気軽に洋書ミステリー

家にいてもすることがないおじさんは考えました。このままではボケる。そうだ!好きなミステリーを英語で読もう!英語力???

Missing You by Harlan Coben

2015-03-29 10:08:08 | 読書感想


40歳になったNYPDの刑事Kat Donovanは、ボーイフレンドを持たない彼女を心配した親友のStacyから出会い系サイトを紹介される。
共に夜を過ごす男性を欲しいと思っていた彼女はそのサイトにログインしてみる。そこで彼女は18年前、彼女の元を去った婚約者Jeff Raynesの写真に出会い、呆然とする。18年前、彼女が22歳の大学生の時、ふたりは出会い、婚約したが、警察官である父親がマフィアの殺し屋に殺された後、二人の関係はぎくしゃくするようになり、Jeffは彼女の元を去っていった。
Jeffのプロファイルを見たKatは彼が今、男やもめであり、交際相手を探していることを知り、また、交際を復活できる可能性を考え興奮する。彼にどんなメッセージを送るか、さんざん逡巡したあげく、彼女は、かって二人が一緒に聞いた忘れられない想い出の曲「missing you」のMusic Videoのサイトをリンクしたメッセージを送る。
しかし、Jeffはその曲についても、ネットに公開した彼女の写真を見ても、彼女が誰か気づかないようだった。彼女は人違いしているのか、確かめるために自分がKatだというメッセージを送る。最初、Jeffはその名前に覚えがないというメッセージを送ってくるが、さらに彼女が彼がJeffであるかどうかの確認のメッセージを送ると、彼はJeffであることを認め二人の関係は終わっていると告げ、彼女を落胆させる。

そんな中、Katは、かって、父親の相棒で、今は上司のStaggerから、彼女の父親を殺し、現在、終身刑で収監中の男Monte Leburneが末期癌で危篤状態であると教えられる。男は殺し屋でマフィアのボスCozoneに命令されて父を殺したと思われていたが、彼は取り調べ中に殺害を命令した男については頑なに名前を言うことを拒否していた。
彼女は、この18年間、何度も彼を訪ね、首謀者の名前を明かすよう求めていた。Katは、これが最後のチャンスだと思って彼に会いに行く。彼と会った彼女は、痛み止めのモルヒネの作用で意識朦朧としている彼が、自分は警官を殺していないと独白するのを聞き、衝撃を受ける。
彼によると、逮捕された後、男が会いに来て金と引き替えに警官殺しの罪をかぶるように要求。他に二人殺していたことで、すでに終身刑が確定していた彼は、もうひとつ罪を認めても代わりはないと考えて自白したと告白する。
彼女は、新しい発見に興奮し、上司のStaggerにMonteの告白を話し、再捜査するよう求めるが、彼は、Monteは長年つきまとってきた彼女をからかうために、そのような告白をしたと主張し、要求を却下する。
しかし、彼女は、この事件について、Monteのものでない指紋が現場で検出されていることや、父親の場合だけ、彼の殺害の手口が違うことなど、つねづね疑問に感じていることがあった。父親を殺した犯人を逮捕することに執念を持っている彼女はStaggerの意見に納得せず、独自に事件を捜査することを決意する。

Jeffに振られてから2週間後、Katは署に少年の訪問を受ける。Brandonと名乗る少年は母親が行方不明になっており、行方を探して欲しいと話す。大学でPC技術を学んでいる彼の話によると母親Danaはボーイフレンドと旅行に行くといって以来、連絡が3日間ないという。
彼女はBrandonが他の刑事に事件を話さず、彼女を指名してきたことに不審を覚え、母子の身元を調べ、二人はConnecticut州に住んでいることを知る。なぜ、彼が管轄違いの彼女を訪ねてきたのか問いただした彼女は、母親はKatが登録している出会い系サイトでボーイフレンドと知り合い、その相手はJeffであることを知る。BrandonはサイトをハッキングしてKatとJeffがメッセージをやりとりしたことなどを調べていた。

Brandonは、父親が3年前に死亡して以来、常に毎日、彼の居場所、安否を確認してくる母親が電話をしてこないのはおかしいと言い、さらに、今まで一度もATMを利用したことがない母がATMで千ドルの大金を引き出したのも異常であり、母親は何か危険な目に遭っていると主張する。また、相談した地元の刑事は頼りにならないと言い、彼女に捜査を依頼する。
彼女は少年の母親に対する思いに、自分が父に対して持っていた思いを重ね合わせ、管轄が違うと言いながらも彼のために捜査を進めていくことを決意する。それは、彼女が今も思い続ける元婚約者のJeffの現在の状況を調べることを意味していた。

Katが過去からずっと引きずっている謎、父を殺すように指示した男は誰か、そして、彼の婚約者はなぜ、突然、彼女を捨て行方をくらましたのか?いま、それらの謎が新展開を見せ、彼女の前に立ちふさがってくる。彼女は、その謎を解明すべく全力を挙げる。

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日本でもよく事件が起きる出会い系サイトを利用した拉致事件。誘拐された人がどうなるのか、誘拐犯の立ち回り形がうまくて、Katが誘拐事件に気づきそうで、なかなか気づかない、何時、気づくのか気になってなかなか読むのをやめられず、けっこう夜遅くまで読み続けた。

最後は思いがけない展開。捜査を続けるKatに、誰かが言った忠告が的を得ていたように感じる終わり方だった。

Katは捜査官として、とても魅力的なキャラ。気になることは、たとえ上司と対決しても、納得行くまでねばり強く捜査を続ける。私的に気になることがあっても、事件に考えを集中しようとするタフさ。でも、思い続けた男にふられて独り泣く、精神的に弱い一面も持っている。Stacy、Cjazなど、まわりのキャラも良い。シリーズにならないかな。

 ★★★★  410ページ Kindle版 786円


Bear is Broken by Lachlan Smith

2015-03-18 17:35:42 | 読書感想

2014 SHAMUS AWARDS BEST FIRST P.I. NOVEL

サンフランシスコ、司法試験に合格し弁護士資格を得たLeo Maxwellは、ここ4ヶ月間、刑事裁判を専門とする弁護士、兄Teddyのもと で法律実務を学んでいた。
ある日、二人でレストランで昼食を取っているとき、Leoの背後からサングラスと帽子で変装した男がTeddyを銃撃し、仲間の車で逃走する事態が起きる。すぐに救急車で病院に運ばれたが、Teddyは頭部を撃たれ、意識不明の重態。
事態に呆然とする彼の下に、Teddyが撃たれたという噂を聞きつけた依頼人から裁判を心配して電話が立て続けにかかってくる。Teddyは犯罪者の間で無罪を勝ち取る優秀な弁護士として知られていた。事態に動揺する彼らに、Leoは兄が無罪を勝ち取るために行ってきた弁論を無駄にする裁判のやり直しよりも、自分が事件を引き継いで裁判を継続していくことが、兄の意志だと考えて、彼が代わりに弁護を行っていくという決意を彼等に伝える。

また、Teddyは二人の警官を殺した男Ricky Santorezを無罪にしたことで警官たちから嫌われていた。この事件を担当した刑事が捜査に積極的でないことを憂慮した彼は、意識不明の兄のベッドに付き添うよりも、彼を撃った男を突き止めることが兄の意志だと信じ、独自に調査を開始する。
調査を始めたLeoは 兄が仮眠するために事務所近くに借りているアパートで二人の女性が、また、事務所でTeddyが雇っている探偵が、そしてTeddyの家では別れた妻が、室内を物色している場面に遭遇する。彼は 彼らが何を探しているのか、考えることも問うこともできなかった。何故なら、Teddyと12歳、歳が離れているLeoは、常に兄に庇護されて生きてきたが、Teddyの女性関係や交友関係、過去の仕事などまったく知らなかった。

そんな中、Teddyの元妻Jeanieは、TeddyはS-and-M homicideと言われる事件に関連して銃撃されたのではないかという推測をLeoに話す。2週間前、Green Lightと呼ばれる風俗店の前で、大学教授の死体をゴミ箱の裏に隠そうとしていた店の従業員Keith Lockeという30代後半の男が殺人の容疑で現行犯逮捕される。彼は、Teddyを弁護士に雇い、自分は犯人ではない、真犯人を知っているとTeddyに話す。 Teddyは彼の話を信じ、後日、彼が警察に出向き、真犯人を教えるということで、警察に彼を釈放させたが、彼はそのまま行方をくらましていた。Teddyを撃った男は、Keithが名指ししようとした真犯人で 彼にそのまま沈黙を守るようにというメッセージを伝えるために 彼を撃ったのではないかと。他に何の手がかりがないLeoは、Keithの行方を知っているかどうか尋ねるためKeithの家族に会いに行く。そこで LeoはTeddyのアパートで会った女性がKeithの妹であることを知る。

そんな時、捜査を担当している刑事からLeoに電話があり、Ricky Santorezが殺し屋を雇ってTeddyを殺そうとしたという密告があり、警察はSantorezを逮捕するつもりだと話す。そして、密告者は終身刑で収監されている彼の父親Lawrence Maxwellだと告げる。彼は十数年前、妻を殺した罪で終身刑を言い渡されていた。Lawrenceは無実を主張し、兄のTeddyは彼を信じ、今でも彼の釈放を求めて運動しているが、Leoは彼が母親を殺したと信じ、以後一切、彼との関係を絶ち、父親の記憶を消去しようと努めていた。LeoはSantorezの犯行 だという父親や警察の主張に賛同せず、彼の無罪を証明しようと行動する。それは彼の父の無罪を信じる兄と有罪を信じる彼との長年にわたる家族の葛藤に彼を引きずり込んでいくことになる。

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まだ弁護士としては半人前、Monkey Boyと揶揄され、Teddyからも調査で会う人々からも軽視されていたLeoが、調査を進める過程で成 長していき、兄のように自分の思い通りの結果を得るためなら手段を選ばない法律家になっていくようすが述べられていく。

物語の結末、いまいち迫力不足。また、プロットが複雑にからみあってしまっていて、各キャラクターの関係が、最後、どうなったのかよくわからなかった。

Leoのキャラクター、まあ、Monkey Boyと言われるのも納得するほど。兄が回復する可能性10パーセントと医師に告げられた時の動揺、植物人間になって生きるのは兄の意志に反すると考えて、死んだほうが良いのでは思ったり・・・昔見た「金田一耕介」の映画に出てく る狂言回しの刑事、ちょと怪しい点が見つかると、「よし!!わかった!!犯人はこいつだっ!」、と早合点する刑事を思い出すそそっかしさ!とらえどころのないキャラクター、あまり魅力的なキャラクターとは思えなかった。

 ★★ Kindle版 274ページ

 


Dark Places by Gillian Flynn

2015-03-08 10:33:26 | 読書感想

アメリカの中心部カンザス州の田舎町で、農場を経営するシングルマザーPattyとその娘達が、悪魔崇拝の息子Benによって殺されるという衝撃的な事件が起きる。
当時7歳だったLibbyは窓から逃げ出して難を逃れる。以来25年間、当時、事件に同情した人々から寄せられた多額の寄付金を取り崩しながら、Libbyは働くことなく無気力、自堕落に生活していた。しかし、事件から25年たったことで基金は底をつき、彼女は生活費 に困っていた。そんなとき、彼女は実際に起きた有名な事件について研究、討論する会Kill Clubから会への参加の要請を受ける。金に窮していた彼女は700ドルの報酬を条件に招請に応じる。彼女は亡くなった母親や姉たちの殺害された時の写真を会員たちが所持していることに不快を感じる。もっとも、彼女はそんな彼らに殺害された姉の日記を売るために持参していたが。彼女は、会員たちからBenは無罪であり、彼女が裁判で行った証言を撤回するよう求められる。

彼女は裁判で兄のBenが家族を殺したのを見たと証言していた。しかし、実際はBenの声を聞いただけで殺す場面を見たわけではなかった。また、現場には血の付いた大人の靴跡が残されていたり、母親は銃で殺されたがBenの手から硝煙反応がないことなどBenの犯行とするには不審な点がいくつかあった。しかし、彼女の証言が陪審員の評決に決定的な影響を与え、Benは終身刑を言い渡され刑務所に収監されていた。Libbyは裁判で嘘をついたことに良心の呵責を感じていたが、Benが上告しなかったことから、Benが家族を殺したと信じていた。

だが今、Kill Clubの会員たちは、Benが犯人である点についての矛盾点を彼女に指摘し、Benは無罪であり、犯人は他にいると主張、彼女に犯人の可能性がある別れた父親やBenの友人たちと会って当時の状況を聞き出すよう要請する。
彼女は、彼女が嘘の証言をしたと言われたことに苛立ちその場を飛び出す。しかし、生活費に困っている彼女は、当時事件に関与していたかもしれない人々に会いに行き、その情報を彼らに売ることで生活費を得ることできると考え直し、彼等の要請を受けることを決意する。

だがそれは、今まで避けていたLibbyの記憶の中の思い出したくない領域、惨劇が起きたときの記憶、Darkplacesに彼女が踏み込んでいくことを意味していた。

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物語は、犯人として逮捕された15歳の息子Benと、犠牲になった母親Pattyの視点で惨劇の前日から、また唯一人、生き残ったLibbyの視点で現在から、惨劇の瞬間に向かって突き進んでいくようすが描かれていく。
読んでいる方としては、最後に母親達は殺されるとわかっているので母親の子供達に対する愛と娘達の愛らしい仕草を読むのが辛くなってくる。
ろくでもない男に出会ったばかりに貧乏のどん底に落とされた母親がそれでも懸命に子供達を育てようとする思いと愛が切なく伝わってきて心に残る。子供達もこれがアメリカ?と思うほど貧しい。長男のBenが着たお古が3人の娘達に次々とわたっていく。新しい洋服を着ることがない娘達、それでも不服を言わずに無邪気に生活を楽しんでいる3姉妹がいじらしいし、そのあと殺されると思うとさらに悲しくなる。

この物語は読んでる者を暗く悲しい気持ちにさせる。それでも読み進めるのはどこかに救いが待っているのではと期待して。
そう、この本ではLibbyのキャラが救いとなる。BenとPattyの部分を読んでいると心が暗くなるが、Libbyの部分でほっと一息、明るくなる。偏屈で無愛想、身勝手だけど、それは独りでで生きていくために身につけたサバイバル技術?
無気力、自堕落に生きていた彼女が事件を調べる内に家族の愛に目覚め、人間的に成長していく姿が救いを与えてくれる。

 ★★★★ Kindle版 345ページ