気軽に洋書ミステリー

家にいてもすることがないおじさんは考えました。このままではボケる。そうだ!好きなミステリーを英語で読もう!英語力???

The Cuckoo's calling by Robert Galbraith

2017-02-05 13:13:09 | 読書感想


ロンドンの高級マンションで厳冬の1月、仲間内でCuckooと呼ばれる誰もが知る黒人のスーパーモデルLula Landry が自宅の4階ベランダから落ちて死亡する事件が起きる。マスコミや世間が騒然とする中、警察はマンションの2階に住む女性がLulaが転落する直前、彼女が男と口論しているのを聞いたという証言を得て、当初、殺人事件と考えて捜査する。しかし、証言した女性がコカイン常習者であることが分かり、さらにマンションには厳重なセキュリティが設置されており、当時、部屋には誰もいなかったことや、Lulaが精神的障害から薬を常用していたという事実などから警察は自殺と断定する。

3ヶ月後、Lulaの兄で弁護士のJohn Bristowは、幼くして事故死した彼の弟の親友だった私立探偵のCormoran Strikeを訪ねる。彼は、Lulaの死は自殺ではなく殺されたと主張し、Strikeに妹の死について調査の依頼をする。彼は、その根拠として、マンションの下の階の住人のTansy BestiguiがLulaが男と口論しているのを聞いた直後、彼女が落ちて来るのを見たと証言していることや、防犯カメラが事件前後に彼女の住まいの近くを背の高い黒人の男が往き来する様子、特に事件後彼女の自宅の方から全力で走りさろうとしている様子が映っている事実を挙げる。Johnは彼が犯人であると信じていた。

Strikeはこれだけ世間を騒がせた事件について警察の捜査に手抜かりはないと考えていた。しかし、事務所の家賃も滞納するほど金銭的窮地に陥っている彼は調査することに同意する。Strikeは、Lulaの死は自殺であるという証拠を集めて、Bristowに彼女が自殺した事実を納得させ、この依頼は終わらせようと考えていた。

調査に完璧を 求める彼は、Lulaの死に至るまでの行動や心情を探ろうとして、Lulaを知っている全ての友人、知人から聴き込みを行おうとする。事件の調査を進めるうち、Strikeは、仲間を求めて鳴き続けるCuckooのようなLulaの孤独な心情に気づく。白人の家庭の養子となった黒人の彼女は周囲になじめず、実の母親と父親を捜し続けていた。

そんな中、調査を続けるStrikeは聴き込みなどから得た情報や警察の捜査資料からLulaは殺されたという確信を持ち始める。そして、彼の確信を裏付けるような事件が起きる。

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マンションの前には大勢のパパラッチ、セキュリティコード付きのドア、受付にいる警備員、彼女の部屋の鍵、もしLulaが自殺ではなく殺害されたとしたら犯人はどうやって彼女の部屋に侵入し、逃げたのか?昔の本格推理小説の密室殺人のような設定。ストーリーの随所に手がかりがさりげなく書かれている。最後に謎解きがあり、あとでもう一度読み返すと、ここに伏線が張ってあったのかと納得できる。関係者との聞き取りが延々と続き、物語の展開が退屈だと思い、油断して読んでいると作者に完全に騙される。

主人公のCormoran Strike,2年半前に従軍先のアフガニスタンで片脚を失うが、自尊心の強い彼は同情を嫌い、接する人に自分が義足を付けていることを悟られないようにしている。派遣秘書でやってきたRobinにさえも。軍警察で培った洞察力の鋭さ、最後まで事件について自分の考えを語らない昔風の性格などとてもユニーク魅力的なキャラクターだった。gumshoeという言葉を思い出した。とにかくStrikeはよく歩く、義足だとは思えないほど。現場に行き、当時の状況を推理する。また、事件の関係者に会いに行き、聞きこんだ情報を忘れないうちに整理して書き留めておく几帳面な点も大柄な体で粗野な性格な探偵と思っていた僕には予想外だった。

また秘書としてやってきたRobinはとても愛らしいキャラクター。探偵の秘書という仕事に興味津々、仕事で知りえた情報は他人に漏らすない秘密厳守規約にサインすることに興奮し、調査に関する手掛かりを発見した時は、自分の発見を褒めてもらいたくてワクワクしながらStrikeに報告する。

E-book(Kindle版)★★★★ 550ページ 2013年4月出版 752円(2017年購入)