気軽に洋書ミステリー

家にいてもすることがないおじさんは考えました。このままではボケる。そうだ!好きなミステリーを英語で読もう!英語力???

Moonlight Weeps by Vincent Zandri

2016-02-21 09:32:34 | 読書感想

The Shamus Award by PWA(Private Eye Writers of America) Best P.I. Original Paperback部門  2015年受賞作品

俺、Dick Moonlightは拳銃で自殺しようとして失敗し、その銃弾が脳に止まり、何時死んでもおかしくないと医者に言われている。人々から気違いじみたやつ(head case)と呼ばれる俺は探偵を生業としている。

そして、今日、俺は一文にもならないと分かった調査の報告を依頼人にしている時、死んだはずの俺の最愛の恋人Lolaにうり二つの女性が目の前を通り過ぎていくのを見て衝撃を受ける。数ヶ月前、俺は彼女が息を引き取ったのを見て路上に彼女を放置してその場を去った、彼女の死んだという事実からできるだけ遠ざかるため。
俺は、彼女を失った絶望感の深さから、Lolaについては思い出さないように努力していて、彼女の葬儀が行われたかどうかも知らなかった。
Lolaが生きている可能性はあるのか?彼女の後を尾行して彼女がLolaであるか確認したいという欲求が俺の心を騒がせる。しかし、別人だと分かったときの落胆と今以上の絶望感を思い、俺は、確実に報酬を払ってくれる依頼人の下に自家用に使っている父親が残してくれた霊柩車で向かう。

俺を待っていたのは高級なスーツを着た脳外科医Schroder。酒とパーティー好きな彼は飲酒運転で運転免許を取り上げられていた。彼は、免許停止が解かれるまでの間、運転手兼ボディーガードとして俺を雇いたいと話す。報酬は一日300ドルプラス経費、金欠気味の俺にとって悪くない仕事だ。俺は彼に、俺は脳には障害があり、運転中に気を失う可能性があることを話すが彼は気にしないと言い、俺は仕事を引き受ける。

俺が与えられた最初の仕事は、女子学生にレイプされたと訴えられ、停学処分になった彼の馬鹿息子Stephenを学校に迎えに行くことだった。未成年であるにもかかわらずビールとタバコを要求する馬鹿息子、息子の停学処分を気にもせず、その要求に応えてビールとタバコを用意するSchroderの親馬鹿ぶりに俺は唖然とする。

そして、その馬鹿息子がレイプと殺人で警察に逮捕されたことで俺は探偵として雇われることになる。彼は自宅で開いたパーティーにやってきた女子学生をレイプし、その場面を写真に撮りネットに公開した。レイプされたと訴えている女子学生は、それを苦にして自宅の地下室で首を吊って自殺していた。警察は自殺は写真投稿に因るものものだとしてレイプばかりでなく殺人容疑(reckless murder)で彼を逮捕していた。
Schroderは息子はレイプなどしていないと断言し、息子の無実を突き止めてほしいと俺に調査を依頼する。

俺は銃弾が脳にあるために いつ死んでもおかしくない状況にある。そのため俺は依頼人の利益よりも何が正義であるかに留意して調査を行う、あの世で神に祝福してもらうために。
Stephenは女子学生をレイプしてその写真をネットに投稿したのは事実か?Schroderは、彼らを監督することなく息子のために自宅でパーティーを開き、未成年者の彼らにアルコールをふるまったのは事実か?そしてみずからも酔っ払い運転で捕まったのは事実か?もし それが事実ならそれは正義ではない。またそれが事実でないならば警察が逮捕したのは正義に反する。
そして、警察が女子学生が自殺であるのが明白であるにもかかわらずStephenを殺人罪で逮捕するのは正義に反する。

俺は事件当夜なにが起こったのか、真実を突き止めるべくSchroder父子はもちろん当時現場にいた人間から事情聴取を始める。そして、警察がなぜ、Reckless Murderという不可解な理由で彼を逮捕したのか、警察は明らかに彼らに対し遺恨を持っているように見える。警察と彼ら父子にどんな対立関係があるのか、俺は視野を広げて事件を調べることを決意する。

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各章が短く、コミックのカット割りの描写ように場面転換が早い。なかなか読み易い。
プロットもうまく捻ってあって、Moonlightの推理も聞き込みをするたびに軸が揺れ、事件の真相がなかなかわからない。そのまま、最後のクライマックスに突入、どういう風に終わるのかとわくわくドキドキさせるが、僕としては、違う結末を期待していたので、ちょと期待はずれな終わり方だった。

キャラはなかなか魅力的、脳の中に手術不可能な銃弾があり、何時その銃弾が脳に衝撃を与え死ぬかわからない。しかし、彼はその事実を達観している。昔の探偵小説コミックを読んでいるような錯覚を覚える。今は亡き(?)恋人を想い続け、酒を浴びるほど飲み、たばこをくゆらしながら事件の調査を行う。運転する車は葬儀屋だった父親が彼に残した霊柩車。依頼人の利益を考えず、常に何が正義かを考えて行動する。

Kindle版 ★★★★ 235ページ 2014年8月出版 480円プライム会員なら無料


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