのでボディガードとして彼女を雇いたいと言う。Maryは警察に話して私生活が公になるのは避けたいと言い、さらにフェミニズム運動を繰り広げている立場上、男には頼めないと話す。Sunnyは愛犬と男を毛嫌いする彼女の態度が気に入らなかったがSpikeの紹介もあり引き受けることにする。

Maryを車で送迎する仕事を始めたSunnyは彼女たちを尾行している車を発見する。Sunnyは車のナンバーから男の名前Lawrence B.Reevesと住所を突き止める。直ちに、彼女はLawrenceと会いストーカーの件で警告する。そして彼の態度からMaryはストーカーはLawrenceだと知っていたと確信する。

Sunnyは車でMaryを送る途中、ストーカーはLawrenceという男だと教え、知っている男かどうか訪ねるが彼女は知らないと答える。さらに一夜限りの男だったのでは?という問いにも自分はレスビアンだと云い否定する。また、Sunnyがこの男について調べるというと、これ以上男に関わるなと強い口調で命令する。

Maryの言葉に不信を抱いたSunnyは彼女を紹介したSpikeに会いに行き、Maryにはかなりの男性関係があると教えられる。フェミニズムを主張する団体の責任者である以上、公にされると立場がないほど。

そしてある朝、いつものようにMaryを事務所に送り帰途に就く途中、SunnyはMaryから緊急の電話を受ける。Maryの事務所に駆けつけたSunnyは顔に2発銃弾を受けて死亡している女性と対面する。歳恰好がMaryと似ていることから殺された女性GretchenはMaryと間違えられて殺された可能性が高かった。

Sunnyはこの事件を担当する刑事FarrelにLawrenceについて話そうとするがMaryに止められる。しかし、Sunnyは殺人事件であるから知っていることは警察に話すとMaryに云い、Maryは彼女を解雇する。
Maryはどうしてストーカーの名前を明かされるのを嫌うのか?どうしてLawrenceはMaryをストーカーしたのか?
SunnyはLawrenceの調査を始めることにし、彼のアリバイの有無を聞きに行くFarrelに同行する。LawrenceはGretchenの殺された時間にはBonnieという女性といた主張する。

Sunnyは1人でBonnieに会いに行きLawrenceのアリバイを確認する。そして、Bonnieは彼とMaryが知り合いだったと彼女に話す。

そんな中、FarrelからLawrenceが銃を口で咥えて自殺したと電話がある。その場には遺書も残されていた。遺書には殺し屋を雇ってMaryを殺そうとして誤って他人を殺したと書かれていた。警察は、彼の手や顔に硝煙反応があり他殺の可能性はないと断定して容疑者自殺として捜査を終了する。

SunnyはLawrenceが殺し屋を雇う方法を知っていたとは思えず、また彼は銃を使用して自殺するタイプには見えないと考え、Lawrenceを犯人に仕立てた真犯人がいると確信し、ひとり調査を続行する。

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終わり方がちょっと予想外。
ヒロインのSunny Randallをはじめ各キャラクターが魅力的。人を判断するのに一流大学出身かお金持ちかどうかで決める姉Elizabethや愛らしいしぐさをする愛犬Rosie、そしてSunnyに好感を持っている男たち。

特にSunnyは魅力的。 
◎非常に自立心が強い。しかし、必要があると思えば男たちに助力を求める。
Maryに何故警察官を辞めたのかと聞かれると、誰かのために働くのは嫌だったと答え、でも今は私のために働いているとMaryが言うのに対し、"I'm working for me."(Kindle位置Noよ637り)

◎自分の生き方に信念を持っている。自分の生き方に疑問を感じている友人のJulieが Sunnyの生き方を羨んで
" You know who you are. You know what you want,and it's what you shoud want." (Kindle位置No2072より)

 I Want to Know What Happened.とSunnyが言ったのに対し友人のSpikeは
 " It's one of your greatest charms .Nothing too elevated,like the search for truth,or a passion for justice.You'll hang in on a case...because you want to know what happened.(kindle 位置no3665より)

夫婦問題で悩む姉や友人の話に耳を傾けながらクールに解決策を提示する。その会話の内容、テンポが読むのに心地よい。

★★★★ Kindle版 ¥281円 本の長さ(ペーパーバック) 324ページ


 


The Litigators by John Grisham

2014-09-07 10:15:06 | 読書感想

シカゴのうらぶれた通りのうらぶれた建物に事務所を構える弁護士が二人だけのうらぶれた法律事務所「Finley&Figg」。扱う仕事は協議離婚、遺言書の作成などの家庭問題や交通事故の賠償請求。弁護士過剰と云われる中で仕事を得るために、救急車のサイレンを聞くと直ちに交通事故の現場に駆けつけ被害者の依頼を受けようとしたり、葬祭場を廻って金がありそうな遺族を探し廻る。そんな些細な仕事を続けて数十年、シニアパートナーのOscarは慰謝料が払えないためにできない妻との離婚と引退を考えながら仕事をし、ジュニアパートナーのWallyは企業の製造物責任を問う集団訴訟の新聞記事に目を奪われ、いつか自分もその訴訟に加わって巨額和解金の分配に預かることを夢見ていた。

そして今、Wallyはその夢を実現する機会に出会う。
いつものように新聞の死亡記事欄をチェックしていたWallyは、6年前、この法律事務所で遺言書を作成をしたChester Marinoと云う男の死亡記事を見つける。遺言書で資産を調べたWallyは、数千ドルの報酬になる遺言執行人の依頼を取るべく遺族がいる葬儀場に向かう。
そこで彼は Marinoの息子のLyleから父親が心臓発作で死んだのは服用していた薬のせいだと話すのに緊張する。彼によると肥満に効くというKrayoxxという薬を服用し始めた父親は、体重は減ったが同時に心臓の違和感を訴え初めていたと話し、明らかに心臓発作の原因は薬のせいだと主張していた。そして彼は新聞記事のコピーを見せ、フロリダの有名な製造物責任専門の法律事務所「Zell & Potter」がこの薬による薬害訴訟を起こしたと言い、父親の件でも訴訟を起こしてほしいと依頼する。

WallyはLyleが彼に渡した新聞記事のコピーなどから訴訟を起こした「Zell & Potter」は一人当たり2百万ドル以上の賠償金を請求しており、さらにこの薬の訴訟が全米で起きることを予想し集団訴訟を提起していた。もし訴訟を起こした場合、大手薬害訴訟専門の法律事務所の尻馬に乗って、巨額の報酬が得られる途方もない金脈を発見したことに彼は興奮する。依頼人が多ければ多いほど賠償金の分配が巨額になると察した彼は薬害被害者を捜し始める。彼は、その薬害がまだ世間に認知されていない今が他の弁護士と奪い合うことなく依頼人を増やす好機だと知り、市内の葬儀所を片端から周り心臓発作で死んだ者の中にKrayoxxを服用していた者がいないか探し回る。
さらに 過去に事務所が扱った依頼人を訪ね親族や近所の人でKrayoxxを常用していて心臓発作を起こした人がいないか探し歩く。

名門Harvard Law School出身、30代前半の弁護士Davidは、5年間、一日15時間、超一流法律事務所で債券事務の仕事をしていたが、ある朝突然、出勤途中に仕事のやる気をなくし、仕事をボイコット、近くのバーで一日中飲酒する。夕方、酔っぱらった状態でバーを出た彼はたまたま目に付いた小さな法律事務所「Finley&Figg」に転がり込み、働かせてほしいと頼みこむ。
WallyとOscarは、いきなりの要求にとまどうが、たまたま起きた交通事故でのDavidの行動に感心して彼を雇用することを決定する。翌日、はりきって出勤してきたDavidはWallyの助手として シカゴの貧民街で薬害被害者の調査をしらみつぶしに行っていく。。

その結果、WallyはLyleの父親のほかにもう一人の被害者の依頼人を見つけ、連邦裁判所に製薬会社を相手にして損害賠償の訴訟を起こす。
DavidはKrayoxxと心臓発作の因果関係に確信を持てないながらもWallyに求められるままに原告代理人として訴訟に名を連ねる。
さらにWallyは、この提訴の内容をシカゴの全マスコミに送り、この薬の危険性を訴える。そして、マスコミがこの訴訟を取り上げたことで全米でこの製薬会社を相手取っての訴訟が起こる。

全米のマスコミがこの訴訟を取り上げた後、薬害に対する問い合わせで事務所の電話は鳴りっぱなしになり、彼らはさらに6人の依頼人を得る。やがて、「Zell & Potter」法律事務所の Jerry Alisandrosから連絡があり、Krayoxx訴訟を起こした弁護士たちが密かにあって会議を行うのでWallyも参加するよう求められる。その席でWallyはJerryから自分たちの法律事務所とチームを組まないかと申し込まれる。薬害認定の専門医の手配など訴訟の段取り、陪審審理は自分たちが引き受けるからWallyたちは薬害被害者の原告をもっと増やすように提案される。陪審審理など経験したことのないWallyたちにとって、この提案は渡りに船だった。さらにJerryは裁判は陪審審理に入る前に和解に達し、賠償金の話しあいになるとの見通しを話した。薬害訴訟専門の大物弁護士に訴訟のすべてを委せ、原告側弁護士として同席するだけで巨額の賠償金を手に入れることができることにOscarもDavidも興奮する。

一方、訴えられた製薬会社はたびたび薬害訴訟を起こす薬害訴訟専門の弁護士たちに苦虫を噛む思いをしていたが、ここで一気に彼らに報復する事を決意する。そして、その手段として法律事務所「Finley&Figg」を選ぶ。

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アメリカの民事訴訟裁判、陪審審理に入る前に証拠開示手続き(discovery)があることなど裁判の進め方などがわかって興味深かったが、それなりにどきどきするところもあるが、ミステリーとしては物足りない感じがした。

しかし、2014年9月4日の各マスコミは、ルイジアナ州の連邦裁判所は武田薬品の糖尿病治療薬アクトスの薬害被害者に6300億円の支払いを認めた陪審員評決を支持する判決を出したと報じていた。まさにこの本が取り上げた薬害訴訟の裁判。この本によると弁護士報酬は40パーセント、訴訟に参加した弁護士達は2520億円という巨額の報酬を得ることになる?薬害訴訟専門の弁護士がこれを主導したのか?武田製薬は和解に動かなかったのか?集団訴訟は起こさなかったのか?この本のおかげで記事の背景を推測する楽しみができた。

日本だと弁護士を雇うときは何らかの金を支払うがアメリカでは無料で代理人となって相手方と交渉し 相手方から得た賠償金の中から報酬を得るという手法に驚く。

また 企業の製造物責任を糾弾する裁判も社会正義のためでなく、巨額の和解金目当てというのは読む気力をなくす。訴訟に参加した被害者は救われるが参加しなかった被害者は救われない。

薬害被害者の遺族も身内を亡くした怒りよりも巨額の賠償金が転がり込むことに浮かれ、おこぼれを預かろうと遺族の周りには親族や友人が集まってくる。これだけえげつなく人間の業を描かれるとDavidじゃないけどその場をさっさと立ち去りたくなる。

また Litigatorの翻訳本『巨大訴訟』(上下巻 白石朗訳 新潮文庫)のおかげでかなり法律用語も覚えた。他のリーガルサスペンスにも挑戦したくなった。

Kindle2版 ★★★