気軽に洋書ミステリー

家にいてもすることがないおじさんは考えました。このままではボケる。そうだ!好きなミステリーを英語で読もう!英語力???

The Dry by Jane Harper

2017-12-31 09:08:26 | 読書感想

WINNER OF THE CWA GOLD DAGGER AWARD 2017


経済犯罪を担当する警察官Aaron Falk36歳は高校時代からの友人だったLukeの葬儀のためにMelbourne から6時間かけて20年ぶりに故郷Kiewarraへ帰る。Lukeは狩猟用の散弾銃で妻と息子を殺し、自らも銃を口に咥えて自殺していた。彼はLukeの父親Gerry から2日前に手紙を受け取っていた。20年前の事件についてLuke と彼が嘘をついている、葬儀で会おうと述べた手紙を…。

20年前 FalkのガールフレンドEllie Deaconが溺死体で発見される。少女は衣服に石を詰めていたことから自殺と考えられたが、身に着けていた少女の服からFalkと書かれていたメモが発見されたことから、自殺を偽装して彼が殺したのではないかとFalkは疑われる。彼女が死亡した時間、Falkは釣りに行っていたが証人がおらず窮地に陥る。そんな時、友人のLukeが、彼女が殺された時間、彼と一緒にいたと証言してやると言い、二人は口裏を合わせて警察に証言して彼の疑いを晴らす。

しかし、町の住民は彼が殺したと信じ、父子に嫌がらせを続け、彼らは耐えきれずに町を逃げ出してメルボルンに移り住み、以来二度と彼は町には戻らなかった。Gerryはどうして彼らが嘘をついたのか知っているのか、また彼は自分に何を要求しようとしているのか?彼は不安にかられながらLukeの両親Gerryと彼の妻Barbに会いに行く。彼は2人からLuke Hadlerが本当に家族を道連れにして自殺したのかどうか、警官である彼に調べてほしいと依頼される。彼にとって母親のような存在だったBarbの頼みを断り切れず捜査に着手する決心をした彼は、事件を担当している刑事Racoに会いに行く。Racoは無理心中にしてはLukeの行為には不審な点があると指摘する。彼が殺害に使用した銃弾が彼が普段使用している銃弾と違うこと、父親なのに息子を殺すのにどこに隠れているのか、なかなか探し当てられなかったことなど。

彼はLukeの精神状態や農場経営の実態などを調べるため、Lukeの友人達や妻の上司である校長などから聞き取りを行っていき、彼が無理心中を図った原因を捜査していく。刑事が指摘した無理心中に見せかけた第三者による殺人も視野に入れながら。

そんな中、Ellieの父親や甥を中心に彼が帰って来たことに気づいた町の住民は、彼を追い出そうと嫌がらせをエスカレートさせていく。しかし、彼は今回はそんな嫌がらせに逃げることなくLukeの死の真相を探ろうと全力をあげていく。

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20年ぶりに故郷に帰ったFalkが、会う人、見るものすべてから彼とLuke,Ellieとの思い出を喚起する青春鎮魂歌という印象で、ハラハラドキドキすることはないが、ゆったりとしたストーリーの流れの中にさまざまな伏線が張ってあり、あとでなるほどと納得がいく良くできたミステリー、完全に騙されました、終わり方も僕好み。


干ばつによって寂れていく町の状況、貧困から脱出できない人々の鬱憤が蔓延している様子、都会の町の喧騒に飽き、静かな田舎の生活に憧れてきた人々の田舎生活についての失望感がよく描かれている。

FalkがLukeの友人や隣人などから事情聴取をしている時、その時実際に友人や隣人に起こった出来事がイタリック体で述べられていくという独特のストーリー展開はユニークで面白かった。

E-book(Kindle版)★★★★★  329ページ 2016年5月出版 405円(2017年12月購入)



Don't Let Go by Harlan Coben

2017-12-24 11:06:52 | 読書感想

15年前、Napoleon Dumas(Nap) が18歳の時、双子の兄LeoがガールフレンドのDianaと列車に轢かれて死亡する事件が起きる。警察は二人が酒とドラッグで意識朦朧とした状態で線路に踏み込んでしまった結果起きた事故だと結論を下す。そして、数日後、Napのガールフレンドで運命の女と彼が考えていた女性Mauraも行方をくらます。彼は彼女の失踪と兄の死は関連があると考えていた。彼は今でも、二人を失った衝撃から立ち直れず、兄を想い、Mauraのことを思い続けている。

そして、今、New Jersey州の Westbridgeという生まれ育った町の 刑事になった彼の下に、隣接するPennsylvania州の刑事が会いにやってくる。刑事は彼の高校時代の同級生で、今Pennsylvania州のパトロール警察官であるRexが交通取り締まり中、銃で撃たれて殺されたと話し、事件現場に残された指紋が15年前に失踪したMauraの指紋と一致したと告げる。10年前、Napは警察官になった時、彼女の指紋とDNaを警察のデータベースに登録して、彼女の指紋と事件現場の指紋とが照合一致した場合、彼に知らせて欲しいと要請していた。15年間消息がつかめなかったMauraが殺人現場にいた可能性が高いという事実に衝撃を受けながらも彼は事実を確認するため現場に向かう。

彼は監視カメラの映像からMauraが事件現場のにいたことを確認する。また犯行現場近くのバーで犯人と思われる男を彼女が誘惑していること知り唖然とする。そして、男と彼女が乗った車をバーのすぐ近くで酔っ払い運転の疑いで停めさせたRexの行動に、まるでMauraが男と出て来るのを待ち伏せていたような彼の行動に疑問を持つ。Mauraの消息を探ろうとRexのことを調べ始めたNapは、彼が職務を逸脱したアルバイトをしていたことを突き止め、彼を殺した男はそれを利用してRexに罠をしかけて彼を殺したと確信する。Pennsylvania州の刑事は、Rexは彼のアルバイトに関連して殺されたと考えるが、Napは兄の死との関連性を考える。Rexは、15年前、彼の兄がリーダーだったConspiracy Clubのメンバーだった。Conspiracy Clubは町に存在した軍のミサイル基地跡地の探検を目的として彼の兄が創設した6人のメンバーで構成される秘密のサークル。15年前に亡くなった兄と恋人のDiana、Rex,そしてMauraもそのサークルのメンバーだった。メンバーのうち3人が死亡、一人が失踪、偶然というにはあまりに不自然な状況、兄の死が事故死ではないと信じている彼は、今回のRexの殺害事件と兄の死と関係があるのではないかと疑い始める。彼はメンバーの残りの2人の消息を突き止め、当時クラブはどのような活動をしていたのか、兄の死はその活動と関係しているのか。15年経った今、何故Rexは殺されたのか?殺害現場にいたMauraの安否を心配しながら彼は15年前の兄の死の真相に迫っていく。

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この作者の得意とする愛する人が突然行方不明になり、数年たった後その人の消息が想い続けている相手に届くというパターン。何故行方を絶ったのか?男は彼女に巡り合えるのか?いつも通り兄や恋人への想いを語りながら展開していくストーリーだが期待通り楽しめた。でも、本のタイトルに反して何もしない方がNapにしては良かったかもという予想外の衝撃的な結末でドッキリした。Napというキャラクター、刑事でありながら法律ではどうしようもない事柄や相手には、非合法な手段で立ち向かう、なかなかユニークなキャラクター。シリーズ化してもおもしろいかも。別シリーズのMyron Bolitarもこの本に、ちょっと登場、逆に彼のシリーズに登場させてくれてもいいかもしれない。

E-book(Kindle版)★★★★ 351ページ 2017年9月出版 1200円(2017年購入)



Fool Me Once by Harlan Coben

2017-12-17 09:48:21 | 読書感想

ニューヨーク、夜、元空軍大尉Mayaは夫Joeとセントラルパークで待ち合わせするが、銃を持ったスキーマスクを被った2人組の男達に襲われる。彼女は助けを求めてその場を逃げるが夫は銃で撃たれて死亡する。事件を担当したNYPD刑事Roger Kierceは、夜は治安が悪い公園を待ち合わせ場所に彼女が指定したことや、照明も乏しい夜にも拘わらず彼女が犯人の服装や銃を詳しく証言したことに疑問を抱き、強盗は彼女が夫を殺したことを欺くための狂言の可能性も視野に入れていた。彼は彼女が所持している殺人に使用された銃と同じモデルの銃を弾道検査のために押収する。

Mayaの親友のEileenは彼女が留守の間、2歳の娘Lilyのためにベビーシッターを頼んでいること知り、娘とベビーシッターがどのように過ごしているかを彼女が分かるように隠しカメラを設置するよう説得する。数日後、何気なく監視カメラをチェックした彼女は、そこに死んだはずの夫がLilyと遊んでいる様子が映っているのをみて衝撃を受ける。彼女はただちにベビーシッターのIsabellaにカメラの映像について問いただすがIsabellaは問いに応えず、隙を見て映像が記録されているビデオカードを持って逃走する。

あり得ない出来事に呆然としている時、刑事がやってきて彼女に署までの同行を求める。刑事は彼女に容疑者のLine-upに立ち会うよう要請し、彼女は容疑者と思われる男を指摘する。その場で彼女は刑事から殺人に使用された銃が発見されていないと告げられ、彼らをJoe殺害容疑で逮捕拘留できないと告げられる。さらに、弾丸の弾道検査をした警察は夫殺害に使用された銃は4か月前に彼女の姉を殺した銃と同じものだと告げる。姉は窃盗目的で侵入してきた男によって殺されたと考えられていた。2人は単なる金目当ての物盗りによって殺されたのではなく意図的に命を狙われたと可能性が高いと知り、彼女は2人の死の真相を究明することを決意する。

姉はJoeの会社に勤めていたことから、二人はそこで何か犯人にとって不利益なことを知って殺されたと彼女は推理する。彼女は姉の親友やJoeの家族などからふたりに最近おかしなことがなかったかどうか聞き取り調査を始める。そして調査を進めるにつれて夫Joeが彼女の知らない秘密の一面を持っていたことなど、次々と信じられない事実が明らかになっていき、彼女は誰を信じ誰を信じるべきでないか疑心暗鬼になっていく。

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Mayaのキャラクターが魅力的。戦争に従軍している時、誤って市民を殺してしまったという出来事からPTSDに苦しむ彼女、2歳の娘のシングルマザーとして奮闘する彼女、身近の人間を守るのが自分の義務だと信じ行動するが相手から迷惑がられたりしている彼女、頑張れと応援したくなるキャラクター。彼女は戦場でしか生きることができない、市民のなかに溶け込むことができないようでこの先どうやって生きていくのか心配になる。

そして、死んだはずの夫が娘と遊んでいるビデオの映像、姉と夫は同じ銃で殺された・・・。この謎をどういうふうに解いていくのかワクワクしながら読んでいった。でも、この終わり方は予想外、プロットの辻褄が会わないような気がする。でもエピローグが良かったので★4つにした。エピローグのシーンは感動的でジーンときた。


E-book(Kindle版)★★★★ 2016年3月出版 387ページ 923円(2017年購入)


The Shark by Mary Burton

2017-12-10 10:18:54 | 読書感想

9月13日2:00pm バージニア州 

警察犬とともに捜査に従事する州警察官Riley Tatumは10代と思われる少女の絞殺死体が発見されたという通報を受け現場に向かう。現場で鑑識に立ち会った彼女は絞殺された少女に見覚えがあった。数日前、彼女は少女がトラックドライバー相手に売春している姿を目撃していた。少女の身元を確認しようと所持品を調べていた彼女は、少女のバッグの中に裏にLoserと書かれた5枚のトランプカードを発見して慄然とする。

12年前、Rileyは家出してニューオリンズの町をふらついている時、ドラッグを飲まされ、意識を失い誘拐される。その後7日間の記憶を彼女は失っていた。7日後、彼女は数千キロ離れたバージニア州のバス停に自分がいて、彼女のポケットの中に5枚のトランプカードがあるのを発見する。7日間、彼女は薬を打たれ眠っていたようだが、薬が切れて意識が朦朧としている時、二人の男が彼女の目の前でポーカーをしているおぼろげな記憶があった。彼女は彼女が持っていたカードはニューオリンズのものであり、さらにカードの裏にメモがないことから、自分の誘拐事件とは今回の事件とは関係ないと考えようとするが、検死に立ち会った保安官が被害者は彼女に似ていると指摘されたことで一抹の不安を感じる。

元FBIのHostage Rescue Team に所属していたClay Bowmanは彼のボス、元FBI捜査官で引退してShield Securityという会社を興したJoshua Shieldから思いがけない指示を受ける。Shieldは、12年前、二人がFBIニューオリンズ支局で担当した未解決事件、彼らがThe Sharkと名付けた連続殺人犯ついて、Rileyが重要な手掛かりを持っていると話す。そして彼はBowmanにRileyに接近し、彼女の捜査に協力しながらSharkから彼女を守るよう命令する。12年前、Sharkは今回の事件と同じように、ニューオリンズで4人のストリートガールを誘拐し絞殺、それぞれの被害者のポケットにはLoserと書かれたトランプカードが残されていた。Sharkは5人目の犠牲者としてRileyを誘拐したが、彼女は殺されることなくバージニアで発見される。Shieldは、今バージニアで起きた殺人は、手口から明らかにSharkの犯行であると断定し、彼は12年前に見逃したRileyを殺そうとしているとBowmanに告げ、彼女と協力してSharkを逮捕するよう指示する。

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クライマックスはこれだなぁと思っていた通りの設定、しかし、その場面に登場した人物は予想外だった。またそこで明かされた犯人の深謀遠慮には、そこまで考えていたのかと唖然とした。

12年経った後も、犯人が彼女に固執する理由、読み進むうちに納得できた。ギャンブラーの性格がよく描かれていて興味深かった。

Rileyの仕事に対する真摯な態度は魅力的。家出して売春をするしか生活の糧がない少女たちをなんとか更生させようと奮闘する姿勢、自分に起きたこと、人に知られたくないことも、捜査に必要と判断すれば、自分の心情を犠牲にしてでも捜査員に報告する潔さ。また、相棒のBowman、彼女のプライドを傷つけないように露骨に彼女のガードするという態度を見せずに、陰から密かに彼女をガードしようとしている姿はカッコよく魅力的なキャラクターだった。


E-book(Kindle版)★★★☆ 2016年出版 354ページ 読み放題(or 613円)



The Bone Field by Simon Kernick

2017-12-03 18:20:57 | 読書感想

Henry Forbes 25歳とガールフレンドのKatherine Sinn (Kitty)は1990年タイに旅行する。タイに滞在している或る夜、二人は彼の以前つきあっていたガールフレンドについて口論になり、翌日、彼女はひとりでホテルを去った後行方不明になる。若い女性がタイという異国の地で行方不明になったということで、この事件はマスコミに大きく取り上げられたが、彼女の行方は分からずに事件は迷宮入りとなった。そして26年後、タイからはるか離れたロンドンの北西Buckinghamshire のプライベートスクールのグラウンドから鋭利な刃物で喉を切られた若い女性の白骨化した遺体が発見される。

発見から一週間後、ロンドン警視庁犯罪捜査課DS Ray MasonはHenryの弁護士から彼が犯罪に関する重要な情報を持っているので会ってほしいという電話を受け、彼は弁護士宅でHenryと弁護士に会う。Henryは先週発見された白骨化した遺体はKittyであり、彼女は殺されたと主張し、さらに他の犠牲者の白骨化した遺体も見つかるはずだと断言する。…そして殺人犯は巨大な権力を持っているので自分をウィットネスプロテクションで守ってくれない限り事件について証言しないと主張する。RayはHenryの思いがけない告白に戸惑いながらも、対応を協議するため席を外して上司に電話している時、何者かが銃を持って乱入しHenry達2人を殺害する。彼は銃を持っている男達に対抗することができず彼らを取り逃がす。そして現場に到着した彼の上司はHenryが証言したように、校庭で遺骨の発掘をしていた鑑識は、さらにもう一体の遺骨、10代と思われる少女の白骨化した遺体を発見したとRayに伝える。やがて遺骨はKittyのものだと判明し、もう一人の遺骨は1989年に行方不明になり、同じく迷宮入りとなった13歳の少女Dana Brennanのものだとわかる。RayはHenryがKittyとDanaの二人を殺した犯人を知っていて、口封じのため殺されたと確信する。

彼は過去に起きたKittyの殺人事件と今回の殺人の繋がりを突き止めるには過去の事件について捜査する必要があると考え、当時の捜査で見失っていたものがあるかどうか、迷宮入りとなったふたつの事件の再捜査を始める。そしてタイで失踪したKittyがどうやって数千キロ離れたイギリスの地で殺されたのか、その謎に挑む。

そんな時、かって刑事でいまは私立探偵のTina BoydからHenryから依頼された調査中の案件があるという電話が捜査本部にあり、Rayは彼女に会いに行く。RayはBoydから調査内容を聴き、捜査の重要な手掛かりとなると直感し、彼女に調査の続行を依頼する。やがて捜査中のミスから警察組織から見放されたRay、そして悪人は許さないという刑事時代の信念から事件に引き込まれていくBoyd、ふたりは孤立しながらも捜査を続け、真相に迫っていく。それは二人の身を危険にさらしていくことになる。

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警察官でありながら同僚から疎んじられ孤立して捜査を続けるRay Mason、彼の前に立ちふさがるのは証拠、証人を残すことなく凶悪犯罪を繰り返し巨大組織を作り上げた男、そして相手の行動を先の先まで読み殺人を実行する、殺人をこよなく愛する男、彼ら犯罪者の方がRayを圧倒している感じで物語が進み、読んでるこちらをハラハラさせる。しかし、Tina BoydがRayに加わり、Rayの反撃を楽しみにしていたら…こんな終わり方はないでしょう!また、彼の持つダークサイドの一面、ちょっとついていけない。

いつもイギリスのミステリーを読んでいて思うことだが、イギリスの警察の歯がゆさ、拳銃を所持していないから、相手が銃を持って侵入してきたらなすすべがない、黙って市民が撃ち殺されるのを隠れて見てる。今時の悪党は銃を持っているのが大半だと思う。刑事は銃を所持できると制度を改定できないのかと、読むたびに思ってしまう。


E-book(Kindle版)★★★ 380ページ 2017年出版 550円(2017年購入)