気軽に洋書ミステリー

家にいてもすることがないおじさんは考えました。このままではボケる。そうだ!好きなミステリーを英語で読もう!英語力???

Snow Wolf by Glenn Meade

2013-07-28 09:27:58 | 読書感想

1953年、CIAのソビエト担当の責任者Masseyはドイツのミュンヘンを拠点として諜報活動を行っていたが、急遽、米国へ帰国するよう命令を受ける。

帰国したMasseyは大統領の極秘命令としてStalin暗殺(暗号名Snow Wolf)を計画実行するよう命令される。ソ連の高官から得た情報によると、Stalinは最近立て続けに発作を起こしてから、精神に異常を起こしており、軍が開発している核爆弾が完成次第、アメリカなどの敵対国に使用すると大統領は確信していた。そして、核爆弾は数カ月以内に完成すると思われていた。
その完成前に作戦は実行されなければならなかった。

暗殺は絶対に無理だと抗弁するMasseyに上司のBraniganは ソ連もStalinの命を狙われることなど絶対にないと思っているから逆にチャンスがあると言って、実行役に暗号名Wolfと呼ばれているSlanskiを指名する。Slanskiは12歳の時にロシアの孤児院を脱走しアメリカに亡命してきた35歳の男。大戦の時はヨーロッパでOSSの暗殺部隊に所属しナチスの将校を暗殺していた。そして、その死が反ナチ勢力によるものと思われないように、将校の死が事故によるものであると見せかけて・・
CIAに所属している今も、Slanskiは組織の最高の暗殺者であるばかりでなく、暗殺を病死や事故死と見せかけて実行する能力もずば抜けていた。

そして、モスクワの地理に不案内な彼の道案内役としてAnna Khorevを指名する。
Annaは夫と娘の3人でモスクワに暮らしていた。ある日突然、夫が政治犯として、共犯として彼女も強制収容所に収容され、幼い娘は孤児院に拉致収容されてしまったが、3ヶ月前にAnnaはロシアの強制収容所から脱出してアメリカに亡命していた。夫は強制収容所で死亡していたが、娘はソ連の孤児院に収容されたままだった。

Masseyは非常に危険なこの仕事に彼女を巻き込むことに後ろめたさを感じるが 彼女の娘を救出して 一緒にアメリカで住めることを条件に Annaにロシアに潜入することを了解させる。
2月の深夜、二人は密かにロシア領内にパラシュート降下する。万一、捕まりそうになったら 服用するようにと青酸カリのカプセルを渡されて。

そのころ、CIAのBraniganは Masseyと連絡を取ろうとして 彼の行方を必死に探していた。
彼らの作戦は国連ソ連代表部に所属するKGBによって察知され、直ちに、本国に報告されていた。CIAからその情報を伝えられた大統領は もしも二人が捕まったならソ連との戦争が避けられないと判断し、最悪の場合は二人を殺してでも 作戦を中止するよう命令する。しかし、BraniganがMasseyにその命令を伝えたときは二人はソ連領内に潜入した後で、もはや、彼らに作戦中止を伝えることは不可能だった。

一方、snow wolf作戦を察知したKGBは かって、ソ連領内に潜入してきたナチスの諜報員を探索し捕らえることに凄腕を発揮したKGB少佐Lukinにこの件に関して全権を与え、二人を生け捕りにするよう命令する。LukinはKGB上層部の腐敗堕落に嫌悪を抱きながらも、この任務に失敗したら自分が銃殺刑になるばかりでなく、妊娠中の妻も巻き添えになると確信し、任務の成功に全力を尽くすことを誓う。

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スターリンの暗殺をテーマにした物語と聞いて、こういう歴史ミステリーはどんなに盛り上がっていっても最後の結果が分かっているので どうもなぁと思って読んでいったがおもしろかった。とくに、最後のクライマックスは 思いがけない展開もあってどきどきわくわくしながら読んだ。
当時の時代背景が分かるので、ぜひ、あとがきも読むことをおすすめします。

またSlanskiとLukinとの駆け引きがすごい。うまく突破したかと思うと またそこにLukinが現れる。息つく暇がないほどの展開で読ませます。

でも、ヒロインが当時を回想する形でストーリーが始まるので、彼女がどんなにピンチになっても最終的には助かるのが分かっているのは興ざめのところがある。
あとKGBによる拷問のシーンは 読むのが嫌になるほど強烈。

★★★★ Kindle版 475円

 


Grass Roots by Stuart Woods

2013-07-14 09:57:19 | 読書感想

Geogia州の弁護士Will Leeは、州出身の上院議員Ben Carrのトップアシスタントとしてワシントンでロビー活動をしていた。いづれ 彼が引退したら自分が代わって上院議員に立候補しようと思いながら。会期終了後、Willは改選期を迎えたBenからもう一期自分はやるつもりだが、次の選挙(4年後)では彼を応援するという言質を得る。

4年後の立候補を決意して、故郷に帰ったWillは地元の判事から呼び出しを受ける。彼の住むMeriwether郡では最近、白人の若者が黒人の女性をレイプして殺すという事件が起きていた。若者は自費で弁護士を雇うことができず、公費による弁護士を要求していた。人種間の紛争が起きることを心配した判事は、裁判が公正に行われることを希望し、そのためには人種偏見を持たない優秀な弁護士が必要とし、Willを指名する。Willはこの事件がマスコミの注目を集めていることを知り、自分の知名度を上げるチャンスと考えて承諾する。

その夜、Willが家族と食事中、電話がありBenが脳卒中で倒れたと言う知らせが入る。見舞いに駆けつけたWillはBenから彼の引退とWillが彼に代わって今回の選挙にでるよう要請される。
Willは選挙運動とレイプ殺人の弁護とは両立できないと考え、判事に弁護士の交代を嘆願するが拒否される。
彼は 裁判と選挙運動を同時に行っていかなければならないことになってしまう。

同じ頃、アダルトショップがThe Electと称する白人至上主義者の組織に襲撃され3人の店員が銃殺され、オーナーのユダヤ人、Manny Pearlが瀕死の重傷を負う事件が発生する。
意識を回復したMannyの証言から警察は主犯の男を元軍人のPerkersonという男と特定し指名手配して彼の行方を追うが、そんな警察をあざ笑うかのように妊娠中絶を行っている病院の医師と看護士がPerkersonによって暗殺される。

一方、立候補を宣言し運動を始めたWillは、41歳でいまだ独身であることが問題になり、マスコミの一部からゲイではないかという噂が流れ始める。そして、それはWillがゲイ排斥を主張するElectの標的となる危険性を示唆していた。

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僕としてはWillがレイプ殺人事件を調査していくうちに、意外な事実が明らかになっていく展開になると思っていたのだが、政治がメインなストーリーだった。
でも、Perkersonによって相棒の刑事を殺されたMickey Keaneが警察を解雇されながら、粘り強くPerkersonの行方を追っていくストーリーが平行して描かれており、ミステリーとしても楽しめた。

また アメリカの選挙運動のやりかた、とくに、選挙は遊説よりも資金集めが第一、億単位の金がないと選挙には勝てないことなどがわかり興味深く読めた。

★★★★


Live by Night by Dennis Lehane

2013-07-06 09:58:01 | 読書感想

2013年MWA賞 受賞作

禁酒法の時代、酒の密輸、潜り酒場、カジノ経営などに暗躍するギャング、そして、それらの事業を賄賂をもらうことによって黙認する警察官がはびこる時代。

ボストンに住むJoe Coughlinと彼の友人は、13歳でストリートギャングになり、20歳になる今、キューバからのラム酒の密輸や非合法な酒場、カジノを経営するTim Hickeyの手下となっていた。ある日、彼らはTimのライバルAlbert  Whiteの経営するカジノを襲う。そこでJoeはEmma Gouldという女性に出会う。銃を突きつけられても平然と振る舞う態度と彼女の美しさに 彼は一目惚れしてしまう。一緒に襲撃した仲間から 彼女はAlbertの愛人であると言われたにも関わらず。

その後二人は 頻繁にデイトするようになっていった。
JoeはEmmaに愛していると告白するがEmmaは彼と寝ているにもかかわらず決して愛しているとは言わない。Joeは自分はまだ未熟で一人前の男と Emmaに認められていないことを知り、彼女に認められ、愛されるような男になることを決心する。

そんなある日、Albertの配下と思われる者によって、ボスのTimが暗殺される。二日後、AlbertがTimが運営していたカジノにやってきてJoeに Timの事業はすべて自分が受け継ぐから この町で今までのような仕事は一切するなと警告する。
窮地に陥ったJoeはEmmaの提案に従って二人でTimの顔見知りが多いメキシコ国境の町へ駆け落ちすることを計画する。
その資金づくりのため、彼は隣町の銀行を仲間と襲う。が、逃走中、パトカーに追跡され、追尾していたパトカーは大破し同乗していた警官二人が死亡する。かろうじて逃げ延びたJoeは、夕刊の一面トップに銀行強盗の記事が彼らの似顔絵とともに載っており、直ちに逃げなければならないことを知る。

JoeはEmmaとの駆け落ちは無理だと考えるが、一目彼女に会ってからと思い、彼女に会いに行く。
しかし、そこで待っていたのは Albertとその手下だった。Joeの命乞いと交換に、Emmaは土壇場で彼を裏切り、Albertにすべてを打ち明けていた。
Albertは二人の裏切りを許さず、とくにJoeが自分の承諾なしに勝手に銀行強盗を実行したことに怒っており 見せしめのためにも二人を殺すよう命令する。

裏切られながらもEmmaのことを心配するJoeを救出したのは 警察幹部の父親Thomasだった。
さらにThomasは、警官殺しは重罪であり12年の刑が相当と考えている検事に彼の不正を見逃す代わりにJoeの刑を軽減するよう求め,刑を5年に短縮させる。

刑務所に収監されたJoeは そこで米北部の裏社会で絶大な力を持つマフィアのボスMaso Pescatoreと出会う。
2年後、出所したJoeはMasoの指令を受け、フロリダのTampaにあるMasoの利権を維持することを委ねられる。
Tampaの中心都市Ybor cityに着いたJoeは、Ybor cityという市の名前の由来がVincente Yborという葉巻業者の名前から来ていることを知り、何時の日かこの町を、いや、この郡をCoughlin Countyと呼ばれるようにしたいという野心を抱く。
しかし、そこには賄賂を受け取らない署長、アルコールは悪だと主張し潜り酒場を襲撃する白人至上主義者、そして宿敵のWhite の配下など 彼の野心を妨げる障壁が待ちかまえていた。

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自分はOutlawと主張していた男が、自分の利権を確保するためなら冷酷非常な手段をとるようなGangstarになっていく。物語は面白かったと思うけど、ミステリーというよりはGodfatherのような犯罪小説。

しかし、彼がフロリダ周辺の裏社会を牛耳るマフィアのボスになっていく過程が描かれていく背後にサブテーマが隠されていて、読み終わった後、それに気づきしばらく呆然としてしまった。・・・ちょっと深読みかもしれないけど、そうでも考えないとMWA受賞、納得できないな。

★★★☆