2017年MWA、Best Novel候補作
2015年6月、朝 7時、ニューヨークのハドソン川沿いにある運動場で銃の乱射事件が起こり、3人の市民が犠牲になる。捜査を担当したNYPDは、事件発生時現場付近にいたJack Harrisを殺人罪で逮捕する。彼の上着からは硝煙反応があり、またJackは犠牲者の1人、Malcom Neeleyを殺害する十分な動機を持っていた。
3年前、後にPen Stationの大虐殺と名付けられた銃乱射事件があり、13人の死者と多数の怪我人が出る事件が起きる。Jackの最愛の妻Mollyも犠牲者の1人だった。犯人は母親の自殺によって精神的障害を負った15歳の少年、Todd Neeley。Toddは 通勤客でにぎわう駅で父親のMalcomから買い与えられた3丁の銃を乱射した後、自ら自殺する。Malcomは、息子の精神的障害を癒そうとしてToddに銃を買い与え、射撃場に頻繁に彼を連れ出していた。
Jack達、犠牲者の遺族は、精神的問題のあるToddに銃を買い与えた父親に怒りを覚え、彼の保護責任を問う集団訴訟を起こすが、先月、訴訟は却下されていた。Jackは却下の決定に不満を感じ、Malcomに対する怒りを募らせていた。
刑事専門弁護士Olivia Randallは、父親を助けてほしいと言うJackの娘Buckleyからの電話を受け、元婚約者だったJackと20年ぶりに警察署で会い、彼の弁護を引き受けることにする。彼女は、20年前、Jackとの婚約を破棄するときに彼女が行ったことに、今なお罪悪感を感じていた。彼女は5年間の交際を通して、彼の人の好さ、善人ぶりを熟知していた。提示されている不利な証拠にも関わらず、彼女は、彼が乱射事件を起こすことなどあり得ないと信じ、彼は誰かに嵌められたと考えていた。
彼女は、彼の無実を証明するため、乱射事件が起きる時刻に運動場で彼と会う約束をしていた謎の女性の正体を突き止めるべく全力をあげる。だが、ここ20年間のJackの行動を調べ始めた彼女は、かってJackが彼女を殺すことを考えていたことなど、彼が彼女の知らない暗い一面を持っていることを知る。Jackが善人であるという彼女の信念が揺らぎ始めるが、彼女は感情に左右されることなく、次々と発見される事実に基づいて彼の有罪の有無を判断することを決意する。
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Jackが無実だと思わせる証拠が見つかった、と思うと逆に有罪が確実だと思う事実が発見されたり、最後まで彼が犯人かどうかわからず一気に読ませてくれる。最後は予想外の展開で衝撃的、でもちょとしんみりした終わり方。
ヒロインOlivia Randallのキャラは刑事弁護士としての能力はクールで魅力的。検事が提示した証拠、反論のしようがないと思う相手の論理を見事に覆す弁論の巧みさ。Jackの言っていた女性が実際に存在することが証明され、彼の無実が証明されたと思ったら、いやそんなに簡単じゃないよという論理を展開する。証拠や事実に対する分析力、思考力が見事で小気味が良かった。
ただライフスタイルでは、よくわからないキャラ。婚約したにもかかわらず、それを相手に破棄させようとして他の男と関係を持つ?反省していると思いきや、今も妻子ある男と不倫している。
E-book(Kindle版) ★★★☆ 283ページ 2016年1月出版 887円(2017年購入)
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